元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
孤独なバッタが群れるとき サバクトビバッタの相変異と大発生 フィールドの生物学 9

 哲学的なタイトルと随分専門的な話だなぁとタイトルで。
そしたらとんでもない面白本だった。(いや、ちゃんとした学術的な話ですけど。)
とにかく、この研究者本人がものすごく面白い。
 幼い頃、緑の服を着ていたためバッタの大群に群がられ服を食べられたと言う話を聞いて、自分も是非バッタに食べられたいと思ったと言う―。ぇ?
 それどころか、バッタの大量発生に恐れをなす所を、感想が『なんて羨ましい』だし、とにかくバッタ好き。
 よく海外でイナゴの大群が空を覆い尽くして農作物を食べ荒らして後に残るは荒れ野原…というやつ、あるじゃないですか。あれを蝗害と言うんだけど、あれを恐れずして、何なんだろうね、この人は。(そういうホラーがあったよな。)
 しかしあれ、実はバッタらしいよ。
そもそも蝗の漢字を間違ってあてがわれたせいらしいけど、日本じゃイナゴはああいう事にはならないらしい。風評被害だったのか…。
 それを証拠に英語じゃ群れる系のバッタをlocustと言うんだけど、これがまた語源的に『焼け野原』の意味だそうで。
 ところでこの大群、移動して行く途中で500kmも列が続く事があるんだって…。怖すぎる。この単位が間違いでないと言われたら、そりゃ天も曇る程の影だよね。飛行機も飛べなくなるらしい。
とりあえずここら辺を読んだだけでも、イナゴからバッタのイメージが真逆に。

 それにしてもこの研究、小さい頃からの虫好きの延長と言うのだから凄い。
この本を読んでいくと、バッタの驚くべき生態がよく解ります。
 まずバッタとイナゴの違い。種類じゃないかと思いきや、そもそも似たような虫の中、色が変わる変異をするかしないかでバッタとイナゴは違うんだって。(だから世間的にバッタと言われるものの中に厳密に言うとイナゴが混じってる。逆もある。)
因みにイナゴが色が変わらない。
 この色が変わると言うのも初めて聞いたんだけど、たまに居る黒いバッタとかね。
あれ、結構最近まで違う種類のバッタと思われていたらしい。
 所が、ある日色の違うバッタも同じ種類のバッタで、条件の元色が変わるだけだと突き止めた学者が居た。
それを研究していく中で、孤独相と群生相と言う成長中の環境の違いで色が変わると言う事も解り、また面白い事に、群生相になったバッタが群れてあの大群になるらしい…。(移動相と書いているサイトとかもあったんだけど、孤独に対応するなら群生だよなぁ。しっくりくるわ。)
 あ、タイトルの孤独ってこれかぁ!と思わず膝を打つ。上手い、上手いなぁ、このタイトル。
 因みに孤独相と言うのは単独で群れずに成長した場合。大人しめ。群生相は他のバッタと一緒くたに育つと、色も黒くなり、活動的になり蝗害を引き起こす。
はぁ~、凄い発見だ。

 それだけでも面白いのですが、その後卵の秘密や様々な仕組みを好奇心で掘り起こし、論文バトルやフィールドワークも燃えるし、変わったミドルネームをもらった話もてんこ盛り。
かなり長文になるのでここで書き切れないほど。
 興味が無くとも読んでみると面白い、そんな一冊です。