元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
おだまり、ローズ

 タイトルから溢れる気品と好奇心。
お貴族様に仕えた、本物のメイドさんのお話です。
これは期待。

 著者は、母親もメイドだったところ、自分もメイドを目指し勉強していったのですが、理由がなかなかユニーク。
旅をしたいから、との事。
成程、お付メイドになればご主人様の旅行に付いて回るもんなぁ…。だから勉強したのは外国語と言う計算された人生設計です。
 そしてお付きメイドになったと言えども、主人は主人、メイドはメイドと、卑屈でない互いの領分を割り切り、時に主人と大喧嘩も。
口答えだけでもすごいのに…。
イエスマンの取り巻きが嫌いなご主人らには気に入られたようです。

 そう、メイドさんは別に奴隷でもなんでもなく雇われているだけなので、嫌ならやめるし、条件の良い別のお屋敷に勤め替えをする事も頻繁にありました。
 この人が長く務めたお屋敷の女主人に、タイトルである「おだまり、ローズ」と言うお約束の言葉を何度ももらっていたようですが、これはまぁメイド風情に何かを指摘されて図星の時に、主人が威厳をもって揚げる白旗みたいな言葉でもあったようです。じゃれ合いなんですね。
ユーモアたっぷりに罵り合う女主人とメイドの会話は読んでいて和みました。
 なおシチュエーションや事件は面白いのですが、それぞれのお屋敷の登場人物と相関図のややこしさが多少あり、あと時系列もたまに崩れるので、唯一その点だけが読み辛くもあったかな。

 いやぁ、しかし本当の屋敷の長である旦那よりも、女主人が屋敷を回すと言う意味がよく解る生活譚でした。貴族の威厳と世間に対するずれっぷり、気取る所と気取らない所のライン―ぐいぐい読んじゃった。
 最後辺り、彼女は女主人が死ぬ時までメイドであり続けるんですが、一種独特な関係性に、しんみりもくる。
なかなかないような人生を垣間見る事が出来る一冊。
 他に、執事の本もあるようです。