元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
ラメルノエリキサ

 なんとなく若い女性が書いたっぽい感じの、青くて苦しくて、重いモヤモヤが詰まっていて、それでいて深くはない、上滑りがちな苦悩に溢れたお話。
これでいて貶してません。
だって、自分の昔の感性と凄く一致するもの。
 だから作者が実際に若手の女性で嬉しかった。

 まず、主人公設定が良い。
通り魔に刺された女子高生が、通り魔に復讐する話。いいな…この『コノウラミハラサデオクベキカ』感。
 復讐は自分がすっきりするためにあり、憎しみの連鎖とか、綺麗事なんて知るかと言う潔さ。いいですよ、いい。
通り魔を逆に追いかけるなんて、怖さよりも復讐心が先立つほどの熱いパトス。自分の行いに迷いがない、また、失う物の重さも計りきれていないこの感じ。
 そんな若さに、色んな鬱屈した物が絡んでくる。
完璧なママ、ママのお気に入りの姉、ふざけた浮気をした元カレ、下らない女友達―。
 この子は、他者を絶対に悪口入りで説明するんだけど、本当はそれを見て取れちゃう私スゲーとか、そう言う所も含めて周囲の人間の何かが羨ましかったりとか、10代のキレイとキタナイが実に過不足なく良いバランスで描かれてるのが心地よいんだよね。
それでいて、醒めてるだけじゃなく、危なくなったらやっぱり怖くなったりとかもしちゃう。
 特に同じく若い女子の姿としての姉があるんだけど、彼女の妹に対する禁句や、ラストの『死体埋めようぜ』行動なんか、サラッとしすぎてて、そこに作者自身の若い頃のバランス感覚が投影されてるようで、痛いんだ。もう、登場人物も、作者も、読んでる自分も、痛い。
こういう痛さが、青春小説でなく、血なまぐさいとも言えるお話の中でぶちまけられるのがちょっと新鮮でした。

 ストーリー自体は割とサクサク進んで、最初の『ラメルノエリキサ』と言う単語自体が謎についてが一番盛り上がる。
このタイトル、上手いよねぇ。『ラメルノエリキサって何?』ってんで手に取ったもの。
 作中で主人公が同じくこの言葉の謎を追う所から始めるのも、上手い導入だと思う。
でもまさか、自分も知っているあれだとは…思いつかないもんだねぇ。
 それが解ってからは正直展開が陳腐だったり、またミスリードも蛇足な部分が見えたりする等良し悪しで言ったら欠点の方が多そうな作品なんだけど…。
好きか嫌いかで言ったら、大手振って好きとかでなく、気になって最後まで距離を保って見ちゃう作品と言うべきか。
やはりこの主人公の感性が一番惹かれる原因かなぁ。
 ラスト、復讐を果たすか果たさないかの結末は、ああした主人公の行動に、何の疑問もなく腑に落ち、付いていけたし。そうだよなぁ、こうなるよなぁ、と。
 この子は、成長後が楽しみな感じで、この話だと続きようがないんだけど、続編やら将来やら、あれば読んでみたくなるわ。人的に(とんでもない子なのに)目を掛けたくなっちゃうキャラクター性が読み所。
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