元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
霊能動物館

 安定の求心力、加門七海。
今回は動物にかかるお話を揃えているという事で、もうなんか、この人のは仮に地雷があろうが基本的に筆力の高さとぶれない作風で読んじゃうんだよなぁ。
 あ、地雷と言うのはオカルト系特有の、『伝聞形式の話はまぁなんとなく聞いていられるのに、本人の体験談になると何故かいきなり一歩引いちゃう』って言う説明出来ない感覚です。
 何故だ?都市伝説や噂の伝播は文化だが、そうと思い込む体験談には眉に唾付けちゃうからか?
おっと眉に唾なんて、これこそオカルトだ。

 そう、私たちは理性的であろうとしても迷信や恐怖、良心に振り回される。
今回はテーマが動物。
普段世界の頂点を人間としていながら、動物と言う存在に私たちが何故敬い、恐れ、奉るのか―。
この点を掘り下げ、オオカミや狐、カラスに蛇…色んな動物毎にテーマを区切り、さすがの大系を語ってくれます。
 そこには故事から始まり、現実的に人間を襲う等といった一目置かざる得ない状況がまず、ある。
或いは人の役に立つが故、語られるもの。
 人間との関係の中で動物は『語らざる得ない』愛憎の対象となり、強い異能を持つものは、良いものも悪いものもひっくるめて神や霊と考える日本人の心の中にしっかりと根付きます。
 それぞれの関係性がどういう伝播となり、霊験あらたかな属性と繋がるのか、さすがの知識でどんどん繋いでくれます。
ここら辺はもうわざわざ調べなくてもこの人の中で幅広いオカルト知識が網の目の様に繋がっていくんだろうね。
 昔話とかの例もたくさん披露してくれて面白かった。オカルト知識と言うだけの話じゃなく、歴史的な逸話なんかは単純に博識なわけですよ。
 また各地の信仰体系。
犬や狐の辺りはやっぱり濃厚に根付いていて、ぞくっとするものもある。

 基本的に恐ろしい霊異譚の中で、動物と言うちょっとほっこりしたテーマな分、気持ち軽めには読めるのだけど、内容はとことん充実、濃いお話。
民俗学とかの軽めの論文をそれぞれの項ごとに読んだ気にさせてくれた一冊です。
オカルトの帝国

 一作者じゃないのね。
何章かに分かれて、それぞれがオカルト全盛期の70年代を語る本。
各々得意分野は違うようで、切り口もアニメやTV、UFOや超能力と、色々です。
 ただどの章も、文献やデータは丁寧に集めているし、学術的な論文を読んでいるかのような内容。
随分と本気路線の様です。

 さて論文調と言いましたが、それ故に断言が多くて、正直そう思えるものも有ればまったくそう思わないものも有り、書く人によって随分評価が分かれる所です。
 この手の物は、決してこの著者が合ってる間違っているではなくて、お説を唱える一人一人に『形』があるので、視野が広がる事はあれども、なかなか真実らしきものには確信を持てぬ事が多くなりがちです。
船頭多くして…にも似たり。
結局は自分の考えを基準に測っていくしかない世界ではあります。

 序文の、『オカルトとは現在社会の毒素を薄めるものだ』と言うくだりは、うなずく所が多いものでした。
オカルトとは、渦中に居ても現象が不思議、外から眺めていても人の動きが不思議、心惹かれる人が多くいても、まったく不思議でない事象ですね。
オカルトまゆつば論

 え、こんなはっきり。
ここまで古く騒がれブームになったオカルトを『いや、それ嘘だから』ともう言われていた事をまとめてくれている本があったなんて。
 ネットですら『あれは実は真相はこう、作り物』とかちらほら見れるはずなのに、それでもこの本で当時のカラクリをはっきり知れたオカルトがいくつかありました。
やだ、楽しい。
 偽物の有名どころ、ミステリーサークルだとか、ネッシーの死骸だとか、勿論知れた話もたくさん載ってますが、『当時のこれとごっちゃにされた』とか『○○が犯人』とか、こうしてオカルトは作られた的な詳細が聞けてワクワクです。
そもそもの紹介案件が数多いのも嬉しい。
 ひとつひとつはさらっと流してて、え、そこん所もう少し詳しく!と思うような多少反証側の信憑性を疑問に思う部分もあるけれど、詳細は自分で調べると言うお楽しみもある。(『現象』についての証拠は是も非もどっちにも同じくらい求めてこそさ。)
広く浅いけど、簡潔に必要な所を載せてる感じ。

 いや、不思議がないと世の中がつまらなくなる、無粋だとか言う人は多いけど、心配しなくても自分の脳内の事からして不思議でいっぱいなのに、この世から不思議はなくならんよ。
 むしろこの手の蒙昧を把握するミステリー、世間への伝播性を面白く思ったり、仕掛け人がいるならそのやり口の巧さ、あるいは集団で尾ひれを付けていくアイディア性、そこら辺を楽しむ事もオカルトの楽しみ方の一つだと思う。
キャー、怖い!派も実際はこうだな!派も、結局どっちもオカルトが好きなんだよね。
 暴いても暴いても、それでも解かれない謎もあるし、そもそも信じるかどうか。

 この本を読んで私にとってオカルトが、世の真実だとかどうか問う『思想』なんじゃなくて、単なる考えて時に怖がって楽しもう『趣味』のジャンルの一つなんだと、腑に落ちた気がします。
パワースポットには行くな!

 タイトルから期待しましたが、うーん、イマイチ。
元よりオカルト系に正しいも何も判定の余地がないのですが、根拠はやっぱりないわけで、自身の霊感によるところの本。
人の世の道徳とか良識に外れてなければ及第点と思えるってだけのものでしょうか。
パワースポットと言う流行りとサブカルチャーのギリギリラインを逆手に取ると言うキャッチャーさは上手いと思うけどね。
 おまじない雑誌の紙面をだらだら読んでいるみたいな感じで本の構成としてもあまり読む気が起こらず。
流し読みで終わる。
超常現象

 NHKスペシャルの本でした。
何と言うかこの間読んだ外国のゴーストハンターとはまたえらい角度の違うガチガチの科学検証が魅力です。
使ってる機材とかは多分近いものがあると思うんですが。(精度の差はあるかも。)

 この人のテーマは『最初に結論を決めない。中道で検証して事実だけを伝える』と言うもので、例えば同じ実験をしても、その内容を自分の求めるものに置き換える事は可能だと言うような実験など、物凄く頷けるスタンスで。ああ、これだよ、この感覚だよ。
 頭から信じて騙されるのはダメだが、そこにある事実から目を逸らすのも同じくらい愚か。
証明出来なくても超常現象はあるのだと言う人たちに断言して『ない』と言いきれないのがここだよなぁ。一番難しい所。(まぁ事実すら脳の誤認がありますし言い出したらキリがないのですが。)
 基本私も想像力だけの塊の様な超常現象は全く信じないのですが、説明のつかない出来事に対しては根拠もなくないとは言い切れない。
それは古く太陽が回っているのか地球が回っているのか一個人が確認しようがなかった時代と同じ。
今では常識な事も当時の科学は証明しきれなかっただけで―。
 この先、幽霊や宇宙人や、遠い未来で当たり前の事が今科学で暗いと言う可能性はあるわけです。
 また著者は、一見科学を否定してそうなこの態度こそが、科学の可能性を信じるという事、広げるという事に繋がると言います。
今超常現象を調査している科学者たち(例えばそれがないと言う研究者よりあると言う研究者)はそれらを科学で表す方法を、今の時代の最先端で必死で考えているのだと。
(とんでも理論が胡散臭がられる事は当たり前でもあるが…。)
 これで一番難問だったのは、生まれ変わりの話。
幼い子供が知りえない自分の前世を語る。それが当たっている。これですね。
 無意識でその情報を見ていると言う人間の無意識論、あるいは子供に何度も同じ事を聞かせているとそれが本当の記憶に変わると言う実験、否定的な事も取りあげつつ、人種文化時代無関係に生まれ変わりが出てくる事実―。(日本も江戸時代から記録はあるそうな。怪談かな?)
 他にも臨死体験。これも人気のある分野なんだとか。
同じく人種文化時代関係なく多くの人が体験しているものですが、トンネルや花畑、川、これはちょっとイメージに毒されている気がしなくもない。
 例えばトンネルに関しては脳のブラックアウト時に狭窄視野に陥り、周囲が真っ暗で中心だけ視界が効いていたりとかあるわけで、この事を言っているのでは無いかと言う説。(仮死状態になると脳への血流が少なくなる。)
 ああ、貧血の時なんか良くブラックアウト、ホワイトアウトあるから解るわ。この視界。
 聴覚だのもふわっと奪われるから戻る時現実世界の人の呼びかけが急に聞こえたとか、幸福感だのは格闘技なんかで落ちるのが気持ち良いとか、確かに類似事項は多い。

 この本では特にこれらを嘘か本当かと言う結論付けはしないので、まさしく読者のお好きなように、です。
 ただ面白かったのは、臨死体験をした人は生き様がガラッと変わる人が多いのだとか。命に関する向き合い方が変わり、人生を丁寧に生きる様になるんですと。
笑ったのが教会に通うのを止めちゃう人が多いんですって。人生の無常を知った―のではなく逆で、精神性が高まり説教を聞く必要がなくなったから、との事です。(体験者談。)
 おいおい…この言い方じゃぁ現時点で教会に通う奴は精神性が(ry
 天国を見たが故、神の御許を離れる―皮肉なもんですね。

 とにもかくにも中道の本。歴史の真実本でも思ったけど、読めば読むほどすべてが解き明かされた未来に生まれたかったと割と本気で思ってしまう。ピラミッドの謎とかその手の番組も作った人達みたいで、ここら辺納得。好奇心のくすぐり方はさすがプロデューサーと言えましょう。
 オカルトも科学も好きと言う人はご一読をどうぞ。