元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
ニルスのふしぎな旅

 これなんかもうオリジナルアニメ臭を醸し出してるよね??
まぁ原作があるのさえ疑ったわ。
そして奴らが、アヒルかガチョウかカリかガンかわかりませんのん。

 さて、原作ではいとも簡単にニルスは小さくされ、アニメで言うところのモルテン(原作ではガチョウと言われ続けるニルスの家のガチョウ)も容易く感化され灰色ガンの群れについていく。
そんな速攻飛べるんでしたっけ?ガチョウって。(いや、飛べない。)
 それにしても展開が早いのですが、そもそもニルスが妖精を捕まえようとして次に逃がそうとしたのに小さくされたのは、妖精が怖い存在だからなのか、ニルスの腹の中がばれていたからなのかどっちなんだろうなぁ…。
 そしてニルスは家に帰ったら聖書読まされるからと帰りたくないなんて思ってるのね。あら意外。

 原作は何というかやはり原作っぽいなぁという、決してアニメの主人公少年の話じゃないんだよね。
他の野鳥の話にニルスがちょろっと出てきたり、割といたずら小僧という印象はすぐに薄れてて、冒険中ニルスは勇敢で人の役に立とうという事ばかりでした。
 ラストの『ガチョウが食卓に乗る時にニルスが人間に戻る』はなんとなく思い出せたけど、まぁまぁ、これですっきりしたわ。
ニルスの家がめちゃくちゃ貧乏とか、ニルスは帰りたくなかったんだとか、その気持ちとか。
 ラストなんてもはや話が出来なくなったガンの群れとのお別れ、ちょっとしんみりしちゃった。
しかしニルスの成長が垣間見れる、良い童話でした。
ピノッキオの冒険

 えー、いざよく知らない物語を読むの巻。

 おじいさんと女神とコオロギと、あと意地悪する狐と狸??(樫の木モックってなんだっけ…。)
的な多分歪曲された情報しか浮かんできません。結構原作はエグイはず。

 まず何が今後の展開を予想させられるかって、木材の状態ですでに人間に乱暴してるもん。(あ、その頃から動けるのか。)
おまけに大工が木材をおじいさんに譲るところも、大工とおじいさんのまぁ口汚い暴力付きの罵り合いと来たら…。
この話、出てくる人物が女神以外基本的にクソ。
だめだ…シニカルすぎるよ。スラップスティックのつもりなのか、しかし実際に痛いんだ。
 何よりおじいさんはまだ人情厚いが、これをことごとく裏切るピノキオがひどすぎてもう。
何度「おいっ?!」って突っ込んだか。
悪行がとどまることを知りません。
(なお、コオロギは初登場、即ピノキオに潰されて死んだという驚きの事実。)

 おかげで最後までピノキオに同情や共感を乗せる事が出来ず、いいから早く『めでたしめでたし』のラストにたどり着いてくれとそれだけを考えていた読書です。
これ…何を教訓にした物語なんだろう。
勝手してるとこうなるよ、とか人を疑うことを知らないやつはバカ、とか??
アリスはどこへ行った?

 不思議の国のアリス本なわけですが、一味違う。
これはアリスを追いかけた別の友人目線での物語なのです。
 面白そうな…と思ったら、この人、『ウィキッド』書いた人なんだ!へぇー、それはさぞかし面白いスピンオフ、はたまたサイドストーリーを―と読んでみました。

 うん、まぁ、一人の少女の確実に一歩成長した物語です。が、途中がやはり不思議の国のアリス調なので言葉遊びが多いし、会話の丁々発止もやはり海外。イマイチ入り込めず。
うーん、設定と言い、絶対面白いんだけどなぁ。作品のカラーとして馴染めないか。
 残念ながら流し読みに終わる。感性に合わなかったのが勿体ない切り口のお話でした。
モンスターズ・インク

 …見た事ないんだよね。それで本で手を出すどう考えてもおかしな入り方。
いやぁ、DVDを見たいとまでは考えてなくてさ。

 で、薄いし読んでみるかぁ…とさらっと読んだわけだけど。
そうか、うん、見た事ないのに知っているあらすじだけで本当にその通り、以上、なお話でした。
 ―あれぇぇぇ??本気で、これだけ?こんな話だったんだ!な展開が一つもなかった。
紛れ込んできた人間の子供を返すぞ、ハートフルストーリー。全ての展開が予想が付いちゃって、定番まっしぐら。
ううむ…本で読んでも意味がない作品だったか。
しかしこれは、映像で観ても多分心掴まれる事なく終わるだろうな。
 とりあえず読了。
アゴールニンズ

 『図書室の魔法』作者繋がり―なんだけど『図書室の魔法』が私の射程距離外の作品なのに割と読めたのはともかくとして、普通なら追いかける作風じゃないんです。
所が、この『アゴールニンズ』だけは別。
と ある貴族の令嬢の父が死に、偉大なる父の権力を受け継ぐのは誰か?と葬式の席でトラブル発生。
一人の男がルールを破って故人の力を決められた以上にぶん獲った―?!
令嬢はこの争いに巻き込まれて行くのです。
 繰り広げられる遺産争い、政略結婚…と、華麗なる一族ロマンスが期待されるお話なのですが、何そのハーレクイン?
私が食いつく要素があるとしたらファンタジー的に、故人の遺体を食べた分だけ力が継承されると言う所か。

 気持ち悪いとお思いか?
実はこれ、ドラゴンの話なんです。
いや、だから、登場人物が全部、ドラゴン。
 ―気になるよね、手に取るよね、読むよね?!
ああ、だから食べちゃうよイベントなのか。ちょっと納得。
 この毛色の違いが『図書室の魔法』と違いすぎて恐ろしいんですが、これがデビュー作だそうで。
(このジャンルの違いはどうしたんだ、作者。他にも既刊があるようですが、今の作風が実際どんなものかは調べてないので知らない。)

 しかし読んでみるとこれが…おもしろい!
えー、良い意味で裏切ってくれるなぁ、この人本当に。
 『図書室の魔法』は感傷絡みが細かいんですが、こちらはその世界観が実に細かく良く出来ている。
ドラゴンに限りませんが、この世界以外の文化生活等が上手く決まっている。
 ドラゴンの遺体を食べた時だけ力と体の大きさが増える。
社会的、肉体的弱者は時に生きながら権力者に食われても当たり前。
年頃の娘は婚姻色で色が変わる。(不貞や出産経験が解る。)
身分や思想で翼は紐で縛られる。
 ここら辺があるだけでストーリーに引き締まり感が出て、人間ではありえない話の転がり方をします。
ああこれは確かにドラゴンでしかありえない物語、ロマンス、厄介事―。
 このアイデアは作者の緻密な筆致の力が『常ならざる異世界』を構築して魅せるには十分すぎる効果がありました。
弱気双子の姉妹令嬢が、兄や姉、義理兄、社交界のしがらみや政略とどう渡り合って困難を潜り抜けていくのかが楽しみで止まらず、一気に読んでしまいました。
 そして完全なるファンタジーかと言うと、英国ビクトリア調時代の封建社会を模しており、奴隷制度や宗教的タブーなどを織り込んでそれをはねつける皮肉さも兼ね備えています。
ドラゴンの娘たちの新しい女性っぷりはなかなか見事なものです。

 一味も二味も違う作風。
久々にファンタジーの当たり本でした。