元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
営繕かるかや怪異譚

 小野不由美。
ゴーストハント』『屍鬼』くらいしかまだ読んでないので、エンタメ的フィクション、ストーリーありきでなさそうなイメージの本気系の怪談ってどうなんだろう?
 まず文章の雰囲気ですが、他の女流ホラー作家よりは、この人の作品の雰囲気ってフラットな感じなんですよね。
そう湿った感じがせず、淡々としているの。
ホラーよりも推理物とかが似合いそうな一歩引いた感じ。
 故にホラーは本来、そう向いてない空気感を感じてしまうのですが、それでもこの人がホラー作家だと言うカテゴリを感じさせるのは、シチュエーションの妙、かなぁ。
 贅沢にも、一人の営繕屋と言う共通点はありながら、基本的に毎回主人公は怪異に出遭う人々の方で、そんな不気味な話の短編連作と言う、多くのネタが詰まっている。
そして怪異の正体は何なのかわからない事が多い。
わからないけれども、『Why』は人側の気遣いで語られる。
すべてがわからない投げっぱなしリアル系怪談よりもフィクションに近く、過剰な演出がなく平坦な作者のカラーに寄り、作り物感からも遠い、そんな作品。
良くも悪くも中道に位置するような怪異本と言うイメージです。

『奥庭より』
 一番湿った感じの強い作品。
ただ解決方法に至る部分が感傷に支配されていて、ホラーと言うより『幽』と言う字から受ける感覚に近い作品。
『屋根裏に』
 呪い系が来たかと思いきや、妖怪話に近く終わる話。
妖怪となると一気にまた違うムードになるのは何故か。
『雨の鈴』
 問答無用、因果応報に関わらない災難系怪異。
この手の物にカタルシスはないので、どう避けるかが確かに大事。納得と言う執着がないのが端から解るので、パズル、推理的思考で『どう逃げるか』に集中しちゃうお話。
怪異がかすみがち。
『異形のひと』
 生きてる人間だったらそれはそれで怖すぎる話。
これもまぁ自分に非がないと言う点ではとんだ災難な話なんだけど…感情方面に持ち込んだ作品。そのくせ怪異との鬼ごっこの様ないつ出るか、いつ出るかと言うパニック映画の様なコントラストが面白いと思った一本です。
『潮満ちの井戸』
 汽水。そう聞けば何という事のないすべての現象だけれども…。
井戸と言うものの取り扱いの怖さは昔からよく知られていて、それが故に蒙昧だった時代にオカルト的な解釈はさもありなんなのですが、そうと解っていても形作られてしまった畏怖と言うものはなかなか拭い去れません。
そういう緊張感のある作品。
『檻の外』
 キーワードは子供。
すべて子供が親に酷い扱いと受けていると言う、形は違えど何だかやり切れない気持ちになる一品。
男の子はもちろんの事、主人公だってまぁ自業自得の部分はあれども、突き放され方がなかなか。
またこれをただそうでしたとは言わず、子供の方は大なり小なり、肉体的精神的虐待をそうだと測れない小さな世界の住人であると言う悲しさや虚しさに絡ませているのが一歩練られていて良かった。

 総じて欠点のない一冊。
実力のある人が、無難に危なげなく出してきたと言う感じ。まぁ、この無難ってのがそう思わせるには実際相当高いレベルで商業作家をこなせないとダメなわけですが。
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