元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
イギリスの学校生活 娘のハイスクール体験

 発行年からすると古い話なので決して今のイギリスではないのだけど、軽く読み物として。
 父親の海外赴任に家族全員で移住、学生だった娘のてんやわんやのお話、と言う所です。
まぁ父親の方が語っているので、手続きや日本との学校の兼ね合い、卒業資格とか色々帳尻合わせる苦労話が大変そうでした。
入学月も違うし、学年をずらして対応しなきゃとか、どうしてもね。
 英語力の事は始終付きまとうのですが、教育の中身も相当違うようで、みんなで同じ事を学ぶと言うよりは自分のレベルに合った教室へ各自散っていくような授業スタイルの様です。
だから一科目にレベル別の先生が大勢いる、と。
 理にはかなってるけど、贅沢なシステムだなぁ…。
 あとそもそも統一学習容量が無いので、学校によってやらせる内容がすべて違う。
著者は絶賛していましたが、いろいろ大変じゃないのかな、これ。
 画一的な試験で子供の能力は測れない、とか言いますが、同じテストで公平かつ出来を数字で明確にする事、これはこれで攻められる謂れはない気がする。そりゃテストの勉強が身に付いてるかは個々の問題だけど。
 イギリスはここら辺、歴史だと何年に何があった、でなくどのような流れでこういう事が起こった、と言う因果を理解し、それに対して自分の意見を持つ事が重要視されている。それは詰め込み型の学習よりもはるかに意味がありそうと言うのは解るけどね。

 しかし驚いたのは国で必須とされているのは『宗教教育』のみで他は何も必須でないと言う事。数学も社会も理科もやろうがやるまいが、学校の自由。
これ、学校教育を受けたすべての人間に共通の知識が『宗教』以外になく、これは知ってて当然、出来て当然と言う前提が全くないに等しいよね?
 やはりある意味不便…。義務教育レベルの土台が合って交わされるお約束が通じないわけだし、日本的に言うと集団生活でスムーズな流れが期待出来ないなぁ。
代わりに得意な事は凄く得意と言う能力は育ちそうだけど。
 まぁ、どっちがいいとは言わない。
単純にそれぞれの社会に合った教育システムってだけなんだと思います。だから深く考えずイギリスの教育は良いから日本でも組み入れろ、とか学校内部だけの話で判断するとおかしな事になっちゃうと個人的には思います…。

 しかし学校で宗教を習わせるんだというのはカルチャーショックですね。
あちらの文化はキリスト教ありきの文化と言う点では、確かに皆が持っている学ではあるようですが、これは歴史や背景を習うのか、はたまた神の存在まで論じちゃうのか…ちょっと構えてしまいました。
 日本人がお寺で説法聞くのとはまた違うのかね。仏典なんか触れた事もないし、習わされたとしたら…せめて好きな神を選択したい所です。(無神論用の学問があっても面白そう。)
 教育の自由や個々を重んじると言いつつ、宗教は有無を言わさないって、何なんだろうな…。
横道に逸れた感想を持ってしまいました。

 何にせよ娘さんが体験したイギリスでの学校生活は、確かに有意義なものであったようで、英語と言う壁はあったものの、学習のひとつひとつに意義があり、教師は誇りにかけて生徒を教え、素晴らしい時間を過ごした事が解る本です。
 それとは別に、改めて横道ですが、今の時代の海外の学生の生活を知りたいな、と言うのと、ちょっと海外での宗教教育に興味を持ったと言う感想も。
 あと、自分の英語能力のなさに少し虚しさを覚えてみたり。
うん、数年の授業の意味は…。
家族幻想 「ひきこもり」から問う

 引きこもり要素は自分も二つの点で持ち合わせていると思う。
体調不良なんかでベッドの中で過ごしている時期、全然苦にも思わず冬眠ライフをこなしていた事。
もう一つが、ある日いきなり、儘ならず外へ出られなくなる。そんなビジョンが割と鮮明に思い浮かべる事が出来るくらいには心の中の危うさが自覚出来ている事。

 引きこもりではまず『外に出たくても出れない』、自分で行動をコントロール出来ないと言う点が何よりも問題になってきます。(となると出ようと思えば出れる人が引き籠もるのは単にインドア派と言う事なんだろうか?外との接点を欲しないと言うか。)
この本に出てくるのは別に開き直って、或いは好きで引き籠もっているわけでなく、社会に出たい、あるいは出なくてはと望む人たちの話です。
 解るなぁ…。外との関わりが煩わしく逃げたいと思う反面、離れすぎても不安になる。望む距離感の二反律が同時に自分の中にあって、身動き取れなくなる感じ。
そして現実問題としての生活資金の問題からも逃れられません。

 筆者が長年取材を続けている人たちは、読んでいると苦しくなるくらいに、真面目で、融通が利かず、常識や社会の枠に囚われている人たちです。社会との接点に対する希求も持ち合わせ―いや、恐らくこれがむしろ平均以上に強いため、ギャップに苦しんでいるように思えます。怒りも毒も、求めるが故に比例して噴出し、発散、表現出来る方法自体も絞られてくる。(とある医者は『出来る事が少なくなっていく病』と評します。)
それと同時に、引き籠もっている自分を誰よりも恥ずかしいと思っているのが自分、と言う人たちです。
 自分が許せない。これもある意味プライドの話なんでしょうが、自分自身の期待を裏切る自分、或いは他者に迷惑をかける申し訳なさ。引きこもりの人は多かれ少なかれ、この思いも抱えていると思います。
 ある意味人はどこかで鈍感にならなきゃ流せないものってあると思う。

 筆者の分析が深く、かつ個人的な思い入れがあるようで、時に上滑りや場合によっては芝居がかって聞こえる時もあるのだけど、それだけ取材対象に本気で付き合ってきたんだと解ります。
 こういう良いも悪いも、近くも遠くも、バランスの取れてない意見こそ、生々しい現場感があるんだよね。ルポライターとしてはいただけないんだろうけど、真剣さは伝わってくる。
それでも分かり合えずに取材相手とトラブルになったり、その流れも含めて、『ひきこもり』を分析しようとしている姿勢はこの本の中の全編に渡っていると思う。
 ただ単純にこの本の中に出てくる各個人の事だと、普通に性格的にどうよ…とかその考え方は…と文句も出て来ますし、全面的養護が出来るかと言われれば出来ません。明日は我が身と言う問題であっても、いや、だからこそなのか、前述の様に『自分を責める自分』と言う枠がある以上、叱咤の思いは必ず出て来るでしょう。そう思われる事の苦しさを理解しつつも、簡単に容認出来ないのです。
 カウンセラーは理解をしても共感してはいけないと言う話を思い出しました。私は同じ所で溺れる側の人間だわ。
まさしく同一に陥りながら『考えさせられる本』です。(なお『どうすれば問題が解消されるか』を著者が訪ねて回った時、それは難しい、となったのが推して知るべし。)
 
 他、親側の話、或いは親がいなくなったら、女性の引き籠もり等テーマ別に章が続きます。
個人的に割と躓く種はそこら辺に転がっていると思う、怖い問題だと思います。
学問のしくみ事典 あらゆる「学」の歴史とつながりがわかる

 本当に事典。これは読むとかでなく、必要な所を開く感じかなぁ。
どの学問はどこから派生して、誰が提唱して影響を受けて―と。
本気で読み物として読んだらめちゃくちゃ時間かかるよ。普通に事典を読破…とかしないもんね。
 よくこういう面白い目線で事典を作ったなと思えた一冊。お役立ち。
ダーウィン賞! 究極におろかな人たちが人類を進化させる

 まぁ皮肉の賞だね。
愚かすぎる理由で死んでしまった、或いは生殖能力を失った事で、そんな愚かな遺伝子を残す事無く人類の進化に貢献した人を称えようと言う賞。
冗談きついわ~と言う感じですが、漫画みたいなことがあるんだなぁと言う不運の連発や、トチ狂ってるとしか思えない行動、また不可解なその動機。
人間の可能性と言うか、突拍子もつかない事って山の様にあるんだなと唖然とした一冊。
文学全集を立ちあげる

 架空の文学全集を作っちゃおうぜ!と言う楽しい企画本。
これもまたある意味古典至上の話なんですが、他を下げないのでそんなに腹も立たないよ。
 ただまぁシェークスピアがすべての小説の祖、とか、古典も読まずに小説を書く人たちはすぐに消えていくとか、若干多様性に寛容でない発言も見られます。
読まずに書いた人は居てもおかしくないだろうし、黎明期なんて誰でもサンプル無しに書いてきただろう。そのジャンル初、とかね。
 ただ、そもそも日本の文豪、あるいは他国の文豪も、古典を読んで真似をしたなんてのが結構あるようで、幹を手繰りやすいようなのね。それを聞くと何が根底になるのか、誰それは誰派とか、分かる話も多い。
 確かにその言い方をしたら今の小説や漫画をさらっと書いちゃう作家さんも、小さい頃からこれを見て―とかで熱くなったものが似通っている事実はあるだろうし。
カテゴライズもオリジナリティも、捉え方次第であるが故に、出る話なんだろうな。

 実際この本の中の3人ですら、あれを入れろこれを入れろ、あーでもないこーでもないと決して一枚岩ではありません。
だからこそ議論が面白かった。
結構はっきりと自己主張で他の候補をぶった切るくせに、感情だけであの作家は嫌いだとかも言っちゃう。…いいんだ、それ。
(あと翻訳は誰版が良いとか悪いとか。)
 万人に読ませる文学全集の割には、3人色が強く出ている選び方で、成程、選者ってこういう所で量られるんだなぁと初めてどういう物なのかわかった気がする。
書いてる人でもないのに権威的に扱われるのは、このせいか、と。
己の本棚、教養、考え方を晒す仕事なのね…。
 タイトルだけ、名前だけ知っている人オンパレードですが、知らないなりに読んでるだけで楽しくなってくるので、この編集過程(この本のメインは実にそれ)を晒すのって、意外と面白いものかもしれない。
意図とか狙いを知った上で吸収すると言うか。
 気が向いたらこれに倣って読むのも乙かもしれないと思えました。
 とりあえず知られざる『○○(国名)文学』と言う括りで各文学のカテゴライズだけでも勉強になります。
 後半は日本文学全集がテーマなんだけど、これもより身近にあるだけ、今までの文豪ら作品の良い悪いの価値観が変わる発言に、わくわく出来ました。そういう見方もあるんだ~、と言う無知故に呑気な感想だけどね。

 興味深く読めた一冊。
実際この架空の文学全集、全部読んでたら、何年かかるんだろうね…。
 (しかし途中で笑えたのはうちの家人が大好きな一冊がコテンパンに批判されていた事。
しかもまさに大好きなくだりが全否定されていた。はは…だから本って好みの世界だよね。
好きな本を読めばいいんだよなぁ。)