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元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
閉じた本

 あらすじを聞いた時に『ミザリー』かと思った。
 えーと、盲目になった小説家の元に青年助手が雇われたんだけど、どうも青年の動きが怪しい…と言うお話。
タイトルの妙にもやられたし、どういう展開かが気になって読んでみる。
 しかし最初の扉に書かれていた一文が、読み方によってはどんでん返しがお約束通り、みたいにも読めてまさかな、となる。

 そしていわゆるラストに向かうわけですが、えーと、想像通りやっぱりミザリーやん、過去の憎悪とか後出しすぎるしフェアじゃないなぁ~―と言う中からの、もう一丁どんでん返し。
 ―これだ、これがないと、ここで終わってたら駄作すぎると本当のラストに期待する。
のだが、…あー…まぁ、そんなに驚きがないというか。

 閉じた本、いやこの場合は原題の方がしっくりくるんだろうか?
 結局殺された盲目の小説家は字が書けましたってオチなんだけど、私は最初、盲目の小説家がインクなしで字を書いていて、青年から見たら真っ白なノートだから気が付かなかった、これぞ『閉じられた本』!と言うオチかと思いきや、普通にインクで書いてあって…。
 えー…単にこの日記が見つからなかったってだけ??え?と大層がっかりのオチ。

 途中、青年が明らかな嘘を盲目の小説家に世間のニュースや風景として教えるあたりはまだワクワクしたんだがなぁ。著作を奪うとか、別の世界を教え込んで何か企んでる、とか。
 ちょっとありきたりのお話で終わった気がします。残念。
七人目の陪審員

 ディドロって、名前だけ聞いた事あるなぁ…これは法廷ミステリ。ややこしいのは苦手なんだけど、興味引かれたのは、陪審員になってしまったのが、実は真犯人って所。
訴えられているのは完全に無実の人で、真犯人である自分こそがその事実を知る唯一の第三者という事になる。
 これで偉いのは真犯人である主人公は、とりあえずその人の冤罪は晴らそうとするのね。
これは面白そう。

 時代設定がどうもちょっと古い&片田舎と言う感じで想像していたのとは違うんだけど、それ故に閉鎖的で、主人公は冤罪を晴らす―と言うよりは自分が陪審員になって嘘を付くのが嫌みたいなのね。他の人がその人をどうしようともそこまでは拘らない…感じかなぁ?
 と言うのもやはり宗教的な意味合いもあるのか、陪審員は『神に誓って』と言う宣誓をする必要があって、主人公もまた、一人の子羊であるわけで―。
 元々主人公は周囲から気の良い、善人だと思われている。また奥さんは自分の(片田舎での)血筋に誇りを持っていて、夫が陪審員に相応しく、自分はその妻である!と言う事態に誇らしさでテンション上がりまくり。
陪審員を何とか避けようとしている夫を、叱咤激励して彼を追い詰めます。
 自分を尊敬しまくっている末娘とちょっと小生意気な息子、それに自分が殺してしまった女に近い様な年齢の長女と、3人の子供の手前もあって、まさか名誉ある陪審員を辞退するなど出来ず―。
 果ては知人の医者に「病気と言う診断書を書いてくれないか」と頼んだら「お前ともあろうものが偽りを!」と怒られ、むしろ男らしく陪審員をやれとどんどん追い込まれる。
この片田舎ではそれくらいに名誉ある、名士に相応しい栄光なんですね。(主人公はしがない薬局屋を営んでいるだけなのですが。)
 それでも画策してようやく陪審員(補欠)にまで。まぁしかしストーリー上、なっちゃいますわな。

 内情観ている内にやはりクズだったのは、自分は罪を犯してないと言う意識そのもの。
神の前で従順な自分。そもそも女を殺したのは(一時の劣情と言うかもう戻らない若く甘い日々にふらついたというか)女が誘ったんだ位のもの。(宗教的に何故か女が悪魔のささやきをする側だと言う身勝手な解釈が多いよね。腹立たしい。)
 まぁ確かに主人公は未遂だったし、本当にふらついた感じだったけど、女に非はほぼない状況。
単に自分が神の宣誓の上、嘘を付きたくないと言う本当にそれひとつの理由でした。
 さんざん警察に密告電話したり、怪文書送ったりもとにかく容疑者が解放され裁判なんて行らなければいいと言う発想から。
 同じく宗教観に凝り固まっているのは周囲もすべてで、この片田舎で殺人事件なんて前代未聞。だからこそ裁判はこの町で行われ、自分たちで誇りをもって罪人を裁くべし!ともう断罪裁判まっしぐら。
主人公の苦悩もそっちのけで他の陪審員全員『死刑派』くらいの勢い。
 皆罪を裁く自分たち、嘘を付かない自分、正しい自分と、神に愛された子羊である事に夢中なのが非常に気持ち悪い感じです。

 最終的には主人公がなんとかかんとか(失望したと言われながらも)容疑者を無罪に持っていくんだけど、どうしてどうして、物語は終わらない。
 ここからが真に空しいと言うか、容疑者はかなり無茶で強引に、自分を無罪に持っていった主人公に、変に期待をしてしまいます。
 「無罪になったからと言って人々は俺を罪人だと思う。あれだけの事が出来るあんたなら真犯人を捕まえられるだろう、頼む」と。
こうなっては主人公も困り果てて、自首するつもりはなかったんだけど、結局「もういい!自白する!」と自暴自棄に。
しかし常日頃の気の良さが災いして、『ああ、無罪にした男が苦悩しているのが可哀想で身代わりになろうとしているんだな』と取られる始末。
 果ては容疑者に「自分がやったんだ」と詰め寄るもやはり「真犯人を見つけてくれと頼んだけど、見つからないからと言ってあんたに身代わりをしてほしいわけじゃない」と俺はそんな卑怯者じゃない状態の容疑者が自殺しようとする。
揉みあう内に今度こそ男は容疑者を銃で撃ち殺してしまう―。
 これで本当に殺人者ENDかと思いきや、どっこい容疑者は『やっぱり犯人だったから悔いて拳銃自殺したんだ』と処理されて終わる。
 怖っわ…。と言うか、虚しさと言うかこの皮肉さはどうよ。
お国柄だよなぁ…。
宗教的かつシニカルで。

 結局登場人物全員(名も無き人々まで)が敬虔な子羊であることに酔ってるお話でした。
共感は出来ないけど、めちゃくちゃ上手いネタだなぁ、と。
ジョイランド

 久しぶり過ぎるスティーブン・キング。
しばらく海外作家は遠ざかっていたからなぁ…。まぁ安定の一冊でしょう。
 タイトルは遊園地の名前。そこで起きる連続殺人―と。
 ただ、どうもこれ、主人公である青年の感傷的な青春の1ページと言う感じで、そもそもこの話が回想なのね。大人(初老?)の主人公が思い出してる風で、最初から主人公は生き残ると解っているし、いや、そもそもこれ、ホラーじゃないっぽいわ。
勝手にキングだからホラーだろうと思ってたら『スタンド・バイ・ミー』方面だったか。…ミスった…。
(ところで『スタンド・バイ・ミー』の説明で『非ホラー』と書かれているのが笑えた。)

 まぁたまにはいいかと読んでみたら、あー、なるほど、キングはこっちでも売れたの当然だなと言う巧みさ。
青年の失恋と、遊園地でのバイト、車椅子の少年や幽霊の逸話―。
 ひと夏を舞台にした成長物語なんですけど、痛みや切なさがにじみ出ていて、スパイスに殺人事件の犯人探しがある感じかな。
ちょっとした不思議体験程度の幽霊の存在もあったかいものだった。
 ストーリー展開は説明しても面白くは聞こえないんだけど、主人公の心の機微で読む本。
たまには、いい。
お楽しみが一杯!

 ユーモアで作られたミステリーの数々。
翻訳物なので期待してなかったんですが、これがどうしてなかなか、雰囲気の良い文章でした。
短編集なので読み易いと言うのもあるんですが、テンポや言い回しなどもひと役買っていると思います。
 また、元々のネタやオチもこなれたまとまり感があるし、毎回手を変え品を変えは凄いなと思う。
ミステリーなんて、短編で作れば作る程ネタの消費が早かろうに…。(まぁ長編に足りないネタと言うものかもしれませんが。)
 楽しく読めました。
世界ミステリ全集 15

 モンティエ著の『かまきり』を読んでみたくて。
ううむ、しかし一度通りで読んでみたけど、いまいち面白さが解らず。

 内容的には保険金殺人を企む妻は、わざと若い女子学生を教授である夫に近づけさせ、不倫をさせる。
さらに妻の愛人である男をその女子学生に求婚させ、なんやかんやで2人は結婚。
そこから仕組んだ上で夫と女子学生をまとめて殺して遺産生活…を目論んでいる。
 最初からこの目線で進んでいるわけではなく、女子学生目線が序盤のメインなので、いきなり凄い状況だなと読み進めていくのですが、最終的には何というか、この妻と女子学生に妙な繋がりが出来てしまい、どいつもこいつも結局幸せには終わらない話なわけです。この場合のタイトルの『かまきり』はメスの養分になるオスのイメージなのか、金は手に入れたもののほとんど意味がなかった妻に対する自滅的な意味合いを込めているのか、謎。

 短い段落で主点が目まぐるしく変わるし、終盤手紙のやり取りなので、今までのリズムと違い、どうもスムーズには読めませんでした。合わないな。