元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
近代建築散歩 京都・大阪・神戸編

 建物って、何か特別感のある存在です。美しさや面白さ、重厚さや空間―。
どちらかと言えば二次元となった間取り図の方に俯瞰的な好みを見つけるのですが、評価された建物自体は、また一種独特の鑑賞に耐える、触れてこその存在に思えます。
写真だけでなく目の前に立って圧倒されたいと思うのです。

 この本、掲載量がかなりあって、これだけの物を一堂に写真で並べられると、唸っちゃいます。
タイムスリップしたかのようでもある。
 もし周るならそれらが集中したエリアを…と思うのも当然で、この本、きちんとマップも付けてくれていてエリア別なので親切です。
カラーも多く、素敵な一冊。
世界の美しい本 世界で最も美しい本コンクール入選作品コレクション

 本と言うだけでもう美しい要素が始まっているんですが、期待度大のタイトルです。
 で、これは実際に装丁などを競うコンクールがあるのですね。その為の本ではなく、既に出版されているものを推薦するような形。
日本人の名はほんのすこーしだけ出てくるんですが、基本的に外国の本のようで、日本の出版社の物はありません。
ああ、残念。多いのは北欧、中国あたりかな。

 いやぁ、確かに綺麗だわ。
豪華な装丁の本って(飾り立てられていると言う意味でなく、計算されたデザインのもの)、本当に美しい。
タイトルに偽り無しの本。
 この本自体も美しい装丁になっていればもはやいう事無しでした。

 世の中の本が全部美しくなればいいのに…とか思いつつも、大衆の為であるお手軽な本が無くなるのもの困るので、住み分けかなぁ。持ち運びの重さとかも、耐久性、レーベルごとの統一感とかも考えちゃうし。
 なお、同じタイトルの本があり混乱したのですが、こっちはサブタイトルも含めて…か。あ、コンクールって書いてたわ。
可笑しな家

 写真でがっつり、世界のヘンテコな家を特集。
言っても、芸術的だったり、変わった形だったりと、おかしさの方向はまとも。受け狙いとかじゃないのね。やたら曲線だったり、土に埋まってたり、岩に挟まってたり、立方体を斜めにくっつけたり…と往々にして美しい反面、収納の無駄になる作り。=オシャレ空間とも言える。
 中にあまり物を詰め込まない贅沢が要求される家が多いと思いました。
住まいとは、住み心地が先に来てこそ住まいであり、人が住まない前提のものは単なる建物って気がするのですが、ちゃんと皆住んでるって言うんだから、大したものです。落ち着きや好みも人それぞれだね。
面白い本。
デザインの骨格

 期せずしてなかなか読み応えのある本に巡り合う。
これ、プロダクトデザイナーの人の本なんだけど、suicaの読み取り機とか、携帯とか、車とか、時計…とかなりの有名どころのお仕事してる人のものでした。
へぇ~…。
 何が面白いって、その作る過程、かな。
この本、その手順ではなく、思考回路を語ってくれてるの。
 人が使うものであるから、実験をして、どうすればスムーズに、狙い通りの動きをさせる事が出来るか―。狙い通りの動きって、製品がではなく、使っている方の人が、ですよ。
 例えば上記のsuicaの話だと、ほとんどの人が立ち止まる事なく、スムーズに流れてこそのデザインらしく、そんなのシステム、機械上の問題じゃないの?と思えばそうではないと。本体のデザイン、角度の一つで人の間誤付きが違い、人の流れの渋滞を巻き起こすかどうかが決まるんだそうで。
生かすも殺すもデザイン次第?!おぉ~…、こう言う話、好き!

 で、同じデザイナーの中でもアーティストたるデザイナーたちと、このプロダクトデザイナーはかなりあり方が違っている。
人を読み、そのために科学し、製品を最大効率、かつ美しく仕上げるか、そして経済活動である以上スピーディーに組む。
 自分だけの世界で完結し様がないんですね。それを使う人、それが組み込まれる環境を把握しきってこそ設計が出来るお仕事。
この人は科学する事がプロダクトデザインに通じているとの考えで(凄く納得した)、話のネタも、非常に手広い知識で彩られていました。

 途中、チューリングパターンの話が出てきたのも面白かったけど、寺田寅彦が科学と漫画の関係性に言及していた文章があるとかもさらっと書かれていて、横道読書の誘惑にも満ちていた…。(この文が読みたくて、早速探して出して読んじゃったわ。)
 その視点は、漫画と言うデフォルメの中で掬い出された対象物のエッセンスこそが、決して似つかない存在でありながら、何よりもその対象物を雄弁に語ると言う素敵な説明で、それがロボットデザインの話に通じたり―。
 またこれを意図して、著者が生徒に『河原の石を木彫りで表現しろ』と言う課題を出したら、実際にそっくりそのまま彫り上げたものは到底石に見えなくて、石らしい何かを捉えて彫った木彫りは石に見えると言う面白い話を紹介していました。ここら辺を全部読むと、ふいに不気味の谷の事が頭によぎったわ。

 こう言う、一見関係のないものが巧みに影響を及ぼす大局観ってのは、聞いていてワンダーに満ち溢れていて、堪らない。(こういう話を聞くと、例え下らないとされているものや無価値そうなものから、どんなヒントや真理を見つけるか、読み取れる人の質って本当にありそうだと感じるよ。)
 また見開き毎に著者がデザインした見事な製品や、デザイン図(写真にしか見えないのが数点ある)が載っていて、美しさにほぉっ、とする。
 あるいは他人の手に寄るデザインを読み取るのもお手の物のようで、アップル社の製品を解体してみたり、製造工程を割り出したり(出来上がった製品の切り口や形で逆に工程を割り出せる!凄すぎる。)、プロだなぁと唸るばかり。
 最終章には著者が書いた漫画まで載っていて(著者は漫画もお好き)、なんともボリューム満点の一冊。
それは嬉しいんだけどちょいと重いなぁと思いながら読み上げた本です。
明治はいから文明史

 単なる明治紹介本と思っていたら、これが小説(お話?)形式でそっちでも面白かった!
明治時代のそこそこ良い所のご家庭をメインに、明治らしい事件や文化、商品や流行りを入れて、章ごとにお話を綴ります。
 ううむ、ちょっとハイソ(父親が医学教授で海外へ行ったりする)と思っていたら、これでモデルは中流家庭の上なのですと。
…普通の上流階級って、どこら辺から何だろう?
資産家とか貴族??
 まぁ、裕福な分おっとりしているのか、昭和の父親、波平さんですら雷を落としまくりなのに、この父親は怒りません。
まぁ冗談を飛ばし、家長として尊敬されていて権限も持っているのに、妻や子から揶揄されても『こら参った』とばかりにてへへで終らせている。…凄い余裕だわ…。
 子供も、大学生と…これは今で言う所の高校生か?当時の学校制で言われても年齢がはっきりしませんが息子と娘と。丁寧な喋りで育ちが良さそう。それとも昔はこれくらい言葉の乱れもないのが普通だったのか。
親に敬語、でも和気あいあいと言う幸せ一家です。
息子は野球をやっていると言うあたりも明治文化でハイカラなのかな。

 海水浴が湯治みたいなもんだったとか、ハレー彗星に便乗して何故か口中香水(何これ?仁丹かマウスウォッシュ的なもの?)が売られたり、宣教師が女子の教育に一役買っていたりと、色々驚きのエピソードがあります。
 あと、昔の機関車って、通路が無く進行方向に向かって椅子だけ、両横に扉と言うタイプがあったのには観光地のお猿の列車的なのを思い出したよ…。ははぁ、成程なぁ。一見不便だけど皆座れるし、出入りも出来るか。
 また科学の走りかSF小説が花開き、ガスや電気が最新文明と言う具合。
今の時代は技術は日進ですが、廃れるのも早くて、特別な驚きも薄れてますものねぇ…。
明治はハイカラと言う単語が出来ただけあって、国も技術も生活も、人の意識もまるごと新しい波に飲まれたかのような時代です。

 お話の合間に詳しい説明を挟む感じで、内容はかなり事細か。
逆に解らない、はっきりしない、一概にこうと言うものがなく事例がありすぎるなど、説明できないものはそのまま認めて書いてくれているのも親切です。
後書きが対談形式なのだけど、なかなか面白い本を作ってくれたなぁと感心します。
 本自体は新しいものじゃないけれど、内容が明治の事として完結しているので、古さも感じず、寧ろこの構成が上手いので、新鮮に読めました。