元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
人間臨終図巻 1

 あ、著名人が亡くなった時の記録本って、もしかして元祖はこの人だったのか?
少なくとも有名だったようです。見落として他のこれ系の本をメモしてたけど、山田風太郎が書いているなら断然こっちだな。と大まかにこのジャンルを腹八分目には食べたつもりでいたのに、おかわりもう一杯。(代わりに他の似たような本はもう要らない。)

 一応続いていくんだけど、さすがに1巻目だけで良いかと言うラインは引いておく。(だってめちゃくちゃ長くなるもん。)
 この本、何が凄いってまぁ取り扱ってる数です。
段違い―と言うか桁違い。923人と言う恐ろしい数。
…ぇ?調べたの??この人、何?作家だよね。何この自由研究…。
 さらに面白いのは、これが『死んだ年齢順』に並んでいる所。
若い順から大往生までね。
必然的に1巻目は幼い頃からまだ若い内に亡くなられた方が並びます。
その並べ方は解りやすいよね。
 「あの人とあの人は同じ歳に」、とか「あの人は自分と同じ歳で」とか、すごく興味が持てる。
 普通は歴史的に起こった順と言う時間軸を使う事が多いのに、並べ替えも大変だっただろう。
 一人一人にそう多くのページを割いていないものの、数の力は凄く、読んでいてもう目が疲れて、情報量が多すぎて…まともに読み切れませんでした。
 この発想と、調査と、その成果。
感心しかない一冊です。
 自分と同じ年齢位の所を読むのが一番面白いと思います。
栞子さんの本棚 ビブリア古書堂セレクトブック

 ビブリアシリーズは人気の声を聞きますが特に食指が動かないままで、何故か作中に関連深い作品を集めたセレクトブックだけを読むと言う。
いや、中の短編のいくつかが、ちょっとだけ読んでみたいものが多かったんだよ。
うん、文豪の辺りね…。
 気になるんだけど高い確率で一冊読み切る程自分の好みじゃないだろうと予想しているので、ちょっとだけ、ほんの一篇だけお試ししてみたかったの。
まぁ案の定と言うか、全然肌になじまなかったわけですが…。

 何と言うか、だからどうしたと言うあの文学特有のオチ無し感がやっぱりダメで、特にこれは短編は全部分だけど長編は一部抜粋と言う形がダメだったのか、不完全燃焼感がすごい。(え?一部なのかどうかは書いてくれてないの??え?)
 おかげで本当にそこで書き終ってるんだか謎のまま。ほら、文学って突然終わったり、未完のが多いから…。
『蔦葛木曽棧』なんて、どうなるんだこれ?と言う始まってすらいなさそうな所で終っており、一部かなぁ…ともやもやしていたら、本編自体も普通に未完らしく、手を出していたら危なかった…。
 あらすじ的にはほとんどの作品、もやもやしたまま流し読み。名作と言われている(らしい)『それから』はもうだからどうした感で心の持って生きようがないし、『晩年』はだらだらと突拍子もなく続くし…。(でも意欲的だなぁとは思った。斬新。)
 そして詩もダメな事に気づく。…ははぁ、文学だけでなく、詩にも反応しないのか、私ったら。
もういい加減、文学コンプは諦めるのがいいな。

 むしろ海外作品の方に目を見張るものが多かったです。
『たんぽぽ娘』が可愛らしくてかつ切ない、でもハッピーエンドと言う素敵な作品でした。
『ふたり物語』はあのル・グィンが書いている恋愛小説ものという事で驚くへぇ…そんなのも書くんだ。

 まぁここまでテーマも統一感もなく色んな作品が読めるのはなかなか面白いものだと思いましたよ。
これ自体が作中に出て来る…と言う意味でも盛り上がりますしね。
こういう短編集があれば今後も積極的に手に取っていきたいです。
雨降りだからミステリーでも勉強しよう

 1950~60年代の欧米のミステリー作品を紹介してくれる本で…ものすごく細かい。翻訳もする人の様ですので、当然原書で読んで、面白いのを日本に紹介…と言う部分もあるようなのですが、それにしては凄まじい量を読んでいる気が…。
 またあっさりと面白くないものは面白くない、この本はこれくらい途中で放置、その本は○ヶ月くらい取り組んでいる、あの本は何回読んだけど全然解らんとか―いやいやいや、文句言いつつ最後まで捨てないし読みこなすのね。
 しかも文章がまるで古くない。これ、1972年刊行なんですけど、てっきり最近の物だと思って読んでた。
これは凄いわ。
 1、2作目がダメでも3作目で化けたとか、作品解説もするだけあって、目を通している幅が広く、その上での批評なので、貶す所も褒める所も完全に自分の物にしてから言葉にしている。
 その上で上記の様に解らんものは解らんと正直なもんで、個人的好みもあろうが自信もって本の良し悪し、点数を付ける。
…ここまで徹底されると、他の意見は出にくかろうなぁ…。
 映画や音楽にも造詣が深く、その豊かな知識の中でとにかく彼の中で比較対象や事例もびしっと把握しているから、あれに似てるこれに似てる、これと比べるならあの作品、点数はこうだけど、そう言えばあの作品と言えば参考になるこんな話が合って…と、大体の章は入れ子細工の様に余談(これまた批評に必要な前知識だったり、別作品の説明だったり)で埋まっている。

 何よりも圧倒されるのはそのあらすじの量。
いや、もうダイジェストでラストまでと言ってもいいくらいに、その作品のあらすじを書いてくれていて、ネタバレ云々と言うより、『あ、そこまで内容ばらして(ほとんど書き切っちゃって)いいんだ…』と呆気にとられます。
まぁ、説明しなきゃ批評も出来ないんだけどさ。
 本人も『この本、あらすじ書いても面白さはそんな所にないんだけど』とか『自分の作品のプロットでもないのに書かなきゃ説明出来ないから数時間もかけて書くんだけど』とか、とにかく批評に対しての下準備が丁寧なのね。
 おかげであらすじを聞いても意味が解らない(味は別の所にある作品)とかあらすじだけでラストまで聞いちゃった(この流れに意味がある作品)とかたくさんあって、情報過多で時に疲れが出る本です。
 へぇ、こんな本があるんだなぁと言う流れになれば上出来なわけですが、果たしてこの本、勉強…と言えば欧米ミステリーの全体的なあらましも語られてますし、本来はその意味の方が強いのかなぁ?
本の紹介本…と銘打ちながら、まるで歴史書の様だもの。(『勉強しよう』、と偽りなし。)
 逆にあっさりと出だしとまとめだけの数行あらすじで紹介された本の方に読みたいと思えるものがいくつも。
やはりその先を知りたい気持ちをくすぐられる紹介が一番かな。
 それでも筆運びやセリフなど、あらすじに関係ない部分を見所として挙げられていると、色んな好みに対応して答えてくれるガイドブックだなと思います。
 ただ実際ニッチすぎて、いくつかメモしたものの、その作品が日本語訳で収録されている本を探し当てる自信はありません。そもそも日本に…渡っている作品なのかすら怪しい…。
まぁ、圧巻の本でした。
あらすじで読む日本の名著 No.2

 相変わらず衝撃的なあらすじがボロボロと。何て興味深いんだろうなぁ、このシリーズ。これだけで読んじゃった気になるのはズルだけども、面白いんだもん。
 特にツッコミを入れたもの、印象深かったものを羅列。もうね、そもそも文学に突っ込み入れたらダメなんだろうな。人生の酸いも甘いも無関係でスイマセン。
 そして今回は作者たちのプロフィールの方に反応しきりでした。夏目漱石の周囲話を読んでるからか、プライベートで「ああ、これが…」とか思う人たちが多いもんだから…。

『刺青』
 え…単純だけど、そんな話なの??これ、よく本人納得したよなぁ。もう犯罪なんですが。洒落になってない。耽美とか情緒とか、吹っ飛ぶ流れだわ。
『夫婦善哉』
 これがかの…!ようやくあらすじを知る。
もう、蝶子、こんな男は捨てろよぉぉ。
時折、いや、文学シーンにはろくでもない人間が多く出て来るが、こんな男もどうなんだよ。
 この話から何を学べって言うんだろう。人情?いやぁ、イラッとしかせんわ。蝶子の器のデカさを知るのみ。
『藪の中』
 本当に藪の中だった…。(場所もオチも。)
斬新なパロディだと思いました。
 それにしても三者三様の記憶は良いんだけども、事実が一致してないのが不思議。
事実は一致させたまま、違う所を見せるのが手なんじゃないの?夫は結局縄を解かれてんだか、そして妻はどういう風に逃げたのか?あらすじだから把握出来てないだけかな。
『潮騒』
 「この火を飛び越えて来い」ってこれだったのか…。
しかし文学の割に(偏見?)最後がハッピーエンドで逆に驚く。
『銀河鉄道の夜』
 ああ。これも文学…なんだ?(いや、そもそも名著と言うだけで別にジャンルは拘ってないんだっけ、この本?)
各シーンがいろいろ記憶に残る所なので、メインストーリーを忘れがちなのですが、そう言えば彼は死んでいるのか。
 ところで素朴な疑問なんだけど、何人が主役なんだ、これ?そして日本人にしなかったのは何故??
『ジョン万次郎の生涯』
 タイトル失念。
ジョン万次郎の歴史を、まるで本人が手記を書いたかのように本人視点で辿った作品。
今では当たり前に有りそうな体裁だけども文壇ではここら辺が最初の試みだったのかな?やたらそこを強調されて説明していたから。
 彼の生涯はたいそうな冒険に満ち溢れていたようなので、ワクワクしながら読みました。
いや、本当にタフなお人だ…。
『鑑真』
 タイトル失念。
こちらも上と同じく。でも主人公は鑑真ではない。彼と同じ様な留学僧で、あちらの地で鑑真に絡むわけだけど、前置きとして『何故日本に帰る事を外国側が制限していたのか』がわからなくて、脱走にも似た苦難話を不思議に眺める。
僧で、留学―って所まで認めているんなら、自国に仏教を伝えるために帰してやれよと思うのですが。
 そして最後の積み荷が海に沈む辺りはあらすじで読んだだけでも「えーっ」と思う。
この「えーっ」は、やるせなさです。
一人の男が国の未来のためと生涯に渡って成した仕事が、文字通り海の泡、藻屑と消える。…無常すぎる…。
 難破は事実かもしれませんが、積み荷の件はどこまで事実なのでしょう。歴史上の事実を取り違えそうなお話でした。
『利休と秀吉』
 相変わらずこの二人は結末のせいで利休は悟りを開いている、秀吉はダメダメ!と書かれるんだなぁ…。実際何故利休の命が奪われたのかは気になるけども。
そしてそのせいでいつ何時、誰が書いたものでもこのモチーフ作品だと中で描かれる秀吉の人間性にイラつく。
 ただ、あらすじ読んでるとこの本の場合は利休もちょっとばかり方便も使えないのか~、と己を貫き通す姿の素晴らしさよりも、最後には現実を拒否した状況判断の悪さに目が行く。なんせ『俺は謝らないもんね!』合戦だもの…。
折れない心って良く言えばそりゃもう素晴らしい志なんだけど、悪く言えば…思い通りにならない現実世界の方が間違ってる!って目を逸らすにも似てるんだよなぁ…。
 この世はままならぬものと知りながら、嬉々として、またはニヒルに太鼓持ちされても困るけど、命と秤にかけるものが、昔はプライド的なものが多くて、空しくなる。己が価値は絶対か?この二人の話はマウンティングの取り合いにも似てるしなぁ…。こっちにも悪い所があったとか、相手の顔も立てようとか、なさそうなエピソードばかりなんだもの。(まぁ娘の件とか絡んでくると一概に言えないけど。)
 最終的に生きるか死ぬかになった時、精神的なものに価値が無いとするわけでなく、今の時代じゃほら、「まずは生きてみようよ」と言うのが主流でしょ。もしかしたら将来言える傷かもしれないし。カッコ悪くて泥水啜っても、俺は生きるぜと言う境地もあるわけで…。
あと、残された家族や周囲の計り知れない心の傷、ね。
実際の利休は、足掻いたんだろうか、笑って受け入れたんだろうか、真実は誰にもわかりませんが…。
 こう考えるとこの作品は、色々考えさせる物語でありそうです。
『華岡青洲の妻』
 タイトル失念。
知る人ぞ知る青洲さんですが、麻酔を研究したお医者さんですね。何かしら目に止まるんだよなぁこの人。
 しかしこちらはその奥さん視点でのお話。
まぁ…なんと言うか嫁姑の争いが…執念のぶつかり合いすぎる。怖い。青洲さんの横でこんなドラマティックな展開があったとは。
 何せ姑は勝気、嫁も一本気、2人して争って息子の、夫の医療の実験台になろうとする。…こういう方向で競うって、もはやただの嫁姑問題じゃないよね。ある意味燃えさかり、引くに引けない愛憎劇よ。(なお、恋愛結婚どころか、この姑さんが、体の強そうな娘を嫁に選んで連れてきたと言う…。)
お互い相手を陥れるのではなく、どちらが青洲にとって役に立つかで勝負するのが潔すぎますわ。しかも実験台とか、当時の医療、しかも麻酔ですもの。命がけですよこれ。
実際数日意識を失うとか、失明するとかまで行ってます。
 なかなかに生々しいあらすじでした。怖い。

 いろいろとここまであらすじだけ読みまくると、そろそろ文学で男が主人公だと、(心情を書くせいか)情けなくろくでもなく、思い込みの激しい男しか出てこない、これ定説と感じてしまう…。
つくづく自分は文学には向いてないんだなぁと思う。
 なお、今巻でようやく女流作家の名前もちらほらと出てきたので、ますますバラエティに富んで読み応えのあるシリーズとなってきた気がします。
次も読もう。
あらすじで読む日本の名著 No.1

 文学をとんと読まないわけですが。
あらすじだけでも知っておくか、と面白そうな本を発見。
 まぁ…前書きで漫画を貶しまくってて、『文学を読まないから若者の質が云々…』と熱弁をふるっておられる所は頂けませんでした。
表現された作品からどんな感銘を受けるかなんて受け取り手の心次第でしょーに、漫画を笑うものは現実社会で深い経験を積んでいる人に『文学?本?文字?これだから現を抜かしているものは―』とか言われても受け入れるんでしょうかね。
映像でも芸術作品でも、表現の形で価値を決めつけるのは可能性の損失だと思います。
 これは人に寄りますが、いざ文学その物って、読みづらいんだよねぇ。せめて現在口語訳でお願いしたい。そして内容もしんどい。
実際に鬱になるくらい変質的なまでの俗世界を描いた上でその中に高潔だの理想だのをぶっ込んでくるので、それを例えばしょせん『痴話喧嘩』だの『嫉妬』だの『自分が正義』と一言で斬る人間なら、これこそ下らねぇ、で感想終わりなんですよ。
 腐せと言うなら文学の設定は芸能雑誌の他人の人生覗き見根性と変わりません。
(いや、だからそこから感じるのは受け取り手だから文学も否定しませんよ?)
 文学、文学と文学だけが高尚扱いされていると反発も抱くわけで、そのせいで文学から離れる人間も一定数居ると思うんだな。
文学に非ずば読書に非ずと言う選民思想。
 これはどんなジャンルでも言えるけど、文学に限らず、ライトノベルだけ、ノンフィクションだけ…ととにかくその態度が嫌なのね。
私的には自分の好みの問題で、時代小説やライトノベル過ぎるものはあんまり読みません。エログロも。けどそれが、世界に害悪を及ぼしてるとか思わないもの。(よくあるけどそれを読んでるから犯罪ガー、とか、おかしいだろ。指向性の問題だ。ガス抜きの役割を果たしている所とか功績部分をなかった事にするのもな。)
 文学も苦手。と言うよりフィクションでもノンフィクションでも、基本的にゴシップに興味がない。現実を生きるのに糧になるからと苦しい思いを共体験するのは、必要以上に肉体鍛錬に勤しむジムの様にも映る。
知は奪われない財産ではあるけれど、溜める事が手段から目的と変わるのは本末転倒で、その瞬間から知の存在意義は消え失せるんじゃないだろうか?
 より良い人生のための知を集める行為が、慢心を生み出す毒となる。
それこそが文学になりそうなテーマだよな。
 文学の面白さを人に知らせたいなら、関係ない他ジャンル下げなどせずに、好きなもんを好きという態度だけで表してくれればいいんだよ。
人は誰かが楽しそうにやっているのを見て、あれいいなぁって思うもんじゃなかろうか。
あれダメこれダメ、これだけが正道!なんか宗教みたい。
 もし何かのジャンルに害悪を感じるなら、それはそう言うテーマの一冊で語って欲しいな。100%良いものも存在しないだろうから、意見としてはありだよね。

 さて、しかし内容は大変面白かったですよ。
あの作品、この作品、…ぶっ飛んだ話が多いなぁ…。
いやでも波乱万丈のあらすじは好奇心くすぐるものです。
 中でもお役立ちだったのは『未完』となっているもの。…ぇええええええ?!引っ張っておいて、結論隠し…、いや、存在しないだとぅ?!
これはストレス溜まる。間違って読まないようにしなくちゃ。
 そしてタイトルからは想像もつかない、または想像と違った色んな名作。
読み応えもあり物凄く興味深い一冊でした。
『高瀬舟』とか『蟹工船』はあらすじだけでも面白く読めたよ。
 あと『野菊の墓』とか『雪国』、こんな話だったのか…。
『金色夜叉』にも誤解してた。あらすじなんで実際は間違ってないのかも知れないんだけど、寛一お宮の単語だけが一人歩きしてて、お宮って…もしかしてそう酷い事してないんじゃないの?寛一の暴走的要素はないの??ある意味気になるあらすじの書き方だ―。
 冒頭にそのままの文体が数行載ってるのですが、失礼ながら読みにくい昔文体の作品はこれで避けられるなと思った。便利。
このシリーズは続巻があるので、是非読んでいきたい。
 この中から読んでみたくなる作品があれば世界が広がって嬉しいな。
本当は文学だってボーダレスな作品はたくさんあって、ジャンル分け自体、意味がないのかもしれないんだけどね。