![]() | 庵堂三兄弟の聖職 (2008/10/24) 真藤 順丈 商品詳細を見る |
信じられん。これが『地図男』の人?
あれだけでも多色、多角な物語を見せてくれたのに、また違う世界がここにあります。
…どんだけ作風の使い分けが出来るの、この人?(称賛を通り越して呆れる。)
ホラーなのかどうなのか、あの『トンコ』を抜いての大賞作なのね。
とは言え、普通のホラーじゃありません。
幽霊も居ない、不気味な気配もない、ジャンル分けの難しい作品。(『トンコ』もそうだったけど。)
タイトルにある庵堂家の3兄弟は、亡くなった人を埋葬する代わりに、その遺体を使って工芸品に細工し、忘れ形見にする葬儀屋を営んでいる。
外界の音を憎み、ひたすら作業に打ち込む職人肌の長男、汚言症を患い、破天荒に生きながらも天賦の才を与えられたかも知れない三男、そして、主人公の二男―。
3人のその風変りな仕事を通じて物語が進むのですが、そこには遺体を持ち込む者のドラマだけでなく、自家に関わる謎や極道との因縁…すべては各々の自己認識へと収束に向いラストを飾る。
なんと説明しにくい作品。
ホラーと思わせる部分があえてあるとすれば、モチーフが遺体工芸なので、グロ、だろうか。
骨を砕いたり、肉を割いたり、皮を剥ぐ―そう言った描写が普通にあります。
ただ、不謹慎と言うなかれ、牛馬を解体する肉屋を見ているような、あるいは皮細工や剥製、そう言った作業の淡々さだけが、異様なまでに前面に押し出され、気味の悪さが浮いて出てこない。
普通ならそこに有り得る嫌悪感が、そっちの方がよっぽど嘘だろうと言うくらいに綺麗に出てこないわけ。
キャラ達はある意味狂っているし、それでいて日常と確かにつながった部分を持つ、まともな人間でもあり…。
ひとつも狂いのない正道を歩む人間はいないのだと、恐ろしさと共に安堵を知らされる一瞬。
…なんだ、この作風??不思議でしょうがないんだけど。
恐らく、見切れないどこかに、そのグロに目が行くよりも視線をとらえて離さないモチーフがあるんだろうな。
それがどことも言えず、この作品の文字のいろんな所から湧いて出てくるのだとしたら、それこそがホラーだと思った。いつの間にか、読者の知らずに精神の奥底に語りかけてくる無意識の空気。
ただ、感嘆。
怖くない。どこが上手いのかも実は指摘出来ない。ただ、読み終わって、この作者の凄さに長い溜息が出た。
| ホーム |
