元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
デザインの骨格

 期せずしてなかなか読み応えのある本に巡り合う。
これ、プロダクトデザイナーの人の本なんだけど、suicaの読み取り機とか、携帯とか、車とか、時計…とかなりの有名どころのお仕事してる人のものでした。
へぇ~…。
 何が面白いって、その作る過程、かな。
この本、その手順ではなく、思考回路を語ってくれてるの。
 人が使うものであるから、実験をして、どうすればスムーズに、狙い通りの動きをさせる事が出来るか―。狙い通りの動きって、製品がではなく、使っている方の人が、ですよ。
 例えば上記のsuicaの話だと、ほとんどの人が立ち止まる事なく、スムーズに流れてこそのデザインらしく、そんなのシステム、機械上の問題じゃないの?と思えばそうではないと。本体のデザイン、角度の一つで人の間誤付きが違い、人の流れの渋滞を巻き起こすかどうかが決まるんだそうで。
生かすも殺すもデザイン次第?!おぉ~…、こう言う話、好き!

 で、同じデザイナーの中でもアーティストたるデザイナーたちと、このプロダクトデザイナーはかなりあり方が違っている。
人を読み、そのために科学し、製品を最大効率、かつ美しく仕上げるか、そして経済活動である以上スピーディーに組む。
 自分だけの世界で完結し様がないんですね。それを使う人、それが組み込まれる環境を把握しきってこそ設計が出来るお仕事。
この人は科学する事がプロダクトデザインに通じているとの考えで(凄く納得した)、話のネタも、非常に手広い知識で彩られていました。

 途中、チューリングパターンの話が出てきたのも面白かったけど、寺田寅彦が科学と漫画の関係性に言及していた文章があるとかもさらっと書かれていて、横道読書の誘惑にも満ちていた…。(この文が読みたくて、早速探して出して読んじゃったわ。)
 その視点は、漫画と言うデフォルメの中で掬い出された対象物のエッセンスこそが、決して似つかない存在でありながら、何よりもその対象物を雄弁に語ると言う素敵な説明で、それがロボットデザインの話に通じたり―。
 またこれを意図して、著者が生徒に『河原の石を木彫りで表現しろ』と言う課題を出したら、実際にそっくりそのまま彫り上げたものは到底石に見えなくて、石らしい何かを捉えて彫った木彫りは石に見えると言う面白い話を紹介していました。ここら辺を全部読むと、ふいに不気味の谷の事が頭によぎったわ。

 こう言う、一見関係のないものが巧みに影響を及ぼす大局観ってのは、聞いていてワンダーに満ち溢れていて、堪らない。(こういう話を聞くと、例え下らないとされているものや無価値そうなものから、どんなヒントや真理を見つけるか、読み取れる人の質って本当にありそうだと感じるよ。)
 また見開き毎に著者がデザインした見事な製品や、デザイン図(写真にしか見えないのが数点ある)が載っていて、美しさにほぉっ、とする。
 あるいは他人の手に寄るデザインを読み取るのもお手の物のようで、アップル社の製品を解体してみたり、製造工程を割り出したり(出来上がった製品の切り口や形で逆に工程を割り出せる!凄すぎる。)、プロだなぁと唸るばかり。
 最終章には著者が書いた漫画まで載っていて(著者は漫画もお好き)、なんともボリューム満点の一冊。
それは嬉しいんだけどちょいと重いなぁと思いながら読み上げた本です。
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