元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
七人の魔法使い

 この素敵なタイトルに惹かれた。黒澤か。
まぁ実際は街を支配する方が魔法使いたちなんですが、この魔法使いが兄弟と来てる。素敵!
 挿絵の一枚に惹かれたのもあるんですけど、でっかい大男に手をつながれてる幼女や、駆け回る少年―と想像をたくましくしていたのですが、ちっ、この挿絵の人物たちは魔法使いじゃなく、魔法使いに対峙する側―つまり主人公側でした。
薄々気づいてはいたのですが、子供取り混ぜた魔法使い兄弟が何やらやらかす物語かと思って期待していたのに~。

 さて、本当の話はと言うと、街を支配する魔法使いに、主人公の父親は『文字』を献上していた。
3か月に一回、2000文字ぴったりの誰にもした事のない新しいお話。
 ところがこの献上品がある日なんの手違いか魔法使いに届かなくて、父親のところに殺し屋の様な『ゴロツキ』が現れる。
ああ、ちなみに現代設定なので、魔法使いなんてそれだけで信じられない様な事なのです。
父親が何故そんな事をしていたのかも謎、その文字が何に使われているかも謎ですが、更に謎なのは、意外と父親、「そんなの知るか、もう書かない!」と強気な事。
 父親的には自分の物書きが上手くいくようにスランプを抜け出すお遊びと思いやっていたようなのですね。
いつの間にやら魔の物と契約でも結んじゃっていたのでしょうか?謎のプロローグ。

 しかし展開がまるで予想のつかない物語でして、魔法使いの兄弟たちは皆揃って相手を出し抜こうとしている仲の悪さ。おまけに『いったい誰が文字を集めていたのか』がわからない。…え?
 父親はいつも特定の人物に文字を渡し、最後に誰の手に渡っているのか知らないのでした。
魔法使いたちはそれを突き止めるべく、あるいは文字を渡さず自分の物にしてしまうため、てんでばらばらに主人公ら家族に脅迫をし始めます。
 街を支配する魔法使いたちには、それぞれ担当があるようで、電気を支配する、警察を支配する、音楽を支配する…とそれぞれの得意分野で嫌がらせをしてきます。下水を支配しているものまでいるのですよ。
なんというか悪い事をしたわけでもないのに一方的に利用されて権力争いに巻き込まれて、諸悪の根源が分からないとか、酷過ぎる。
 そして主人公側に父親(大学教授)の教え子の女学生が居候しているんですが、この子が最初は主人公の姉ポジションでしっかり者かと思いきや、魔法使いの一人に特たるエピソードもなく惚れてしまい、最悪の足手まといになる。外見かよ、雰囲気で惚れたのかよ、寝返る程の価値かよ。
これは最悪であった。(さらにゴロツキがこの娘に惚れる展開も謎。)
 逆に最初からうるさいうるさい妹(別にしっかり者とか賢いわけでなく、台風みたいなわがまま娘)が、魔法使いの魔法にかからないように信じられないくらい賢く立ち回ったり。
何もかも読めない展開です。
 なんやかやと少しずつ兄弟魔法使いたちと対峙していくのだけど、どいつも知らぬ存ぜぬ、脅迫ばかり。
過去や記録を担当する魔法使いに遭ってから初めて何かした事態が動いた感じかな?
 ここまででひっかかったのは、女学生の惚れた魔法使いが向うも女学生が好きみたい。(怪しい。何百歳か知らないけど、今更いきなり恋愛?)
 ゴロツキの言い回し。(「魔法使いの○○は何でも取っちゃう」。君、その魔法使いの手下じゃないの?この言い回し、おかしくない?搾取されているというより、対等なのに取られてるみたいな言い方だった。)
 そして最後の数人へと対峙していくのですが、ゴロツキ関係のはなかなか味があった。

 そしてラスト、末っ子の魔法使いは―。
おおお、これはすごく凝った種明かし!
 繰り返された13年間。
主人公の宇宙船好き。
父親が黙っていた文字の報酬。(言えよ。)
 過去と未来をうまく使ったタイムリープもの。
さてじゃあそこからどう収拾付けるかなんだけど―え、兄弟の内上の3人だけが悪いの?
え?
なんかそういう事らしく、下ら辺が結託して上を罠にはめる事にした。
何故かトーキルはあんな事しておいて仲間側に立っちゃったよ。
(でも不思議な事に妹はゴロツキとトーキルとを気に入っているとか。ゴロツキも妹の事気に入っちゃったみたいだしな。)
 そう、しかし妹は同時に追放されたシャインの事も気に入ってたようなので、主人公から妹が将来シャインみたいにならないように見張らなきゃとか言われてる。
何でも将来ゴロツキやトーキルに誘われて悪事に誘われるかもしれないという危惧があるらしい。
―待て、いいのか、下の魔法使い兄弟たちとこのまま付き合っちゃって。
 正直最後の善悪が良く分からないまま終わりました。
 あ、それからすっきりはしたんだけど、こんなやり口が主人公側に許されるのか、フィフィが見殺しと言うか見放されました。ええ…すげぇな、この展開。
 児童書とは思えない―と、途中で気づいたんだが、この人、『ハウルの動く城』の人だった。
ああ、あるわぁ、ハウルの人ならこの一度で呑み込めない展開や理不尽な恋愛模様と言うか。
 他にも調べてみるとこの作者さんは『バビロンまでは何マイル?』とかも書いてる上、トールキンに師事していたとか、経歴も半端なかった。
 謎や途中のハラハラ感、展開の読めなさや設定は満点。
収拾の付け方だけちょっと感覚が違う感じか。
総じて楽しく読めました。ハウルよりはぐっと子供向けです。
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