タイトルが面白い感じだったのですが、どうも人から幽霊屋敷と噂される家に一人で住んでいる女性が主人公で、彼女がそこに押しかける色んな幽霊マニアたちに、「…別にうちの家、何もないんだけど…」と困惑する話。
―と聞くととてもファニーな感じで面白そうなんですが、実際は女性に影がありすぎて、思考がまともなのに、実は一番まともでない、そんなホラーな話なのでした。
しれっと「生きてる人間は騒がしいわぁ、死んでる人間は静かなもんなのに」的なセリフを吐いて、家を往来する怪しい黒い影に親しみを感じていると言う…。
さてでは彼女のサイコホラーなのかと言うと、他の連作は、また別の話で構成されていて、こちらは隠す気もなくどれもこれも完全ホラー。
その全てはこの家で過去に起こったえげつない事件ばかりと言うわけで、このまとめ方が上手いよね。
地下室では子供が瓶詰に、台所では姉妹が殺し合い…とそれぞれの事件の真相を読みつつ、最後にもう一度この家の話に戻ってくると言う。
色んなホラーを見せつつ、一本の縄をなう様に最終的には全体を見せつける、凝った構成だと思います。
こう言う『繋げると一枚絵』みたいな作品は、一つの作品で何度も全体分の作品の世界観を打ち付けて来るので、そりゃずるいわ。畳みかけられると抜け出しようがない。
ホラーと言うジャンルの『どっぷり』には本当に効果抜群だと思います。
それにしても最後のあたりに出て来る大工さんの話はホラーの中でもちょっといい話に思えてしまった。
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