元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
一路 上

 軽妙な語り口調で始まった物語。
最初の数ページで引き込まれました。
 主人公の『一路』と言う名前、その数件のエピソードだけで、不思議と主人公のイメージが湧く。
浅田次郎って大御所過ぎて読んだ事がなかったんだけど、やっぱり筆力が違うのね…。
 お話自体もどうなるのこれ!?とすぐに夢中になり、早々に続きを手に入れる手配をしました。

 一路は、学業武術をみっちり教え込まれていたおかげで、士族としてのお役目の事はまだ父から習っていない20歳にも満たない若者。
それがいきなり父親が不始末で死去。
殿から参勤行軍のお役目頭を無事やり遂げたらお家取り潰しは無しにしてやるといきなりの大役を命じられ―。
 まぁ、一路の家は先祖代々そのお役目の家柄だったのですが、一路の名前が名前だし、諸芸全般エリートのはずなので、変に出来るだろうと思われちゃってるのですね。
まさか全くやり方も知らないと思われず、一路は「出来るわけない。失敗したら腹切り、お家取り潰しだなぁ」と言う状態で奔走する事になります。
 親戚やら周囲の士族たちは、此度の父の不始末(在ってはならぬ失火で亡くなった)のせいで、一路に何の手ほどきも協力もしません。
途方に暮れる一路の前に、焼け跡から見つかった一冊の古書が―。
 一路は学があったので、その本を読む事が出来たのですが、それは何と一路の遠い先祖が、参勤行軍の作法を書き記したものだったのです。
 しかしそれはどうやら今の物とは似て非なる作法で、一度はこんな昔の物はやはり役に立たぬかと諦めかけるのですが、ひょんな事から流れ者の易者に出遭い、「昔のやり方が本来正式なもののはず。知らぬならいっそこの本通りの古式ゆかしい作法にしては?」と目から鱗のアドバイス。
こうして一路はその本を基に、お役目の準備に入るのです―。

 最初の流れ物の易者、然り。この後一路には普通ではお役目に使われぬような人々との出会いがたくさん待ち受けています。
頭が足りぬ怪力の双子。
流しの髪結い屋。
世俗慣れしすぎた坊主。
そして顔も見た事がなかった許嫁の娘や果ては馬まで―?
 手探りで本来の作法を復活させようとする一路は、スタートこそ人に見放されたが、彼自身に集う人運はあったようです。

 道中ハラハラしながらも、途中で主人公視点から殿の視点に入ります。こちら側がまたおもしろそう。
この殿、正妻大好きで側室は嫌々置いていると言う、どうも威張った感じはしない不思議なお人柄。
 実は殿は傍目にはうつけ者扱いされているのだけど、彼の心内を見ているととてもそうとは思えない。
下々を大切にし、宝物は物でなく人だと言うし、配下を怒れば人死に、褒めれば慢心を生むと心得ていて、曖昧で差し障りのない言葉しか吐かないようにしている。
 その様子がうつけに見えるのだけれども、殿さまなんてものは私心を挟まぬ程良い殿だと殿自身が思っていて、自分を殺してお務めを果たしているのです。
 では切れ者かと言うと、そうとも言えず?ただただ純粋に正しくあろうとしている人という感じ。
戦物語を聞かされその気になったり、主人公の馬の誤魔化しを神の奇跡だと喜ぶ。
 そんな殿、実は御身を狙われていると言う事が段々解ってきます。
この参勤行軍には、お家騒動も絡んでくる?!

 ここまで、なんとも不思議な人の縁ととんでもない幸運で難所を次々とクリアしてきた主人公だけど、まだまだ旅は始まったばかり、一体この先、どんな苦難無理難題が待ち受けているのか―?
頁をめくる手が止まりません。
 下巻へ続く。
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