元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
夜の神話

 不思議な印象。
神様が美しい青年姿で出てきて、今時かと思いきや、作風は素朴だったり、それでいて主人公の醒めた感性なんかは現代っ子そのまんまだし、でも出て来るもの自体はどこか古臭い印象を漂わせていたり…。
このいろんなものを集めて混在させているような不思議な印象は何だろう?
 『今』の中には、最先端もあれば、古く残っているものも有る。いつもはそのどちらかにだけ焦点を絞って考えがちだけど、どっちもあって『当たり前』が本来なんだよね…。

 象徴するようにこの本のストーリーは、田舎に越してきてご機嫌斜めの勉強は良く出来るお子様が主人公なのだけど、彼はのっぴきならない事故を間近にする事となる。それは、原発事故―。
 一方で主人公は、虫や動物の死に対してあまりにもドライだったため、神様から何のつもりか『サトリ薬』と呼ばれるまずい団子を食べさせられるのだけど、以降、薬の効果で動物や草花の声が聞こえるように。
 人類の科学の最先端、強力な原子力の問題と、原始的な神や自然の力。
その両方がいきなり少年の目の前に提示されるわけだけど、なかなかハードな衝撃が多いです。

 まず、虫たちの声が聞こえる故に、クラスメイトが昆虫採集で取る虫たちの断末魔を聞く羽目になるし、原子力発電所に勤めるお兄さんから青い炎が噴き出している(被爆している)のを見る。
 メルトダウンしそうな原発や、人の命の助けを神に乞おうとするが、神(ツクヨミ様)は人の治世に基本的に興味はなく、扱えない青い炎(原子力の象徴らしい)を使い始めた人類が悪いと言う。
人は赤い炎はなんとか御してきたが、青い炎はかつても人類を滅ぼしたと―。
 ここら辺でちょっとだけムー帝国の件があって、これだけは蛇足かなぁ…と思うのですが、神にも思う所があると言うエピソードなのでしょうか。
 神様の視点は大きすぎて、本来は人間の善悪とはずれてもおかしくないですよね。これが別に冷たい神様と言うわけではないんです。むしろ…悩む所は人間臭いくらいかな。

 この時点で実は主人公の体は別の魂に奪われていたり、自身も大変な状態なのですが、サトリ薬のせいなのか、冒頭の彼からは考えられないほど、自己の欲に走らず、誰かを救いたいと言う一心だけで行動し始めます。
そのがんばりが届いたのか、なんとか事件は収束するのですが…。
 被爆したお兄さんは助からないとか、こんな大事件があったと言うのに、原発はまだ安全だと言われ続けているとか、空しい終わり方もします。
 希望は、少年の心持ちが変わったおかげで、この田舎にも友人が出来た事とか、父親が原発の仕事を辞めた事とかかな。

 和風なファンタジーでいて、扱う問題はどこまでも現実的。
ちょっと変わった気色に思えました。
 作者さんはこれ系のシリーズで有名のご様子。今はまだ手を出す予定はありませんが、モチーフとかは好きです。
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