元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
世界の終わりの壁際で

 近未来。ゲームに勝ち進めば『壁』の中の街に住める。壁の外側のスラム街に住む主人公はある日少女と出会い―と言う良くありがちなライトノベル的あらすじだったのですが、読んでみると成程、ゲームは金を稼ぐ手段でしかないのね。
 とてもSFチックな話で、ゲーム(対戦バトル)をバーチャルで行うため、自分の補助人工知能など、そこら辺が見た目にも分かり易いSF感か。

 その通り、確かにこの作品には解りやすいモチーフが溢れている。
 このバーチャル戦闘もそうだけど、壁で隔てられた選民とスラムの対比や、いずれ来る洪水から逃げるために街はノアの箱舟として存在している、とか。
一昔前のSF感なんだけど、その分世界観の馴染は早いな。(巻末の選評でもそこら辺マイナスに書かれていたけど、これだけ出し尽くされたジャンルで常に新しい物を望まれるのって最初から壁が高い気はする。かと言って新感覚を詰め込んだ作品ってわけのわからないものも多いし、一概に斬新だから良いってわけでもないよね。この世界観を安定と取るか古臭いと取るかで評価分かれそう。)
 ただし各キーワードは古臭いものではあるのだけど、読ませる力はあった。
ありふれた設定に、ミドルティーン主人公、美少女キャラを出してきたり、自分に従う人工知能、強大な力、ゲーム―と、オリジナリティは感じられないまでも、ストーリー展開や各キャラの主義主張ははっきりしてる。(例えばこれを中年主人公、ノーヒロインとかでやったら相当ハードボイルドでハリウッド的な話になりそうだな。ただ若さ故の希望あるのみの行動などは違ってきそう。)
それこそ黄金パターンかもしれない主義主張だけども、どれもこれも自分が良かれと思う正義や理屈で、ぶつかる所も自然。
 唯一思考が読み切れないのは強大な力とされる人工知能(もはや人間と同じ)だけど、これの過去話は…なんでそんな事になったのか、今との性格の違いが掴み切れなかった。
主人公との信頼関係?理屈じゃない単なる話の流れかもしれないけど。

 ラストは、今後の展望が曖昧なもの過ぎてディストピア感は否めないんだけど、まとまりが良く収まっていると感じました。区切るならここだし、冗長にならない。
 持ち歩き用に文庫サイズだからと手に取ったのだけど、暇つぶし以上の読み応えはあり、一気読みしてしまったのは嬉しい誤算でした。
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