元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
古書泥棒という職業の男たち 20世紀最大の稀覯本盗難事件

 読書家にとって最も憎むべき犯罪が本泥棒―との事です。
個人的には『ネタバラシ』『焚書』の方がもっとアレだわ。次点で『落書き』『ページ破り』とか。
 最初は言い過ぎだと思ったのですが、でも中身を読んでいて、あ、やっぱり本泥棒許すまじ側の人間だわ、自分も、と思ったのは、とある裁判のエピソード。
 裁判官が貧しい人の味方になって『図書館の本を盗んだ青年』を許して被害届を取り下げてやれ、と図書館側に言うのですが、その理屈が『本が高くて買えない。読まなきゃ授業に付いていけない』なんですが、もう図書館側の反論聞く前にツッコミ入れまくりですよ。
『いや、読み終わったら返せば良いだけの話だろ』と。
 図書館側は華麗に『青年の学問の権利を主張するなら、その本を盗られて利用出来なかった多くの学生の学問の権利を奪ったわけで、重罪』と返しました。拍手。
 しかしその裁判官は罪の中身は関係なく『弱い者の味方』する事しか考えておらず、青年を刑には処しませんでした。それどころか図書館側に『か弱い学生をいじめるなんて』だの暴言吐きまくり。
こんなの逆差別だよな…。こんな裁判、公平でもなければ、正義もない。
 実際実はその青年、古書泥棒で、転売目的で何度も本を盗んでいたのです。
あー…ムカつくわぁ…。

 まぁ手段を選ばないタイプのコレクターが買うから売ろうとする人間も居て、と難しい話なんですが、その当時、古書泥棒は山のようにいて、図書館は一番に狙われていたようです。
 しかも本泥棒は泥棒の中でもまともな部類の泥棒扱いらしく、ほぼ正職業の内に数えられていたとか。
―はぁぁぁ????泥棒が仕事として認められているってどんな社会だよ。(勿論法律的にはアウト。)
 いや、最初にこのタイトルを見た時は、むしろ犯罪者側の話かな、と思っていたんです。
実際は記録の掘り起こしによる第三者目線での話ですが、それでも本泥棒に対抗する側の熱い気持ちがよく伝わってきて、もう本泥棒に腹が立つ腹が立つ。
『どういうものか知りたい』と言う読書から『こいつら腹立つ』読書へ早々に変わりましたね。
 主に書かれているのは本泥棒、図書館側、それに本を売り買いする古書店の主やディーラー、盗んだ本を作り直して持ち主の形跡を消す装丁師…そしてコレクターの話、と。
三者三様の理屈とやり口で本泥棒の時代を征きます。

 小説じゃないので、誰が勝ったとか負けたとかオチはないのですが、稀覯本をテーマに、まるでラプソディの様な騒がしい歴史を眺める事が出来た一冊。