元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
太陽黒点

 山田風太郎ってどうでしたっけ。どうって、世間一般的なイメージや置き所。
私の中では忍者なんだけど…。

 意外とジャンルは手広いみたいで、この本は戦後に、戦争をモロに被った世代と被らなかった世代の辺りで相互にモラトリアムをぶつけつつ、資本主義や共産主義、どうのこうの語りながら、主人公はくたばれ金持ち!―の野心を抱き身持ちを崩していくと言う何というかけったくその悪い話。(どういうあらすじだ。)
 と言うのも、大言壮語で偉そうな事を言いながら、主人公は金持ちのお嬢さんに近づいて結婚して財産や地位を手中にして、持って生まれた身分の差に復讐してやるのだとか、的外れかつ歪みまくった自意識を持ってるんだもん。
勿論今付き合っている一般女子は捨てる。
 また始終この男の腹立たしい所は、別れ話にも「じゃあ君が僕を幸せに出来るのか、金も身分もないのに」とか、女に借金してる癖、どの口が言うのか飽きれる薄っぺらいその言動。
そもそもお嬢さんへも愛情と言うより恵まれた者への憎しみに近いものを抱いており、「俺の事を下に見ているだろうが、食ってやるのはこっちの方だ、利用してやる!」と息巻いて、それを成せば一本とってやったと言う証になると考えているんだね。
 不思議な事に読み進めているとね、この男の浅はかさと言うか人間性の低さにね…段々腹が立つとかなくなっていくんです。ここまでプライドをはき違えた自意識の塊、器の小さい野心。
考え方が俗っぽいだけならまだしも、やり方も的外れだわ、何一つ洗練されている所がない、見るべきところのなさが凄いんだわ。(あ、顔だけ良いらしいですよ、描写として。)
主義主張の大きさの割に、言い訳か流されるかしかしてないし…。
このキャラ造形、むしろ凄いなと思った。
腹が立つキャラは多かれど、一気に突き抜けて呆れ諦めるレベルのキャラってそうはいないよ。
 またタイトルが巧かった。
最初はなんの意味があるのかと思いきや、これ、太陽族から来てる感じ。
太陽族のもたらす黒点―なるほどなぁ。
何か普通に不吉な太陽黒点かと思いきや、文化風俗寄りの言葉なのね。
古き昭和の独特の雰囲気を出しています。
 途中からはその彼女の視点に切り替わるのだけど、ここら辺からどうも怪しい人物と言うのが予想出来初めて、ラストは意外と言うよりいや、これはちょっと成功率的にどうよと言うフィクションだなぁと言う話になる。
ただし、ラストまでの疾走感はなかなか無く、一連の真相を衝撃的に迎える流れが素晴らしい。
他の気になってる作品も読もうと思えました。
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