元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
月の部屋で会いましょう

 SF短編集。
印象深かったものだけ書き留める。

 『僕らが天王星に着くころ』
いきなりぐっと来た。
銀色の欠片がどんどんと皮膚を覆う病気。それが人類に蔓延。銀色はやがて宇宙服になり、完成したら人は宇宙に引っ張られ、もはや地球から去るしかない。
そんな中、恋人が病気に。引き留めようとしてもどうにもならず彼女は行ってしまい、彼は追うように―。
SFにしてほんのり、そして空恐ろしくなる宇宙の孤独。ファンタジーのように読めた一篇。
 『床屋のテーマ』
小さな世界を覗く妄想冒険みたいな感じかな。
そういう漫画は多いけど、文章でってのがなかなか素晴らしい想像力と文章力。
ただ、床屋の客の頭の中にジャングル―ってあんまり気持ちの良いビジュアルではない。
そしてラストがわからん。
 『母さんの小さな友だち』
博士である母を乗っ取った体の中の何百億もの生命体たち。彼らは母の体をガイアと呼び、自分たちが住みやすいように母の精神までのっとり―。
息子と娘が脅しながら母を解放しろと迫るのだが、生命体らは母親はそんなこと望んでいない、体から出ていかないとちっとも言う事を聞かない。
その関係は地球を食い荒らしコントロールする人類そのもの。最初はどっちが正しいのかわからなかったけど、母親が精神を取り戻した時、「よくやった!」と子供たちを褒めたので、乗っ取られていたんだという事でゾッとする。
でもなかなかファンキーな博士のようで、生命たちたちに「どっちがこの体の主か思い知らせてやる」とバンジージャンプをかますあたり素敵な人だ。
 『彗星なし』
地球に彗星がぶつかる。
見えなければそれはそこには存在しない―そんな哲学を科学として、全人類、空を見るなと言うカウントダウンの日。父親はバカバカしいと言う妻と娘を説き伏せて、紙袋を被るように強制。
ラスト、自分たちは見なかったから平行世界に移れた!助かったんだと快哉を叫ぶのだが、どうも父親一人だけが平行世界に行ったんじゃないのと言う匂わせで終わる。怖い。妻と子は父親の言う事を聞かず、途中で紙袋取ったんだろうなぁ…。
一言ででこの状況をにおわせるラスト一行が上手い。
 『危険の存在』
彼女は女神ですか、魔女ですか。
彼女に惚れる男の目から見た日常の不思議。
何も不思議でないのだけど、見る物から見たら『ワンダー』である。
なんだかね、この人の作品はアタゴオルみたいな感じなのね。絵で頭の中に広がる。
空想の展開とか、ラストの切り方とか、ダブるわ。
 『シーズン最終回』
狂人に捕まったサスペンスかと思いきや、どうも主人公がぶっ壊れているご様子。
このタイトルからすると、主人公、助からないんだろうな…。
 『セーター』
あらすじにもあって惹かれた一篇。
彼女の編んでくれたセーターから頭が出せず、セーターの中で懐中電灯で出口を探したり、いろんな世界がそこに現れます。
外側で彼女は?
これもSFかつ幻想的な、作品です。理屈とかオチの問題じゃない。谷山浩子っぽく感じた。
 『最高のプレゼント』
こう言うプレゼントの価値が分かる子供が凄いわ。ただし、プレゼントと言うものが彼にとって何だったかを定義する必要はある。
 『魚が伝えるメッセージ』
怖いよ、怖い。電話の相手も怖いけど、魚も怖いし、主人公も怖い。脅し、変身、妄想、どれがリアルなのかで針の振れ方は違うけど、怖い。
 『俺たちは自転車を殺す』
物凄く分かりやすいSFだけど、やっぱりホラー。
じ、自転車と人間がサドルと尻で繋がるだと?!
そして人間たちに襲われ、食われる自転車人間。
またその自転車に跨ると新たに自転車人間になるんだけどね…。
主人公の恋人が自転車に跨っちゃったのは、何のメタファーなんだろう。そのままだとしても十分野生な話ではある。
 『休暇旅行』
金魚鉢を抱えなければそこに居られない安息の観光地。もうそれだけで休んでいられないわけだが、どうしてこのカップルはここへ来た。
しかも来てすぐに帰ろうと思うのだが、意志の伝達が上手くいかず、最悪なラストへと…。
あらすじ見た時は金魚鉢抱えて休暇旅行とか、のんびり不思議話のイメージだったんだけどなぁ。
 『月の部屋で会いましょう』
表題。ううん、しかしタイトルは良いんだけど、なんというか理由のない不可思議が面白かったり、印象的だったり効果的に使われていればいいんだけど、この話についてはワンアイディアだけと言うイメージ。
ちょっぴり切なく心穏やかに読んでいられるのだけど、平坦だったかな。
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