元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
図書室の魔法 上

 家庭環境に問題のある少女が、寄宿舎の生活にも馴染めず本と空想に救いを求める日々―。
あらすじだけではどうしようか悩む所のお話でしたが、図書室物ならノれるだろうとご拝読。
 思った以上に過酷な環境からスタートです。
まず主人公は15歳少女ですが、片足が悪い。
それも最近こうなったばかり。
プロローグで一緒に居た双子の妹はまさかの展開で亡くなっていた。
 母親は神経的に問題があって、仕方なく離婚していた父親側に引き取られるが、寄宿舎へ入れられてしまうと言う流れ。
…なかなかハードモードですね。
 主人公はその女学校で簡単にトップの成績を取れるくらいの頭の良さですが、足のせいで体育等受けられない授業中は図書館に籠り本を読み、とにかく片時も本を離さないほどの読書好き。
足が悪かろうが本が重かろうが毎日読む本が2冊そこらじゃ心許ないと、学校の図書室にも見切りをつけて町の図書館へも出向きます。
新しい街に来たら一番に図書館の利用者登録をする。
―共感しまくりですね。
 この手の本好きの作品って、読者の大半は本好きだから本を読んでいるわけで、共感率高すぎだろうと思う。
 そして空想にかまけているから友達付き合いが微妙。
あるあるネタか…。
 まぁもとより主人公の頭の出来の違いとか、家庭環境の分、あまり学校の友達とは本心から付き合えない様です。肉体的なハンディもありますし、何よりも主人公の空想が問題ありで―。

 彼女には、妖精が見えるんです。
この話は日記の体裁を取り、妖精との会話や、その時々で読んだ本の感想(いや、すでにいっぱしの評論)で占められています。
 最初はこの子が普通の『痛い子』なのかと思っていたのですが、妖精の関わり方が妙に現実的で、彼女の信じ方が本気なのかゴッコなのか分からない感じです。
妖精は現実の物に触れられないとか、綺麗綺麗しておらずほとんど醜い姿で、会話も難しいとか。
 その幼い時でさえ、妖精たちとの冒険はおおよそおとぎ話や小説になりえないようなショボさです。
 どうせ想像するなら英雄譚のひとつやふたつ、自意識過剰な厨二病並に想像しないのか?
まぁ想像の中ですら現実に即したルールで、と考える場合もありますが。
 主人公は上辺を取り繕うのも上手いので、魔法や妖精が本当にあるのだという事は他人には話しません。
何より彼女自身、魔法の取り扱いの難しさから、魔法を使う事自体今後止めなければと考えているくらいで、その病的なまでの心の閉ざし方は根深いものだと察せられます。
 仮にこれを彼女の作り出した妄想だとして、その妄想の中でさえ、秘密性を重視して慎重な想像をしていると考えるともう胸一杯ですね。
思春期独特の羞恥心や現実との折り合いとか、苦しさが詰まっています。
 何よりも彼女の母親が魔女で、自分を害しようとしていると言う部分が。

 ファンタジーと言うよりはむしろ彼女の現実部分の息苦しい世界とその心象風景が主体の物語に読めます。
上巻では、図書館で知り合う『同じ本好きな人々』との繋がりや、親族たちとの関わり合い方、それらに触れていく部分が書かれています。
 あと作者が読み込んで来たであろう数々のSF本について、主人公や登場人物たちが感想を言い合うのですが、物凄くたくさんの作品が紹介されています。
知ってる作家や本が出てくると嬉しいのですが、ティプトリーが男性だと発言している件はニヤリとさせられました。ネタが細かい。
 15歳にしては本の評し方が深すぎて、ここら辺作者の代弁かと思えるのがちょっとあれですが、くさしている物もあって、凄いなぁと思う。
 本に関する辺りは、主人公の物の考え方とは別にガイドブックのようにも読めて二度美味しい感じです。
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