元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
図書室の魔法 下

 ふいに何の気なく、下巻に移る辺りで「もしかして双子の妹の存在自体主人公の妄想なんじゃ?」と思えました。
 主人公は始終その思い出を記すのですが、周囲の人間が妹の事を話さない。気遣い故と言う事もなさそうな感じ。
これについては最後まではっきりと言及されないのですが、同じく母親が魔女であり自分を―と言うのも何かしらの折りの悪さ、その比喩なのかも。

 これに気づきゾッとしました。
主人公は空想好きと言うより、単に心を閉ざし二重にも三重にもその日記に鍵を掛けているわけか。
 物理的な鍵付き日記で、文字は暗号で書かれ、ありもしない魔法や妖精で自分の状況を曖昧に語り、自分の原点をも偽る。自分しか読まないだろう日記の100%すら信用せずに―。ここまで鬱積と溜っている心の澱って…。
 表面上では新しく出会う親族や、読書仲間と、好ましい関係を築き始めているのに、闇は闇で持ち続ける。
この子が恐ろしい存在と言うわけではありません。これくらいの行動なら理解出来る。ただ、そうまでして逃げたかった比喩無しの本当の事情って、何だったんだろうと。
これ、心理ホラー?
 ファンタジーを匂わせ、SFを語り、サイコ的な何かを彷彿とさせ―シンプルに言えば少女の心の中を余すところ無く書いているだけなのに、何と言う踏み込んだ作品なのか。面白いかどうかはさておき、人の心と言うものがどれだけ『文学』になりえるのか、まざまざと見せつけられるような作品です。(今なら苦手な古今東西の文学も読めそうな気がする。)
 彼女の心の決着を見たいがために、ページをめくる手が止まりません。

 下巻では彼女にBFが出来ました。
ただ舞い上がってちゃいちゃするのとはやはり違うのですが、相手が軽い感じの年上少年だったので、上手くいくのかは心配でした。
何せ主人公、妖精が見えるとか言っちゃってるし。(いや、相手の男が魔法に興味あると持ちかけてくるのですが。)
 ところが驚いた事に彼にも妖精が『見え』ました。
―え?この本、ファンタジー??
 ちょっと混乱しましたが、これは彼が主人公に合わせているのか、いや、そうでもなさそうな気配だし…。

 この本はそこら辺のバランスが絶妙と言うか、本当に妖精は居るのか居ないのか、魔法はあるのかないのか、よく分からないんです。
境界の霧の中と言った感じでしょうか。
 ただし、それがどちらであっても作品自体の本質に変わる所はないのです。
どちらでも意味は通り、話は問題なく進む。
 その存在の是か非かは、ただ読者に委ねられ、そこで読者は鏡を見せられたかのように己の心と向き合わされる。
なんか映画の『パンズラビリンス』を思い出しました。
 ラストはすっきりとした結末です。
自分ではなかなか読まなかった手合いの作品でしたが、悪くなかった。
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