『白骨花図鑑』 甘糟幸子
短編集。こういうオチがない話、始まりと終わりがはっきりしない話、つまり日常のひと時を切り取りました的な小説は退屈で好きでないのだが、これは何故か違和感なく進む。
何がいいのか、語るにはきっとまだ私の人生のスキルが足りない。
娯楽でなく、興味でなく、ただ淡々と眺める、人様の切り取られた人生の断片。
この本の見せる風景には、全編に渡り、エロティックさと隠蔽、死の匂いがちらつく。
しかしそれは題にも現れた、骨に象徴される、湿った死体が発する甘い腐臭ではなく、乾いた、無臭に近いものだ。だが骨はもはや土に返るだけ。限りなく無にかえる地点に近づいたポイントに読者は立たされる。
多分、これは艶かしい性と、乾いた死を混ぜ合わせた、誰もが嗅いだ事のあるはずの香水なのだと思った。
目で読み、頭で感じる本ではない。
鼻でかぎ、肌で感じる本なのだ。

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