元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
お金が貯まるのは、どっち!?

 クレジットカードは何枚持ち?銀行はメガバンク?地方?…と色々な二択を、どちらがお金が貯まる『正解』なのかで説明してくれる一冊。
単純明快でいいわぁ。
 二択なのでどちらがダメかは割と簡単に解るのですが、細かい理由を知るのは役に立つし、『どちらもダメ』と言う問題も面白かった。

 勿論個人の状況によっては全く参考にならない項目もあります。(中でもカードの限度額の話、前提条件が不明でちょっとよく解らなかった。その後ネットで調べても一律に言い切った回答はなかったので混乱。)
 なお著者が元々メガバンク出身で、その後事業をしている方なので、『クレジットヒストリー』で信頼を作る方向に若干頁を割いています。
これ、借りない人には無意味かもなぁ…。
 ただし、家や車のローンも貸付だと言う意味では大なり小なり。将来的にいきなりお金を借りなくてはならなくなった時に、まともな所はどこも貸してくれないとか、確かに怖いしね。
貸し付けをする側、される側、両方の経験者の視点はなかなか面白かったです。

 それからキャッシング。
とにかくキャッシングはするなって話も頷ける。(リボは勿論言語道断。)
一回でも借りるとヒストリーにマイナス評価が付くわけで…。
 最近のは簡単な手順で借りれちゃうから、自分の信用能力を下げたなんて思わないんだろうね。これはまぁ、今後念頭に置いておきたい視点かも。
 社会って、取引って、金と言う目に見えるもの以外にも影響されていて、背後も見なきゃいけないなと、自分の視野を見つめ直す機会になったよ。(まぁ性格的にローン含み借金は怖い派なんで手軽に利用なんて思いもつかないが。)
 逆にヒストリーに信頼を付ける方法とかも載ってます。
その他、銀行が薦めて来る金融商品の実際の所など。

 (元)銀行員ってこう言う所に目が行くんだなぁ…。マネー本と言うより、ちょっと職業本的に読めて面白かったです。
聖おにいさん13

 大分遅れて。
相変わらずネタが尽きないのが凄いやね。
安定の一冊で書く事がないくらい。
特にイエスの暴走が多い巻であった。
文藝モンスター

 薄いのでサクサク読めるかな。
 あらすじがまず、良いね。
小説家たちが集まった宿屋で殺人事件勃発。
それを解く小説家たち―と。
 これだけでかくも煌びやかな名探偵っぷりを感じるのだけど、実際は推理小説家だけでなく、ホラー作家や恋愛もの、SF小説家とバラバラな作家陣なので、推理合戦にはなりません。
得意所のバラエティさは良いんだけど、実際に推理をするのはホラー作家…みたいだし。

 一応主人公は新人作家の女性みたいなんだけど、読んでる間中、この子の言動が初手からいちいち怪しくて、語り主が犯人か?と訝しんでしまう事多々。(とは言えアリバイ的に犯人には思えないし…。)
最終的に犯人はちゃんと別にいるんですが、むしろこの新人作家の正体の方がストーリーとしては面白く感じたかな。

 全部解いちゃうホラー作家の、別に犯人を見つけたいんじゃなくて訳が分からない事は怖いから、納得したいだけと言う消極性もキャラ的に良かった。
(このホラー作家、怖がりのあまり知ってしまえば怖くないと言う理論で死体もガンガン調べるし、犯人も突き止める。知らないから怖いと言う論理は、アリだわ。)
 キャラが楽しい感じなので、こういうシリーズがあったら面白いだろうな。
中間管理録トネガワ1

 カイジ自体は読んでないけど有名過ぎるのでぼんやりと設定は分かる。
そんな中でいきなり帝愛側のスピンオフを読むと言う。
だってギャグしかなさそうだったんだもん。
 怖い会長に挟まれて、黒服たちを統率しなければならないトネガワの苦悩のお話。
 しかしトネガワが色々と人望なさすぎて共感が出来んなぁ…。それがギャグだと言えばそうなんだけど。所々読んでみたい話はあったものの、何巻に収録されているかわからず、一巻のみ。続きは…いいか。古本屋とかであったら読もうかな。
イギリスの学校生活 娘のハイスクール体験

 発行年からすると古い話なので決して今のイギリスではないのだけど、軽く読み物として。
 父親の海外赴任に家族全員で移住、学生だった娘のてんやわんやのお話、と言う所です。
まぁ父親の方が語っているので、手続きや日本との学校の兼ね合い、卒業資格とか色々帳尻合わせる苦労話が大変そうでした。
入学月も違うし、学年をずらして対応しなきゃとか、どうしてもね。
 英語力の事は始終付きまとうのですが、教育の中身も相当違うようで、みんなで同じ事を学ぶと言うよりは自分のレベルに合った教室へ各自散っていくような授業スタイルの様です。
だから一科目にレベル別の先生が大勢いる、と。
 理にはかなってるけど、贅沢なシステムだなぁ…。
 あとそもそも統一学習容量が無いので、学校によってやらせる内容がすべて違う。
著者は絶賛していましたが、いろいろ大変じゃないのかな、これ。
 画一的な試験で子供の能力は測れない、とか言いますが、同じテストで公平かつ出来を数字で明確にする事、これはこれで攻められる謂れはない気がする。そりゃテストの勉強が身に付いてるかは個々の問題だけど。
 イギリスはここら辺、歴史だと何年に何があった、でなくどのような流れでこういう事が起こった、と言う因果を理解し、それに対して自分の意見を持つ事が重要視されている。それは詰め込み型の学習よりもはるかに意味がありそうと言うのは解るけどね。

 しかし驚いたのは国で必須とされているのは『宗教教育』のみで他は何も必須でないと言う事。数学も社会も理科もやろうがやるまいが、学校の自由。
これ、学校教育を受けたすべての人間に共通の知識が『宗教』以外になく、これは知ってて当然、出来て当然と言う前提が全くないに等しいよね?
 やはりある意味不便…。義務教育レベルの土台が合って交わされるお約束が通じないわけだし、日本的に言うと集団生活でスムーズな流れが期待出来ないなぁ。
代わりに得意な事は凄く得意と言う能力は育ちそうだけど。
 まぁ、どっちがいいとは言わない。
単純にそれぞれの社会に合った教育システムってだけなんだと思います。だから深く考えずイギリスの教育は良いから日本でも組み入れろ、とか学校内部だけの話で判断するとおかしな事になっちゃうと個人的には思います…。

 しかし学校で宗教を習わせるんだというのはカルチャーショックですね。
あちらの文化はキリスト教ありきの文化と言う点では、確かに皆が持っている学ではあるようですが、これは歴史や背景を習うのか、はたまた神の存在まで論じちゃうのか…ちょっと構えてしまいました。
 日本人がお寺で説法聞くのとはまた違うのかね。仏典なんか触れた事もないし、習わされたとしたら…せめて好きな神を選択したい所です。(無神論用の学問があっても面白そう。)
 教育の自由や個々を重んじると言いつつ、宗教は有無を言わさないって、何なんだろうな…。
横道に逸れた感想を持ってしまいました。

 何にせよ娘さんが体験したイギリスでの学校生活は、確かに有意義なものであったようで、英語と言う壁はあったものの、学習のひとつひとつに意義があり、教師は誇りにかけて生徒を教え、素晴らしい時間を過ごした事が解る本です。
 それとは別に、改めて横道ですが、今の時代の海外の学生の生活を知りたいな、と言うのと、ちょっと海外での宗教教育に興味を持ったと言う感想も。
 あと、自分の英語能力のなさに少し虚しさを覚えてみたり。
うん、数年の授業の意味は…。
読書の夏
 読書感想文とかでなく。 

 さぁて、今年も夏休みです。
大体行きたい所が無ければ家で本祭り開催予定の私。
昔と違ってここまで暑くなると外で遊ぶとか考えられんようになってきてるわ…。
 ま、今年も本屋で気になる本片っ端から漁ってカードを切るぜ!!この時ばかりは値段見ずにガンガン本を買っちゃう!(本屋にカゴが置いてないのが不便です。)
 ―という事で3~5日位ブログはお休み~。
バベル九朔

 万城目さんの。好きだわー。
いつもの様に緩くておかしな話かと思いきや、確かに奇想天外の話なんだけど…ちょっと固い??
雰囲気の話なんで、構成に手慣れてきたからファニーさが減ったとか、経験の分だけ失っていく何かの様なものではないと信じたいが。(『風太郎』の時よりは大分おかしな話に戻ってきた気はする。)

 相変わらずタイトルだけでは予想もつかない話なので、どんなあらすじかと言うと、小説家を目指し汲々している主人公は、祖父の遺産の雑居ビルの管理人をしながら暮らしている。そのビルの名前が『バベル九朔』。
 しかしある日、カラスの様に濡れ羽色の髪、ぬめっとした光沢の黒ドレス、反して光るように白い胸の谷間を持つ美女が彼の前に現れ―なんだかよくわからないが襲ってくる。
どうも彼女はバベルの扉を探しているらしいのだが、そんなもの、主人公は露ほども知らない。
しかしどうやら祖父が残した絵画から、妙な空間に行ける様で―。
 と、バベルにはこの不思議な絵の向こうの世界と言う意味も含まれています。その絵の中には正しくバベルの様な塔がそびえ立ち、そこには謎の少女、そして死んだはずの祖父が居る??
謎、謎、謎で始まります。

 いやぁ、基本的に主人公の敵味方が割と最後まではっきりしませんので、ドキドキし通しでした。
もう嘘や偽りの姿オンパレードで、罠もやらしいやり口だらけ。
 基本的に奇想天外な話は話なんですが、キャラが少なめのせいか、万城目さん特有の軽妙な感じはしませんでした。(鼻の話はなんだか相変わらずだなぁと思えたけど。)
ラストに通じる部分はむしろ重いくらい。
 成程と思える解決方法だけど、主人公一人だけが結構な代償を払っている気がするから、余計に。
 ある意味希望はあれど怖い終わり方なんだよね…。(いや、しかし成功してくれる予感は抱ける位、主人公に信頼は出来た。)

 ちなみに些細な事ですが、カラスが随分と目の敵にされている扱いで、カラス好きとしては複雑な気持ちの序盤でしたが、そこには確かに畏怖の念が含まれており、ラストはなかなかの扱いでした。
 カラスが太陽と言うキーワードに繋がる辺り、八咫烏を思い浮かべたり、あと本の中で湖の民の話が混じって来るんですが、え、『しゅららぼん』とリンクしてるのかな?この本の世界観。
 久しぶりに万城目さんの奇妙な小説を読めてご満悦。
あっという間に読了。
家族幻想 「ひきこもり」から問う

 引きこもり要素は自分も二つの点で持ち合わせていると思う。
体調不良なんかでベッドの中で過ごしている時期、全然苦にも思わず冬眠ライフをこなしていた事。
もう一つが、ある日いきなり、儘ならず外へ出られなくなる。そんなビジョンが割と鮮明に思い浮かべる事が出来るくらいには心の中の危うさが自覚出来ている事。

 引きこもりではまず『外に出たくても出れない』、自分で行動をコントロール出来ないと言う点が何よりも問題になってきます。(となると出ようと思えば出れる人が引き籠もるのは単にインドア派と言う事なんだろうか?外との接点を欲しないと言うか。)
この本に出てくるのは別に開き直って、或いは好きで引き籠もっているわけでなく、社会に出たい、あるいは出なくてはと望む人たちの話です。
 解るなぁ…。外との関わりが煩わしく逃げたいと思う反面、離れすぎても不安になる。望む距離感の二反律が同時に自分の中にあって、身動き取れなくなる感じ。
そして現実問題としての生活資金の問題からも逃れられません。

 筆者が長年取材を続けている人たちは、読んでいると苦しくなるくらいに、真面目で、融通が利かず、常識や社会の枠に囚われている人たちです。社会との接点に対する希求も持ち合わせ―いや、恐らくこれがむしろ平均以上に強いため、ギャップに苦しんでいるように思えます。怒りも毒も、求めるが故に比例して噴出し、発散、表現出来る方法自体も絞られてくる。(とある医者は『出来る事が少なくなっていく病』と評します。)
それと同時に、引き籠もっている自分を誰よりも恥ずかしいと思っているのが自分、と言う人たちです。
 自分が許せない。これもある意味プライドの話なんでしょうが、自分自身の期待を裏切る自分、或いは他者に迷惑をかける申し訳なさ。引きこもりの人は多かれ少なかれ、この思いも抱えていると思います。
 ある意味人はどこかで鈍感にならなきゃ流せないものってあると思う。

 筆者の分析が深く、かつ個人的な思い入れがあるようで、時に上滑りや場合によっては芝居がかって聞こえる時もあるのだけど、それだけ取材対象に本気で付き合ってきたんだと解ります。
 こういう良いも悪いも、近くも遠くも、バランスの取れてない意見こそ、生々しい現場感があるんだよね。ルポライターとしてはいただけないんだろうけど、真剣さは伝わってくる。
それでも分かり合えずに取材相手とトラブルになったり、その流れも含めて、『ひきこもり』を分析しようとしている姿勢はこの本の中の全編に渡っていると思う。
 ただ単純にこの本の中に出てくる各個人の事だと、普通に性格的にどうよ…とかその考え方は…と文句も出て来ますし、全面的養護が出来るかと言われれば出来ません。明日は我が身と言う問題であっても、いや、だからこそなのか、前述の様に『自分を責める自分』と言う枠がある以上、叱咤の思いは必ず出て来るでしょう。そう思われる事の苦しさを理解しつつも、簡単に容認出来ないのです。
 カウンセラーは理解をしても共感してはいけないと言う話を思い出しました。私は同じ所で溺れる側の人間だわ。
まさしく同一に陥りながら『考えさせられる本』です。(なお『どうすれば問題が解消されるか』を著者が訪ねて回った時、それは難しい、となったのが推して知るべし。)
 
 他、親側の話、或いは親がいなくなったら、女性の引き籠もり等テーマ別に章が続きます。
個人的に割と躓く種はそこら辺に転がっていると思う、怖い問題だと思います。
学問のしくみ事典 あらゆる「学」の歴史とつながりがわかる

 本当に事典。これは読むとかでなく、必要な所を開く感じかなぁ。
どの学問はどこから派生して、誰が提唱して影響を受けて―と。
本気で読み物として読んだらめちゃくちゃ時間かかるよ。普通に事典を読破…とかしないもんね。
 よくこういう面白い目線で事典を作ったなと思えた一冊。お役立ち。
祝山

 呪山じゃないんだぁ、と久しぶりに加門さんの本。体験、実話じゃないし、書下ろしらしいし…と地雷は避けたつもりなんだけど、『実話が基』とか匂わせてるから、ちょっと鼻に付く部分は残る。
加門さんの作品、昔のやつは面白く読めてたんだけどなぁ…。何だろうね。
 ストーリーとしては愚かな自己責任の肝試し、そしてそれを冷静に諫める霊感のあるアタクシ、と言う分かり易いもので新鮮味はないんだけど、畳みかける怪異も、最初は偶然、何でも祟りに結び付けるなと思うものの、ここまで続くと気味が悪くなっていく様子がよく表現されていて。
こう言う所で文章力や筆致に確かなものがあるから感覚が合わなくなってきていてもつい読んじゃうんだよなぁ。
 上手いと思ったのは祝山の呪山にせずに別方向へ着地した部分。ああ、読み側に注目するのか。綺麗に嵌った。

 あとまぁ、登場人物が全員、霊感ある側もない側も枠が狭い感じで、他者に対しての決めつけが多くその意味ではオカルトと別の息苦しさを感じた。
 でも自業自得系の話は確かに読んでいてスッキリするもんで、肝試しなどとやっている人間がそれ見た事か、の穴に落ちていく様子は黒い感情が満たされる。
おせっかいや好奇心を出した主人公までもれなく、と言うのが得体の知れないものの感覚なんでしょうが、まぁ首突っ込んで来たら怪異側としても手ぇ出すくらいするわな。
それに首突っ込まないとこういう話は進まないし。

 シンプルな素材をしっかりとした味付けにした作品。悪くなかった。
北欧女子オーサが見つけた日本の不思議 2

 順番は違うけど2巻。分厚いね。
 この巻は特に海外から見たアニメや漫画の事が良くクローズアップされてた感じかな。
意外と日本のアニメは大人向け(海外の子供向けアニメは規制が激しいようだ)展開が普通にあるので、そこら辺のカルチャーショックとか。吹き替えとかも日本の物が良いと言う理由が垣間見えたり。
オタクものとして楽しく読めた。
 他、日本の観光なんかも。風呂屋で裸…は確かにそんな文化無かったら受け入れられんだろうなぁ…。(とか言うサウナ大国の人は男女一緒に裸でサウナに入るらしいですが。え?それで同性の風呂で脱げない理由は何なんだ…。)
 何にせよこの人の絵は可愛らしくて日本人に受け入れられやすいよ。楽しく読了。
どんな時代でもお金に困らない「黒字生活」のルール

 細かい所からコツコツと…。とにかく基本を説いた本ですが、方法と言うよりは根本的な物の考え方を変えてみよう、お金を意識しようと言う方向性です。
 言い方次第ですが、金持ちになろうとか、貯蓄をいくら貯めようとか言うのとは違い、収入と支出のバランスを取る事を第一義としています。
まぁ、結局はどこに意識を据えてるかで満足度も違うよね。
金持ちでも金使いが粗ければ足りない足りないのスパイラルにハマるし、逆も然り。
 こう言う切り口の本もあっても良いなと思えた一冊。
さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで

 慣れと言う物は怖いと言うか…。2巻目だったんでもう普通にカルトも何も関係なく、一人の人の人生譚として読んじゃえました。
勿論一般的な話とはかけ離れたエピソードばかりで驚く事が多いし、児童虐待(?いや、ある種のカースト的なものとか、圧力とか、その他諸々)に怒りを感じる事もあるけど、本人は至って普通にそれを受け入れてて、意外と当事者ってそんなもんなのかもしれない。はたまた、その世界でしか育ってきてないから、普通が、それ。
 考えだすとまた洗脳どうのがあるけれど、大なり小なり育ってきたコミュニティや家庭だけでも驚く差異ってのもあるしね。
 多分外から見た私たちが喜びそうなドラマティックな展開だと、本人が外を知り自分の人生は虐げられていた、騙されていたとか怒り悲しむ展開なんだろうけど、この人は外を知ってもあれはあれでそういうものだっただけ、と言う本人だけが言っても許される泰然さみたいなものがあると思う。
自分の性格の良し悪しも測った上で、無理をせず何より今が楽しそうと言う、それならそれでいいかなぁ、と言う後味の悪くない生い立ち話に。
 結局は外が期待する話は特に何もないんだけど、拍子抜けこそが何もない平和って事で良かったのかも。
錆と人間 ビール缶から戦艦まで

 錆の歴史ですよ、錆と戦う人間の技術の歴史。えー、面白そう。変わった本もあるものだ。またサブタイトルがグッとくるよね。
 確かに金属加工を始めてからこの方、人類は錆と戦ってきた。小さいも大きいも身近なものから見えない所、どこにでも金属は存在します。
 最初は船の話から。
とある巨大船が腐食して、湾から動かすのも一苦労。解体するなら一切湾を汚染するなとか言われる話とか、はたまた申し送り無しに管理されてきた自由の女神がいつの間にかじわじわと浸食されていた話とか―。ワクワクするねぇ。
 他にも缶詰、車、パイプラインと。

 しかし基本、対処する人間の話を期待するんだけど、まぁ錆に負ける負ける。
さすが金属の癌。どんな障害もものともせず突き進む恐るべき存在です。
 また腐食にも条件があり、二種類以上の金属を触れ合わせないとか、水分大敵とか、電気の流れとか…科学的に八方塞りで、人類は未だリアルタイムで錆とは戦っているんだから、なかなか勝利の話は聞けません。
 だって例えば自由の女神なんて、内部に入る観光客の呼気の水分量だけで膨大なんだそうですよ。
それらが骨組みからじわじわと…恐ろしい。
 そして意外な事に水がダメなくせに、実際はそれ以上に酸素の方がダメと言う所。
酸素って、緩慢に物を燃やすと言うイメージだそうです。ははぁ成程なぁ。

 何かを作り出した後、『維持』する事にこんなにも問題があるだなんて、普通の消費者は思いも寄らない。
それこそ缶詰なんか、破裂、穴開き、腐食があればクレーム言いたい放題、でもあれの開発にどれだけの問題や知恵や技術が詰まっているかと知れば…―思わず『でも缶詰と言う技術が無かったらこんな便利な生活してないんだよな、有難う』と言いたくなります。
 パイプラインなんかも、トラブルなくて当然、所がそれを維持するのにどれだけの資金がかかるのか。
人間、作る事には金がかかっても当たり前と思うが、一度作ったもののメンテナンスに金がかかるのはなかなか理解が出来ないものです。そして予算をケチっておいて、トラブると『何作ってんだ!』とね。老朽しないものは無いという事です。

 この本を読めば、私たちの生活が如何な技術によって成り立っているのかと、その歴史や戦いっぷりに圧倒される事請け合いです。
塗装ひとつも、防食技術と聞くと感慨深かった。
 全ページ興味深く読めた一冊。
SFまで10万光年以上

 続きも読んでみた。
これ、本当に亡くなる一歩手前までの原稿なのねぇ…。最終頁ら辺は物悲しくなるわ。
 この巻にはお師匠様シリーズのカラーイラストも載ってるし、そのキャラらを使っての別コラムとかもたくさんあって嬉しい限り。
なんかいい感じに馴染む絵なんだよなぁ、この人は。特別スタイリッシュとか、好みとかでなく、落ち着くし嫌らしさがない。
 もう新たな作品を見る事は叶わないけど、読んでる間は楽しい気分にさせてくれる一冊です。
ホーダー 捨てられない・片付けられない病

 アメリカの捨てられない人たちにはこういう名前が付いてるんですね。ホーダーと言うそうで、立派な病気として研究対象にされている。
 色々と違うなぁと感じるのは、向うは精神的な事で病院にかかるのも抵抗がないし、自ら研究対象に…と手を上げて来る人がたくさんいる。
それで自分も治れば万々歳だし、研究者も研究対象に事欠かず、むしろ応募者が多すぎて驚くんだそうで。
 しかし何せスケールが日本とは違うので、溜め込む量は持てる空間に比例し、酷いのになると、家が一つ埋まると次の家を買い…と4軒5軒をゴミ屋敷にして住み替えていく人も居るようです。
…買えちゃうのね…。
 中の様子はハムスターの巣穴の様に例えられ、ヤギ道と言う移動経路は想像だに容易い。ここら辺は洋の東西を問わずだな。

 しかし研究だからか、割と自己分析の進んでいるホーダーの人も多く、治そうとする意思はあるみたい。
ところが治療方法に諾々とは従わず、自分の主張は全開の人も同じく多い。
捨てるどころか、買い物依存症の人も多いので、『今日は一日買い物をしない日』と言うのだけでも苦行となるそうで。
 彼ら彼女らの言い訳を聞いていると、本当に信じられない思考回路をしているのですが、言わせてみれば「何でもかんでも捨てる」こっち側がおかしいと言うのも、隔たりを考えると理解出来ます。
要はライン引きが全く違うのね。
 大事な物、必要なもののキャパや、ないと困ると言う不安。そりゃぁ要る物を捨てている様にも、要らない物を溜め込んでいる様にもお互いそう見えるわ。
研究対象の生き方を見ていると、どうしてもゴミ屋敷と言うのは結果であって、そこに至るまでの問題点が個々に違うと思われます。
 そうなるとこれは病気そのものと言うより単なる病気の結果と言える。
本来は強迫性観念とか、潔癖症、代替行為…と治療すべき別の要因は多いのでしょうね。(しかしコレクターもこれらの中に含まれると言うのが盲点でした。)
 恐らくは目の前に物理的に障害を築き上げる『ゴミの山』そのものが問題に見えるけど、それらは根本じゃない。だから「捨てられない…」と悩む前に何故捨てられないのかの原因を究明して目を向けなければ進展せず、それで皆「何故かわからないけどゴミは減らない」となりがちなのかと。

 割と日本で流行っている断捨離系は、対処療法寄りなんだろうなぁ…。恐らくは言葉の上滑りが多い印象。
本当に断捨離(ひとつひとつの漢字の意味から)を考えて根本療法としてやってる人は意外と少なそう。
 成功と失敗の分かれ目はここなのかもね。
 まぁ日本でいう所のゴミ屋敷と、ホーダーは若干違うらしいですが。
SFまで10000光年

 ああ、このノスタルジックな絵柄とコラム形式。
その昔自分の人生でSFが最も魅力的に囁きかけてきた頃を思い出します。
年代的にはそれより下だろうけど、お兄さんお姉さんが読んでいるSFって感じだったんだよなぁ。
 そんなSFなコミックエッセイ。
古今東西のSFに関する話題やネタ、熱い思いなど―。

 ―って、途中で気づいたんだけど、この本、『お師匠様は魔物シリーズ』の挿絵の人じゃん!
知らないで手に取ってましたが、何と言う運命。
 この人の絵は描きこみ文字も多くて、それが挿絵でも面白かったんですが、たっぷり一冊丸ごと読めると言う。
 しかもSFだけでなく、アニメやゲームのネタもたくさん。いやぁ、いいわぁ…と、最後の解説まで来て知っアのですが、お亡くなりになっていたのですね、この方。うわぁ…ショック…。もうこの人の作品、見れないのか。好きだったのになぁ…。
 じっくり読みたい一冊です。
長生き競争!

 小学生時代のクラスメイト達が老人になり再会。長生きに発破をかけるため、最後に残った一人が総取りの賭け事を取り決める。老人版逆バトルロワイヤルと言ったなかなか面白いネタです。(勿論殺し合いはしません。長生きする方向での戦いです。)
 しかしその掛け金もまた凄くて、上は4400万からと言う、欲に目がくらみそうな金額が集まります。
 ここに、その金を管理する主人公に不穏な女の影が。
孫と言ってもいいような若い娘が、押しかけ女房の如く家に住み着いてしまい、誘惑なのか単に懐いてるのか、主人公に付きまとうのです。
 勿論若い娘が金目当てに老人に近づいてきたと用心されるのですが、果たして一体―?
 
序盤でこういう展開だったので、ああ、成程、面白そうなと思えました。
どういう話で長生き競争するのかも思いつかなかったんですが、そうか、そっちじゃなくてこういうミステリーか。
不穏でハラハラします。
 しかしこの話が進むにつれ、実際に仲間たちは病気だので本当に亡くなっていきます。
うわー、シャレにならん展開です。この酔狂さといたたまれなさが絶妙なんですよ。

 しかし最終的にはこれ、老いのヒューマンドラマでした。良かった、出て来る人たちに悪人はいなかった。
結構最後までミステリーを疑っていたんですが、ラストにはもの悲しさと空虚感と、それでも幸せの中身ってこんな感じなんだろうなぁと言う後を引く感じで。(個人的には爺さん口調氏が亡くなった時の葬儀の方がグッと来た。)
 タイトルやあらすじからちょっとコミカルな感じの内容を想像していたんですけど、むしろリリカルな物語でした。
ダーウィン賞! 究極におろかな人たちが人類を進化させる

 まぁ皮肉の賞だね。
愚かすぎる理由で死んでしまった、或いは生殖能力を失った事で、そんな愚かな遺伝子を残す事無く人類の進化に貢献した人を称えようと言う賞。
冗談きついわ~と言う感じですが、漫画みたいなことがあるんだなぁと言う不運の連発や、トチ狂ってるとしか思えない行動、また不可解なその動機。
人間の可能性と言うか、突拍子もつかない事って山の様にあるんだなと唖然とした一冊。
大人の少女マンガ手帖 オカルト・怪奇ロマン 

 レトロな昔の少女漫画の読本。
あー、溢れるその時代感。
 さすがにラインナップのほとんどわからんが、漫画家さんの大御所感は理解出来る。字面は反応出来るものね。

 こう言うの見ていると、絵柄と時代感、ホラーの扱われ方が独特のテイストだから、読んでみたくなるね。
昔のホラーはシンプルにして様式美があった…気がする。
まぁこれを少女漫画でやるからまた独特なんだよね。
 それにしても少女漫画でやると、恋愛もので健気な美少女主人公が虐げられるのと同じで、怨霊や怪奇現象にこれでもかと言わんばかりに脅される健気な―(以下略)。
あー…、踏襲したパターンはもしかして同じなんじゃあるまいか。苦境に立つヒロイン像。
 ただホラーだとこれが助かるんだか助からないんだか…?紹介ものだったので、ラストとか全く分からずもやっとしました。
今でも読めるやつなの?!ねぇ、これ!!(廃番ものとかだったらなんともやるせない紹介だよ…。)
ヒーローが出てきて助けられるようなものでもないと思うしなぁ、怪奇現象系は。

 逆に新しいな、と思ったのは少女の方が脅す側、つまり魔女系、悪魔っ子系美少女主人公の存在。
中でも明確にダークヒロイン的に描いているのは当時開拓者は誰?って感じでその系統が気になるね。

 ちょっとおもしろかったのは、当時の少女漫画はとにかくタブーが無くて、いくらでも怖い表現ありきだったらしく、『苦情が来ても編集部が守るから』と言うスタンスだったようです。意外に気合入った感じだったのね。
 ただ当時はこの程度の表現で苦情が来たのか…いや、正直、漫画で『怖い!トラウマに!』ってなる…のかなぁ??子供だったら、なる??
TVの心霊番組とか実写なら解らんでもないけど、漫画はなぁ…。
時代が純潔だったのもあるのかな。
(今は目新しさを求めるために相当な表現で挑んでくるもんね、どんなジャンルでも。
さすがに苦情の一つも入るだろうけど…。)

 いやぁ、しかし出来るならここに載っている作品、アンソロジーみたいにして全部載せてくれた方が味わい深かった。
 この本、全ページカラーで、生原稿の画像とかまで載ってるんですが、それだけに実に興味引かれて読んでみたくなるのが玉に瑕ですよ。
古すぎて手に入らないだろうに…。
 面白いが故にフラストレーションの溜まる一冊でした。お薦めなのに薦め辛い。
孤独なバッタが群れるとき サバクトビバッタの相変異と大発生 フィールドの生物学 9

 哲学的なタイトルと随分専門的な話だなぁとタイトルで。
そしたらとんでもない面白本だった。(いや、ちゃんとした学術的な話ですけど。)
とにかく、この研究者本人がものすごく面白い。
 幼い頃、緑の服を着ていたためバッタの大群に群がられ服を食べられたと言う話を聞いて、自分も是非バッタに食べられたいと思ったと言う―。ぇ?
 それどころか、バッタの大量発生に恐れをなす所を、感想が『なんて羨ましい』だし、とにかくバッタ好き。
 よく海外でイナゴの大群が空を覆い尽くして農作物を食べ荒らして後に残るは荒れ野原…というやつ、あるじゃないですか。あれを蝗害と言うんだけど、あれを恐れずして、何なんだろうね、この人は。(そういうホラーがあったよな。)
 しかしあれ、実はバッタらしいよ。
そもそも蝗の漢字を間違ってあてがわれたせいらしいけど、日本じゃイナゴはああいう事にはならないらしい。風評被害だったのか…。
 それを証拠に英語じゃ群れる系のバッタをlocustと言うんだけど、これがまた語源的に『焼け野原』の意味だそうで。
 ところでこの大群、移動して行く途中で500kmも列が続く事があるんだって…。怖すぎる。この単位が間違いでないと言われたら、そりゃ天も曇る程の影だよね。飛行機も飛べなくなるらしい。
とりあえずここら辺を読んだだけでも、イナゴからバッタのイメージが真逆に。

 それにしてもこの研究、小さい頃からの虫好きの延長と言うのだから凄い。
この本を読んでいくと、バッタの驚くべき生態がよく解ります。
 まずバッタとイナゴの違い。種類じゃないかと思いきや、そもそも似たような虫の中、色が変わる変異をするかしないかでバッタとイナゴは違うんだって。(だから世間的にバッタと言われるものの中に厳密に言うとイナゴが混じってる。逆もある。)
因みにイナゴが色が変わらない。
 この色が変わると言うのも初めて聞いたんだけど、たまに居る黒いバッタとかね。
あれ、結構最近まで違う種類のバッタと思われていたらしい。
 所が、ある日色の違うバッタも同じ種類のバッタで、条件の元色が変わるだけだと突き止めた学者が居た。
それを研究していく中で、孤独相と群生相と言う成長中の環境の違いで色が変わると言う事も解り、また面白い事に、群生相になったバッタが群れてあの大群になるらしい…。(移動相と書いているサイトとかもあったんだけど、孤独に対応するなら群生だよなぁ。しっくりくるわ。)
 あ、タイトルの孤独ってこれかぁ!と思わず膝を打つ。上手い、上手いなぁ、このタイトル。
 因みに孤独相と言うのは単独で群れずに成長した場合。大人しめ。群生相は他のバッタと一緒くたに育つと、色も黒くなり、活動的になり蝗害を引き起こす。
はぁ~、凄い発見だ。

 それだけでも面白いのですが、その後卵の秘密や様々な仕組みを好奇心で掘り起こし、論文バトルやフィールドワークも燃えるし、変わったミドルネームをもらった話もてんこ盛り。
かなり長文になるのでここで書き切れないほど。
 興味が無くとも読んでみると面白い、そんな一冊です。
文学全集を立ちあげる

 架空の文学全集を作っちゃおうぜ!と言う楽しい企画本。
これもまたある意味古典至上の話なんですが、他を下げないのでそんなに腹も立たないよ。
 ただまぁシェークスピアがすべての小説の祖、とか、古典も読まずに小説を書く人たちはすぐに消えていくとか、若干多様性に寛容でない発言も見られます。
読まずに書いた人は居てもおかしくないだろうし、黎明期なんて誰でもサンプル無しに書いてきただろう。そのジャンル初、とかね。
 ただ、そもそも日本の文豪、あるいは他国の文豪も、古典を読んで真似をしたなんてのが結構あるようで、幹を手繰りやすいようなのね。それを聞くと何が根底になるのか、誰それは誰派とか、分かる話も多い。
 確かにその言い方をしたら今の小説や漫画をさらっと書いちゃう作家さんも、小さい頃からこれを見て―とかで熱くなったものが似通っている事実はあるだろうし。
カテゴライズもオリジナリティも、捉え方次第であるが故に、出る話なんだろうな。

 実際この本の中の3人ですら、あれを入れろこれを入れろ、あーでもないこーでもないと決して一枚岩ではありません。
だからこそ議論が面白かった。
結構はっきりと自己主張で他の候補をぶった切るくせに、感情だけであの作家は嫌いだとかも言っちゃう。…いいんだ、それ。
(あと翻訳は誰版が良いとか悪いとか。)
 万人に読ませる文学全集の割には、3人色が強く出ている選び方で、成程、選者ってこういう所で量られるんだなぁと初めてどういう物なのかわかった気がする。
書いてる人でもないのに権威的に扱われるのは、このせいか、と。
己の本棚、教養、考え方を晒す仕事なのね…。
 タイトルだけ、名前だけ知っている人オンパレードですが、知らないなりに読んでるだけで楽しくなってくるので、この編集過程(この本のメインは実にそれ)を晒すのって、意外と面白いものかもしれない。
意図とか狙いを知った上で吸収すると言うか。
 気が向いたらこれに倣って読むのも乙かもしれないと思えました。
 とりあえず知られざる『○○(国名)文学』と言う括りで各文学のカテゴライズだけでも勉強になります。
 後半は日本文学全集がテーマなんだけど、これもより身近にあるだけ、今までの文豪ら作品の良い悪いの価値観が変わる発言に、わくわく出来ました。そういう見方もあるんだ~、と言う無知故に呑気な感想だけどね。

 興味深く読めた一冊。
実際この架空の文学全集、全部読んでたら、何年かかるんだろうね…。
 (しかし途中で笑えたのはうちの家人が大好きな一冊がコテンパンに批判されていた事。
しかもまさに大好きなくだりが全否定されていた。はは…だから本って好みの世界だよね。
好きな本を読めばいいんだよなぁ。)
貯金兄弟

 お話仕立てで経済を学べるシリーズ。
今回も面白そうだな。
 兄と弟は両親、及び養父を早く亡くしてしまったため、とってもお金に執着してます。
しかしその執着の仕方は両者真逆で、金を使う事で当時の恨みを晴らすの如くかの兄と、金を溜める事で安心感を得る弟と―成程、どちらもコンプレックスだよなぁ。
 生き方一つとっても、大卒派の兄、高卒派の弟、大企業派の兄、公務員派の弟と常に衝突しがちです。
なかなか初手からワクワクする構図だ。
 見出しには『大卒が高卒よりも稼げるなんて過去の事』みたいに書いてあって、私的には弟の言う事の方が私にはしっくりきたなぁ。
よほどのエリート校、エリート企業に就職出来るならまだしも、そこらの大学なんぞ皆行ってるからそれでいい企業に入れる確率なんてないも同然、だったら生涯賃金を増やすため、その4年を使い、リストラに怯えない公平な採用の公務員になる―と言う感じ。このご時世だし…。
 おまけに学歴が出世に影響すると兄さんは言うけど、エリートが集まる所では出世競争も厳しい、じゃあ小さい企業で…とさらに兄さんは言うけど、不況で潰れるのは体力のない会社から、そもそも大学にかかるお金自体マイナス―と弟はしっかりし過ぎのネガティブさです。(ちなみに高校生。)
 まぁ兄弟は両極端なんで、金を今使わないと意味がない兄と老後に取っとく弟、本来はバランスなんだろうけども。
 この家はエンゲル係数70%くらいと言う家計なので、節約自炊を担ってる弟の気持ちの方がまぁ解ると言えば解るかな。
実際兄は頭が良くて大学行く価値があるけど、弟は自分の出来をよく理解して大学を死に金だと判断してるだけだし。世間一般でいう『大学出なきゃ』神話を押し付けて来る兄はその意味じゃ理論負けしてる。(なお新卒内定が決まったばかりの兄。)
 さて、これがどう転がるのか?

 目次も世間のいろんな両極端論の戦いの様です。
生命保険や、賃貸か持家か、とかも入ってます。
 しかしまぁ二人ともどこまで両極端かって、兄はクレジットカードとか消費者金融とか使いまくるし、弟は飲み会全断りから始まり、人の食い刺しを食べたり、自販機のお釣り回収巡り(これまずかったはずだが)を始め、同僚相手に金でやり取りするようなドケチぶりでドン引きなくらい。…も、もう少しほら…。
 ストーリー上も途中から、兄の恋人を弟が取ってしまった様になってしまい、妙な亀裂が兄弟の間に入ります。
(浮気でなく、断ってからの付き合いだけどどう考えても禍根が残るよ。)

 最終的にはお互い結婚するんですが、そこからも人生設計はことごとく違う。
似たもの同士の夫婦とも言える感じでくっついたんですが、ここら辺までくると、兄が可哀そうになる書かれ方が多いかな、と感じたり。
 弟夫婦は子供におもちゃは与えず何回も(折ったものを広げて!)使えるからと折り紙を与える。それに不満もなく喜んで遊ぶ娘。
対して兄妻はダイヤの指輪を見せびらかす様な性格…と、なんかお金の話だから賢く貯めようと言う方を良く書くのは解るんだけど、やり過ぎ感もなぁ。
 現実だと娘が不満を感じたりする可能性の方が高いだろうし、兄妻のは単なる性格設定ひとつのエピソードだよなぁ…。
 極めつけは両者の同じ年の娘が、弟の方は金をかけなくても何でも出来て、兄の方は金をかけても出来ない子と言う都合の良さっぷりが。
まぁ、貯まるか貯まらないかで言うとそりゃ弟の人生なんだけど、兄の扱いが酷過ぎない?
 とりあえず二人とも、何でもお金に考えて人生を決めていきます。

 ストーリー的にはしかし、最後になるにつれ、兄の邪魔もあるが弟の人生に陰りが見え始め、最後の最後で身も蓋もないどちらの金に対する考え方が良いとも言えない所に終わるんだけど、まぁ、運と言う要素は誰にも測れないからね。
ハウトゥ本かつ小説と言う変わった本の落としどころを十二分に活用しているオチかと。
 だけど、途中途中のお金の話は改めて知らない人が多そうな話なので、是非読んでみるといいと感じます。セリフで説明されているので図や文章よりも分かり易いのがまた納得でした。
 弟の人生は極端だけど、自分の感性に合う方法をひとつでも拾えれば吉。
(兄の人生も無駄だとは思わないんだけど、人との付き合いだとか、そう言うのは真似出来る術とかではないので、参考にしようがない。)
なんにもない部屋で赤ちゃんを育ててみれば

 ミニマリストは果たして子育てに対応出来るのか、的な。
今までのブログの流れをざっくり読んでいるので、どんなもんかと手に取り。
 うーん、残念な事に丸々コミックエッセイじゃないのね。文章と半々くらいか。テンポが掴みづらいし、この人の売りはコミックエッセイなのでそっちで読みたかった。

 肝心の子育てですが、そりゃぁ荷物はどんと増えるよね。
今まで子供がいないから家を綺麗に保ててる、子どもが居たら散らかり放題とか言われていたようで、この人も結局一時的にそうなってしまったようです。…まぁ世の中には優先順位があるもんね。
かつ時間も有限。
 しかしある意味で汚屋敷出身のトラウマで綺麗に保つことに強迫観念を抱いているのか、散らかり始めた時は一種のクライシス状態を経験したようです。でもある程度すると慣れちゃうんだそうだ。
 それはどっちの意味でもとれるなぁ。
人間どうとでも暮らしていける。汚さなんて個人基準。今までどんな風に生きていようが、落ちる時は落ちる―。
―まぁ、落ち着いたら元のミニマリストにすぐ返り咲いたようですが。
 確かに子育て中で精神的にも体力的にもやられている所に、日々ルーチンを増やしちゃいけないよね。
それでイライラ、トゲトゲしたようだし。
 人には容量があると言う話でした。

 あと荷物が増えて掃除にしにくい事に気づいた―って、この人レベルが今更何を言っているんだろうと思った。
掃除のしやすさを求めてor実際荷物減った時に掃除しやすい!となるんじゃないんだ…。
(と言う事はこの人、本当に物を減らす事に実用とかが第一に来てるんじゃないのね。自分で『捨て変態』と名乗るだけあって、もう性分がそうなんだ…。)
 うーん、まぁ、ちょっと期待していたような内容じゃなかったな。てっきり物を増やさないまま「こんなんで赤ちゃん育てていけるの?!」と言う驚きの生活を拝めるのかと思っていたら、(当たり前だけど)ミニマリストも普通にテンパる人の子でした。
 それでもこの人基準で荒れただけで立て直しも早いし、当然一般家庭のどこよりもすっきりした生活してると思います。ミニマリスト名乗れるレベルはさすがだわ。
つまみ食い本16
  2冊共々電車のお供で流し読み。時々こんな事やってるけど、本当いつまで経っても成長しないな、私。


 英語の話で苦いものを感じたので、ちょっと英語力を試してみたくなり、英語の児童書を。
―あちらの小学生低学年とか向けかなぁ?いや、幼稚園か。
ただふわっと見た感じは、日本だと中学1年生レベルの英文だ。
 短くてオチがないと言うか、不思議と言うか、とにかく楽しく終わる話が複数。
児童向けの為か、リズム感重視と言った短文なので、仮に分からないとしても勢いで読めます。
 恐る恐る一話目を読んでみたけど、分からない単語はひとつふたつで、なんとなくそれでも通じるし、さくさくっと読めたのでまぁほっと一息。グラマーは知らんがリーダーならいけるみたい。
 まぁ実際は英会話出来るかの方が重要なんだろうけど、本の虫としては文章読める方が役には立つんだよね。
(おかげさまで自分で書く方、話す方はまったく出来ません。)
 日本の話もたくさんあって、しかし日本昔話並みにそんな昔話は知らないと言うものばかり。
ギリギリ天狗の太鼓の話は聞いた事があるが、元ネタが思いつかない。
琵琶湖のゲンゴロウの由来話とか、知らんよ…。
 ただ気づいたのが、日本語だとすぐにラストの落ちが目に入ってなーんだ、となるが、英語だと本気で眺めないとさっぱり何の事だかわからないので、オチがガッと勢いよく入って来る。
 このゲンゴロウの話は、どんどんおかしな方向になっていくので、自分の読解力がおかしいのかと訝しんでいたら、オチでハッとした。あー、魚になった話か、と。
 その他、まぁ時間切れで全部は読めなかったんですが、余りにも知らない単語は久しぶりに調べるとかしたんで、疑似勉強した気分になりました。
たまにはいいな。

 そして英語に引き続き数学も。
うん、以前にも思い出したように数学本読んだな。また忘れたので、或いはどれだけ覚えてるかチェック。
ねー、しかし、なんでだか結構序盤でもう解らん。前回に読んだ数学本はめちゃくちゃ面白かったんですが、何これ??同じこと書いてるの??中学生で本当に私、こんなの解いてたんだ???
 ビックリするほど解らなかったです。
単語の意味の説明が一番わからないと言う。
(テストなんて公式丸覚えで当て嵌めて計算するだけだったしねー。)
いざその単語の本来の意味を教えられると、その考え方的に理解出来ないの。
例えるならば『乾電池』をどう使うかはわかるが、仕組みは理解出来ん感じ。
 …こちらも時間切れで途中まで。
うわー、怖いわぁ。せめて義務教育分までは覚えておきたかった。
 (自分の数学能力の低さは置いておいて、本によって本当にハマるハマらないがあるな、と思えました。そっちが衝撃とも言えた。)
8番目の子

 ユダヤ人の少女、施設での実験、迫害―とあらすじでみたので、ホロコーストの話かと思ったのですが、微妙に違った。
 まず戦争の影がない。国の設定までは気にしてなかっただけど、主人公の少女は貧しい家庭ながらも両親と兄と暮らしている。
このまま家族ごと暗い時代に飲み込まれて行くのかと思いきや、まさかの父親の裏切り。
若い娘と浮気して、すったもんだの末、母親を刺殺と言うちょっと胸糞の悪くなる様な展開で始まりました。兄妹は父親が逃亡したせいで親無しになったのね。(父親は6歳の兄に「今日からお前がこの一家の主だ、後は頼んだ」とかほざきましたよ。)

 可哀想に兄妹は一緒に入れる施設が無く、主人公はいきなり一人ぼっちに。
 その施設は最初の一月、児童が病気持ちかどうかを調べるため、必ず隔離棟に閉じ込めます。
そしてそこから人体実験のじわじわ来る話が始まるのですが、時折大人になった主人公の話が挟まってくるため、死なずに済むんだと分かるほっとした部分と、さらに未来パートでも不穏な空気が流れ出す。なんと彼女の働く病院に、入院してきた患者が、当時の施設のドクターで、彼女に人体実験を施していた張本人だったと言う―!…何というサスペンス。
 いやぁ、当の本人は子供の頃自分が何の実験をされていたかも解らないわけで、主人公は最初、そのドクター(女医)に甘えた感情さえもっていました。しかし大人になった今、よくよく考えると子供の頃から自分は剥げていて髪の毛が無く、これはいわゆる、放射線のせいでは…?
 そして思い出したのは、自分が名前でなく、『8番』と呼ばれていた事―。
そこから彼女の世界は一変します。
 癌の片鱗を自分に見て取った主人公は、信じていたドクターに裏切られ、そのドクターの生死は自分こそ握っているのだと。
未来パートはこの複雑な事情ありきの復讐劇です。

 しかし過去パートと共に徐々に明かされる諸事情や、未来パートの思った様にいかない復讐。
それらはやがて、最初に感じた不穏な復讐劇を、まるで違った物語へと導き始めるのです。
 ラストまで読むと、これは単純な復讐劇なんかじゃなく、色んな方向に対する愛憎が渦巻いてる一人の女性の人生譚だったんだな、と。
ミステリーじゃないわ。
人種的な物語でもない。
 主人公の心の機微が丹念に描きこまれていて、憎しみ一色の復讐劇なんかとは全然違う、思ってもみなかった物語を読まされた感じ。
 作者がラストに持ってきたシーンこそが、実はこの主人公の人生の主たるものを象徴しているのかなぁ…過去話から全く予想出来ず。
最初からそう狙っていたのか、途中で着地点を変えたのかがよく解らないのですが、何というか深い味わいの本でした。