元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
砂漠の歌姫

 如何にもなファンタジー臭がしたのでスルーしそうだったのですが、作者が村山さんだったのでやっぱり読んでみた。

 んー、端的に言うとギリギリ及第点位。
と言うのも、歌姫と言いつつ、実際は音楽院の生徒で歌姫未満だし、天才的な歌唱…と言うほどでもなく歌で活躍するよりもむしろ野性味あふれる弓での戦いの方が目立つから。ガンガン痛めつけられもするし、戦士イメージだなぁ…。
 期待していたような、例えば歌で多くの人を魅了するだとか、ファンタジーな獣が従うとか、歌に魔力が秘められているとか、声が原因で狙われるとか―おおよそファンタジー歌姫にありがちな事が一切ない。

 そもそも主人公は確かにこの少女だが、始終狙われる方のヒロインは別に居り、この主人公は一貫してヒーロー的役割を務めます。
ヒロインは同い年位の、如何にも儚げな銀の髪の少女で、記憶喪失、何かから逃げていると言う完璧なファンタジーヒロイン。
 後になってからため息をつくほどの展開ですが、何回攫われたら気が済むんだと言う絵に描いたようなキャラです。(ストーリー展開的にちょっと辟易した。)
 あとは大体の主要人物が女性が多かったのがバランス的に気になるかな、くらい。
 そして主人公をヒーロー役、少女をヒロイン役に据えると、さらにこの一歩先を行く悲劇のヒロイン枠があって、非の打ちどころのない悲劇っぷりで、主人公は入れ子細工的にどこまでもお話を持っていかれるなぁ…とちょっと『お話としての化粧っ気』が主人公になさすぎるのが読んでいて引っかかった。
 ただ、キャラの誰の主眼で見るかを別にすれば、ストーリー的にはそれだけ横糸でいろんなキャラの重要な設定が盛り込まれていて、ボリュームは満点。
何せ悲劇系のお話の方は、明かされた謎も顛末も見事に切なく悲しく、正に歌になる様な物語だったから。
 正しく大冒険と言えば銀の髪の少女の物語の方だし、始終出ずっぱりではある主人公には、自身メインで輝く設定や纏ろう物語は、ない。ただ他のキャラたちの運命に居合わせ、優しさと勇敢さを持って関わり、皆に必要とされたと言うこの本の中でのリアルタイムの物語のみ。
―まぁそれこそが本文なわけですが。

 これを『誰かの物語を歌う』的に解釈するならば見事過ぎると思う。
実際主人公は歌により古からの知恵や物語を『知っていた』と言う活躍の仕方をするから、物語の語り手としての位置なら、あえて『特別な運命のない』主人公もよいのかも知れません。

 続き物かと構えていましたが、一冊で綺麗に終わっていました。
けれども国々の年表や歴史を作り込んでいるように思えたので、いつでもシリーズや他の物語の舞台に繋げられそう。
(ところで昔のあのシリーズ、完結してないのかなぁ…と関係ない感想を抱いてしまいました。)
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