元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
雷獣びりびり

 雷獣が主人公の妖怪系時代劇かと思いきや、雷獣は思考としてのセリフが無くマスコット的なもんで人間主人公がおった。単なるあやかし時代劇…っと。
なんかこうなると某あやかし話と被るのだけど、中身は大分違ったな。

 妖怪が認識されている世界で、それを捕えたりする改方が主人公。雷獣は彼の許嫁(幼女)に飼われている猫です。(大分はっちゃけた説明ですが。)
しかし本気でロリじゃなくて良かったわ。江戸時代ならそんな無茶な許嫁も有りそうなもんだけど、主人公はひたすら彼女の父親への恩義でそれに甘んじている感じ。20代前半くらいか?
 ただむしろ幼女の方がしっかり者タイプなのか嫁気取りと言う感覚らしい。んー、まだよくわからんが、少なくとも妙な落ち着きはあるな。
この娘の母親は剛毅な感じで、河童や武者鎧の妖怪を料理屋で扱き使う感じです。

 割と続いてるシリーズのようですので期待したのですが、数話読んでみて、途中でちょっと首を捻る。
なんでかしら、面白くない。
 まず主人公と幼女の会話が必要最低限でワンパターン。
特別なエピソードを感じさせる会話にならない。
会話や状況で見えて来るべき二人の個性(特に幼女)もまるで見えてこない。
何が好きとか何が苦手とか、お互いの力関係とか。
 これが大なり小なり主人公の他のキャラとの会話、関わり方にも同じような事が言える。
比較的夜ノ介は夜ノ介の方がいろいろ食わせ物で話を進めてくれるから意味も出てくるんだけど、主人公で引っ張っていく展開が印象に残らないんだよなぁ…。
 あと展開の強引さ。
常にタイミングよく幼女&雷獣が主人公を助けに来るけど、この展開がお芝居を見てるみたいで。
 無駄と言う余白がなくお話を作る時の骨組みだけを見ているよう。最低限の展開が故、都合の良い展開にも見えるのかなぁ…?(逆に言うと素晴らしく簡潔にお話をまとめてるので冗長にはなっていない。)

 この一巻の中だけで言うと、終わり近く、いきなり善鬼の話に戻ったと思ったら夜ノ介と因縁深いってのは出来すぎ感があった。
まぁこれは夜ノ介自体改め方に妙な入り方をしているから完全に設定の内でしょうが、妖怪のゲストキャラの様な点のキャラは多いのに、線のキャラが少なすぎて、今は浮いちゃう感じかな。
多分一巻では私は嵌りきらんかったのでしょうね。
 ただキャラには可能性を感じる。
幼女だの夜ノ介だの、人物一人一人の『こういう登場人物が居るよ』チョイスは好きなんだよね。
 ちなみに漫画化されているようでそちらのビジュアルを見たのだけど、幼女も雷獣も可愛いわ、夜ノ介の食わせ物感が出ているキャラデザもいいわ、見ていて楽しかった。
(主人公かっこよすぎだけど。)
もしかしてこれ、漫画で読んだ方が好きかもなぁ…。

 個人的に続きはないのですが、このノリの時代劇はなかなかないと思うので、物語としての印象は良かったです。
えどさがし

  しゃばけ…の外伝?
成程、時間を超えての各キャラ主人公話だね。
 
 佐助が好きなんですが、最初は佐助の過去話。
『五百年の判じ絵』。
何故子守する事になったのかの件。
いやぁ、私ならキツネAもキツネBもこの厚かましさに速攻追い払うね。
佐助は暇だし気まぐれとは言え、人が好すぎる。
この世は皆、天衣無縫のおキツネお祖母様の一人舞台じゃないのかしらと思えるくらいに事を進めてくれます。
判じ絵の謎解きは面白かったし、佐助の承知ぶりも和んだけど、主役が喰われたみたいに感じてしまった。
もう少し佐助が単独で目立つ話が良かったな。過去話なのは良かったんだけど。
 『太郎君、東へ』。
発音が違うとおかしな感じ。
ネネコ親分のお話で、ちょっと珍しかったが、面白かったのが昔話の様に何故川が東へ流れるようになったのか、等逸話の様なお話に、しゃばけのノリでなく読んだ。
川自体を人格としてのキャラかぁ。
これは東へ逃げるわな。
楽しい。
 『たちまちづき』。
妖怪退治の高僧だが、お金は公言して集める寛朝のお話。この人、実を取るタイプで正直だし、駆け引きしつつも真のところで外さないから好きだわ。
妖怪に憑りつかれているからなんとかしろと言われても、妖怪なんぞどこにも見えない依頼主に、どういう解決策を与えるかと言うと―。
まぁ自己解決みたいなもんだけど、気弱な旦那と強気な嫁と言う力関係が逆転するのが心地よい。
 『親分のおかみさん』
病弱なおかみさんだけど、こういう風に強くなるのは良いね。親分さんが本当に愛妻家でほっとする。
子供の成長も楽しみです。
 『えどさがし』は『明治・妖(あやかし)モダン』とのコラボと言うか、繋がりある明治の地で。
ははぁ、妖怪繋がりか。
こう言うの、ファンにとって嬉しいだろうねぇ。
江戸物なのに明治舞台とか、まだまだ明治の空気は怪しさいっぱいだし。
その設定といい、ネタ自体はちょっとファンが書いた二次創作じみた、若旦那が死んで、生まれ変わりを待つ妖怪たちと言うテーマなんだけど、ちょっとそこだけがこそばゆかったなぁ。
でも仁吉視点だから、儚さが漂っていて胸が苦しくなる物語でもある。あんなに強い人なのに、いつもどこか寂しさが付きまとうんだよな、この人。
明治の服装もお似合いでした。
すえずえ

 あら、しゃばけシリーズが出てたわ。
今回は栄吉の見合い話から。
 それにしても栄吉、何歳だっけ?14歳の妹の方に惚れるってちょっと…。まざ江戸時代だから普通なのか?―って今更ながらいつの巻の時点か知らんが若旦那が数えで17歳、実際15歳という事を知り、大分イメージ変わった。頼りない気のいい青年だと思っていたら、少年じゃないか。
おおお…じゃあ栄吉も数え17実際15、お相手は数え14実際12歳くらいって事か?
 それならアリだが、この年齢なんかで惚れた腫れた言ってると思ったらなんかビジュアルが様にならんな。現代感覚で。
若旦那の話に戻ると、そりゃぁ手代たちからもまだまだと過保護にされるわ。
 で、その流れでとうとう若旦那にも見合い話が。
これ、今までとくに考えた事なかったけど、大変な事なのね。
嫁を取ると妖怪たちがもう若旦那のそばで集まれない。
 私はてっきり母親みたく、理解のある夫を持てば…と思ったらそうだった、父親は単純に鈍いというか、妖怪のよの字も気づかない人だったんだ。
 いやぁ、でも、どうせ若旦那のお相手も、見える系で大団円にする気がするなぁ。(これは後ほど当たりと言うか。いいのか、これは。)
 ただ、周囲はそう考えておらずきちんとシリアスにこの事を受け止め始めた。
若旦那が一人前になるように、いずれはここを去る心積りを考え始める。
これが若旦那の将来を考える身近な者からそうし出すから、心に来る。
 まず手代の兄や組。
…いや、この二人だけは最後まででも正体隠して添えよと思ったんだけど、この二人も若旦那を溺愛しすぎてて、あっと言う間の人に生き死にに立ち会う前に、今の内から離れておけと言う意見も出る。
うーん、難しい。
 若旦那自身もそこら辺もひっくるめて自分の見合いや将来に不安を感じている。
けれどもこれを全員で話し合うのではなく、各々が考えて行動しているからまた切ないのね。
 ところで今までは若旦那は病弱の坊と思われていたから見合い話もこなかったけど、いろいろ妖怪絡みで幸運が続き、商売が上手いとか思われたせいでこのモテっぷり。そこも辛いなぁ。

 途中の話で天狗に騙される話と、商売人に詐欺をされる話、さらに泥棒される話があるのですが、この三つとも、よく皆相手を穏便に赦すわぁ。
店の乗っ取りや盗み、果ては自分の胆を食おうとした、一方的に何の比もない相手に卑怯な手を使ってきた相手をですよ。
いくら度量が大きいと言っても、なんかすっきりしない。
 大体このシリーズ、若旦那に持ち込まれるトラブルの相手が自分勝手すぎると言うのが時々イラッとするわ。若旦那側がいつも赦すスタンスだから、そういう意味でのカタルシスは常にないな。
若旦那の稀なる徳の高さや見事な裁きは感服するけど、諸手上げれない読者です。
 今巻は盛り上がった。
ラストワルツ

 あああ、出ていた。ジョーカーゲーム最新作。(完結?)
と言うか、いつの間に実写だの、漫画化だの…。
 そんなこんなを本屋で感じてから、さらに本を手に取るまでにまた随分かかっちゃいました。
さて、腰を落ち着けて読むか。
 
―と思いきや、また面白くて止まらず読んじゃうのよねー。あっという間でした。
 相変わらず一人ひとりが格好良すぎるD機関のスパイたち。伝書鳩やスパイ映画の俳優のお話もニヤッとする所ながら、やはりここは彼ら率いる結城中佐のお話が断トツで格好良過ぎた。
 タイトルでもある『ラストワルツ』。
ざっとエピソードで言うと、貴族のお嬢様が若い頃、謎の男に颯爽と助けられ、お嬢様は将来自分とダンスをするよう、その男とあてもない約束を取りつける。
閉鎖的な旧家の世界に退廃的な生活をして、やがてお嬢様は有閑マダムとなったわけだが、心に残り続けるかつて自分を助けた謎の男の姿―。
 舞踏会のある夜、夢幻の様にその男が現れ、ただ一曲を共に踊ると再び名も告げずかき消えるわけですが、勿論その男こそ結城中佐。
 一見ラブロマンスの様に思えるエピソードですが、そこには勿論スパイの必然が絡んでおり、そんな中でも中佐がパーフェクトな紳士ぶりでお嬢様を巻き込まないよう行動するわけで、それでいて中佐はあくまで恋愛の欠片も心に持たず余裕の態と言うのが、もう。
氷の様に冷静に、心乱す事無くスパイに徹しているくせ、片手間でスマートにレディの扱いをこなすのがニク過ぎる。
 何と言うか、この人の隣に立つ女性の姿がまるで想像出来ませんよ。

 結城中佐はしかし、若い頃よりも歳をとればとるほどロマンスグレーの渋さが引き立つと思っております。
背筋のピンと伸びた仕立ての良いスーツ姿の痩躯の老人。隙のない動きと居抜くような眼光。
至高の人です。
金色機械
金色機械金色機械
(2013/10/09)
恒川 光太郎

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 恒川さん。
今度は長編かぁ…。
で、どれだけホラーなんだろう、時代物か、読み難いかも、なんでこの時代設定でこのタイトルなんだろう―とか思っていたらいろいろと違いました。
 まず、ホラーではない。
要素はたっぷりとあるけど、これはむしろSFです。
そう、機械、出てきますわ普通に。
 考えた事も無かったので斬新すぎて呆然としてしまったのですが、江戸時代にロボットの登場人物ですよ。
オーバーテクノロジーものと来たか。
 しかも遠い昔、月からの船が落ちてきて、その子孫に代々伝わる道具と言う扱い。
かぐや姫を思い出しつつ、また珍しい伝承を作ったなぁと思っていたら、本当にレーザー銃とかも伝わっていて、とんでもない話だなと気付く。
(まぁロボットが存在している時点で、その話は真実として話が進むのは解ってるんですが。)

 ロボットはしかし、人間の姿そのままのアンドロイドではなく、金色の金属ボディに凹凸のない顔で緑に光る眼球―とちょっと古いタイプのSFを思わせるロボット。
何故かしらと思ったら、これが江戸時代の人たちには金色の仏像に見えるのね。なるほど!
 しかも作中、この姿のせいで男にも女にも扮する事が出来、また、ロボットのため、声もいろんな種類を出せちゃう。これがより一層、普通の人間から見た時に『化物感』を引き出せるわけだ。
 目の前の面を付けた人が、瞬時にいろんな死んだ人間の声を出すとか、怨霊に決まってる―これは上手いわ。
 寿命がほぼない上に体は金属で頑丈、しかも記憶が完璧なので、ロボットは代々の当主に忠実に仕え続けるのですが、自分たちの存在がオーバーテクノロジーと理解していて隠遁生活を続けていた当主達の時代は良かったのですが、武器や出自に野心を抱いた者が出てきたあたりから、一気にお家は没落。
山賊に成り下がり、世間から住まう所を鬼御殿と呼ばれる始末。
 そんな中このロボットは、仲間たちからでさえも、金色の具足を付けた尋常ならざる者として悪も正義も無く当主に寄り沿い続けます。(ロボット自身はきちんと物を考えたり出来るので、人の世の道理などは理解している。ただ感情が無く、命令に背くように出来ていないと言うだけ。)
時に女、時に男として―。

 この物語はしかしロボットの側から語られる章はかなり後ろの方なので、最初はこの正体不明の不気味な金色の仏像だか妖怪だかを一種恐怖の対象として、他のいろんな周囲の人間の人生を語らせる様な体裁で進んでいきます。
登場人物は多めですが、山賊は勿論、遊女、流民、侍、医者、黒人…。と、どの人間もとんでもない不幸や業を背負い、またそれぞれに奇妙なホラー要素があり、視点が切り替わる度に新しい物語を楽しめます。
 やがてロボットも含めた皆の数奇な人生が蜘蛛の巣の様にどんどんとかけ合わさり出来上がっていく様子には、ただただ吸い寄せられるように頁をめくるのみ。
 分厚い本だったのですが、するすると読めてしまいました。むしろ途中で読書を中断したくないくらいの求心力がある。
それくらいに繋がりが読めず、先が気になるお話でした。
 たくさんの人が死に、時代故の無常感も強いのですが、最後は穏やかに終わったのにはホッとする所。
ロボットの時折感性のずれた言動は、本当は怖い所なんでしょうけど、どこかしら愛らしくさえもあったので、ロボットの話のラストだけは特別気になりましたから。

 大変面白く読了。
恒川さんのいつもとはちょっと違う新しい世界を見れた作品です。