元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
すみ鬼にげた

 仏像に踏みつけられた鬼の像を、大工が助け、朝になるとその鬼の周りを取り囲むように仏像(武装系)たちが―と言うあらすじを聞いた瞬間、「怖ぇーっ」と震える。
 私の中では、逃げた鬼を八部衆らが武器を手に手に、取り囲んでいる図がぐるぐると。
果たして仏にどんな目にあわされるのか、鬼。そっちが心配になりました。(ええまぁ、既に何百年と踏まれ続けてきたわけですが。この上逃亡、脱獄罪だと一体どんな…。)
 その後が気になりすぎて読んだわけです。

 まず想像と違ったのは、鬼は踏まれてるやつじゃなくて、寺の四隅の支えている状態だった事。
鬼が哀れで大工が助けたわけじゃないという事。
 そもそも大工は見習いになったばかりの少年で、鬼に挑発され、つい鬼を自由にしてしまいます。
…せめて「絶対に朝には戻るから」とか約束させてるのかと思いきや、それすらないからね。
 私はこのまま、鬼に騙されて少年が食べられやしないかを心配したよ。
 鬼は愛想も良くないが、恩は忘れない様で、少年を連れて、自分が行かなければならないと言う山中へびゅんびゅんと。
そこで集まっている魔物たちの前で、海を渡ってやってきた馬頭の鬼と力比べをするのが目的だったようです。
 まぁ後半は少年も交えて、祭り状態で騒ぐのですが、鬼はちゃんと少年を他の魔物から守っていました。
もうそれだけでお釣りがくるいい話…。

 しかし少年を返すために再び寺へと出向く鬼。
よく寺へ戻れるなぁ。
 案の定待ち受ける仏たち。
少年はここで申し開きを―するのかと思いきや、気が付いたら普通に寝ていたのです。あああ、仏様?!一応理由とか、聞いてあげて?!
(まぁ何の断りもなく、逃がしたり逃げたりしたのは少年と鬼の方ですがね。)

 でもその後ほっこりするのは、朝になり急いで鬼の居た四隅を確認する少年。鬼は以前と変わらず柱に挟まれています。心配そうな少年の問いかけに、鬼は一言たりとも反応しません。―でもその顔は、満足そうに、どこか笑っているのです。
あー…なんか、いいね。
ほっとした。
 この後、少年が腕のいい大工に育っていくのも、また良い。

 これ、モデルが唐招提寺の鬼らしくて、ひとつだけ妙に笑っているような不思議な表情をした鬼がいるらしいんです。そこからこの物語を思いついたようなんですが、そんなのあったっけなぁ?今度見てみようかなと言う気になりました。
 また、輪郭線のない淡い水彩調の絵も、驚くほど表現力と雰囲気にあった見事なもので、デフォルメの中のリアルさと言う、独特の感覚をくすぐられました。