元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
ぼくたちのリアル

 いかにも教育番組的なお子様ものタイトルなのですが…まさかの『リアル』とは子供の名前でした。
…キラキラネームとかいうやつですか?時代だなぁ…。
 二重の意味で時代を感じつつ、それはそれで現代風味の物はどんな児童小説なのかと興味津々に。
開いてみると、リアルは『璃在』でした。うわぁ!(上手いなと思いつつ、ニヤニヤしちゃう。)

 さてしかし、このリアル、主人公ではありません。
主人公は寧ろリアルの隣に住んでいる幼馴染の同級生。
 このリアルがさぁ、全く以って完璧人間なんだよね。
小学5年生なんだけど、スポーツが出来、頭も良く、性格もいいし顔も服のセンスもある。これで面白さも持ち合わせ、良く人を気遣い、行動力やリーダーシップもあって、周囲の人望を一心に集める人気者…。
 うわぁぁぁぁ…っ!!主人公の気持ちがわかるよ!こんなのと比べられちゃ鬱屈するものもあるわ。
 そう、傍から見れば『これ以上にない良い友達』『あの子と幼馴染なんて羨ましい』『(リアルが出来ているから)ケンカなんてあるわけない』みたいにクラスメイトや先生、それどころか互いの親にまでそう思われている。
 主人公は特別非社交的と言うわけでもないけど、まぁ地味な性格で、リアルに対してだって特に仲良くしたいとは思ってない。いや、嫌いじゃないし、大事な幼馴染だけど、何せ比べられるのが嫌。
 『あの子と同じクラスになったの?安心ね』『リアルにあだ名で呼ばれてる』『なんであんな冴えない子がリアルと一緒に居てるわけ…?』ほらほらほら、来ましたよ。
リアルが主人公に近づこうとするほど、主人公はいわれのない周囲の羨望と言う名のヘイトを集めてしまうのです。
 だから主人公は、リアルに近づいてほしくない。放っておいて欲しい。
とは言え、リアルの事を嫌いじゃないから、それも強く出れず…。
 そして同時に、そんな凄いリアルから親しくされる立場にも、確かな優越感はあり、そう言った自分の卑屈さにも嫌気がさしている。
 これは…なんと言う上手い包囲網。
まさに子供社会でのなるほどな問題をさりげなく出してきました。
 そしてそこに転校生がやってきて、主人公、リアル、転校生の3人を中心にお話は進みます。

 さて、この作品…結論から言って凄く読ませてくれました。
まぁ、最初は主人公だけに悩みがある状態かと思いきや、転校生は元よりリアルにまで、一人一人にこれは悩むだろうと言った十分すぎるくらいの重さの問題があった。それは丁寧かつ繊細に描写されていて、3人が互いの問題を共有するように作用し合う様が、最後まで、暖かなもので包まれたまましっかりと頁上に刻まれている。
 このくすぐったくなる様な児童文学特有の、安心感、安定感。
えー、この人、もしかしてこれがデビュー作?受賞作?…児童文学に向いてるよ、是非書き続けて!
―そう思わせる程分かり易くて、気持ちの良い作品でした。
 本当言うと途中の展開も含めて全部説明しちゃいたいくらい。
 リアルのあんな所とか、転校生のトリックスター的な扱いとか…全部ネタバレ直結なんだよなぁ。
それくらい濃厚で唸らせる箇所目白押しの一冊です。
 なんかね、『いじめだ、勇気を出せ、やっつけろ』的なお約束のお話とかで道徳を語るのとは一線を画する深みのあるお話ですよ。
いや、本当、よく目に留めて手に取った。
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