元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
怪しい商品を買ってみました

 商品に限らず、体験も含む、かな。
 びびったのは乱交パーティーに参加してみた、とかあるところ。…やってるんだ、てか、参加しようと思って参加出来るんだ…。
 他、中古車を買ったら、とか破産手続きをしてみたら、とか普通…いや、あんまり普通しないような事わんさかだな。そこは面白いんだけど、あんまり『怪しい商品』ってのがなくて残念。
 変わった事してみました本かと。
空へ 悪夢のエヴェレスト1996年5月10日

 ノンフィクションのエベレスト登山隊の話です。言ってしまうと、ただ一人の生き残りが書いた遭難の記録…ですね。ただ唯一の生き残りが報道者枠の一人だったせいか、まぁ見事な分厚い本に。
 そして初っ端から度肝を抜かれる登場人物の多さ…。
(まぁサポートチームや他の登山隊の人たちも出てくるので、これが小説だったらありえないくらいにずらりと名前が書かれている。いきなり覚えるのを放棄しました。)
 これ、話を把握出来るのか?と思いましたが、まぁ視点は著者視点ですので、話の流れは解ります。

 この様に一人だけの生き残り―となると相当暗そうな話かと思ったのですが、本人の悔恨はもちろんあるとして、一方で他の人の事をえらいズバズバと欠点も上げ連ねたり、また後となって失策だった事を指摘してみたり、居ない人の事を推測で書いてみたりがあるので、ちょっともやっとする。
これ自体は著者本人や遺族からの抗議の手紙なんかではっきりと書かれているんだけど、こうして伝聞って残っていくんだなぁ…と。
死人に口なしと言うのがどうも。
 勿論この著者は別に誰を貶めるためでもなく、自分自身も地獄を味わって傷ついて、だからこそ誰よりもこの体験談を語る意義を持った人もでもあるし、高所の酸欠状態、或いは心配して気が気じゃない登場人物ら皆が『正常な状態じゃない』上で判断した言動を記憶で書き留めたところで、誰もが納得する話を語れるわけじゃない。
そもそも事実自体、納得しようがしまいがただあるだけの存在だし。
 忌憚なく書いている部分に、死人に鞭打たない気質の人間は眉を顰めることもあるだろうが、『真相を語る!』的な話ではなく、自らが死の境界線を漂った『記憶』の話としてとれば、往々にしてこんな感じになると思う。
個人の視点は神の視点じゃないもんね…。
 何よりも書く事で自らを癒したいという気持ちが痛ましい。書く事で多くの励ましは得られるが、少なからずの批判と言う更なる痛みも混じるというのに、よくぞ書いたというのが、この人のジャーナリズム魂なのかもしれないね。

 どうしても話の内容はくどかったり解りづらかったりする部分はあるのだけど、当時の混乱と困惑、まだ息をしている仲間を置き去りにせざる得ない苦しみ、極限の人の心理を見せつけられる話でした。
ぐるぐる♡博物館

 博物館というネタだけでも面白いのに、それをしをんさんが書くとかどう考えても鉄壁です。
私も博物館サーチなどをブクマしてる口なので、楽しく読んで、興味あった博物館の内部を垣間見れてご満悦。
迫る質問も奇抜であれば、応える方も予想を凌駕した語りで返すという、マニアがアカデミックになるとこんな感じかという―あれ、なんか博物館本に対しての感想じゃないな、これ??
 と、言うくらいに博物館スタッフの皆さんの『好き、それ以外に理由要るの?』なテーマと意気込みと対象物愛溢れる博物館の本でした。
 しかしこうして語られると、小さい頃から博物館や美術館の類が大好きだった私も、この手のジャンル愛に昔から惹かれてるんだなぁとしみじみ振り返っちゃったわ。
展示物を見る目がさらに愛おしくなりそうです。
ミッドナイト・アサシン アメリカ犯罪史上初の未解決連続殺人事件

 あー、未解決事件って惹かれるよね、と思いながら、しまった、私はきちんと事件の謎が解かれなきゃすっきりしないタイプだったと読みだしてから気が付いた。
書いてるよねー、書いてる。未解決ってばっちり書いてる。
当時未解決だった、今の捜査力で判明した、とかいう素晴らしい展開はないものか。

 この事件、全く知らないんですが、切り裂きジャック以前、むしろこいつがロンドンに渡って同手口を繰り返したのでは?と言われているらしい。
(読んでみるとなんかタイプ違う気がするんだけどね。)
 それくらいに残忍と言うか、スマートさに欠ける。
凶器は斧だし、寝込みを襲っては引きずり出しってて、滅多撃ち。
 最初は黒人女性ばかり狙ってたせいか、黒人男性の仕業と考えられていた。ところがどうも白人らしい事がわかり、ついには白人女性にも魔の手が。(子供にまで手を出すのがなぁ。)
 この内何件が模倣犯、あるいは同一犯と思われた似た手口なのかは分かりませんが、似てる事件もあれば違うなぁという気になるものもある。
 そして当時の捜査力だから『疑わしきものは片っ端から』捕まえて尋問、取り調べる側も乱暴です。

 ドラマのような本―というわけではないので事実の羅列のみですが、しかしよくここまで一連の事件の詳細や流れを調べたものだと感心します。
著者自身の推理が入っていたらなお面白そうだなぁ。
 殺人事件だけでなく、当時の黒人や白人の扱いや文化も分かる世相本とも言えます。
Because I am a Girl わたしは女の子だから

 角田光代さんかぁ、翻訳するんだ。なんとなくイメージだけで合わなさそうと手にした事はなかったけど、この本の冒頭で述べる彼女の思いはすごく自分に近しいものがあった。
 女性、女の子への差別。知ること自体に一種の恐れがあって、そもそも寄付をしたってちゃんと彼女らの手元に届き正しく使われているの?と言う疑問。
彼女はそれらを乗り越えて書く事で見事にこの問題に対峙したのね。この最初の一歩が難しい。
 私もようやく本などで目を向ける所にまで来たけど、遠巻きで直視もせず言葉尻だけで差別反対と言っているのがどれだけお気楽な話か思い知らされる事ばかり。
(とは言え人生は有限で社会には色々な問題もあり、一人の人間として生きていく土台がまず必要で―と抱え込む必要はないわけですが。)

 ここに出てくる女の子たちは、即戦力となる男にかける経済的投資の陰で、その身を軽んじられ、教育を施されず、怒りを知る事すら出来なかった子たちです。
ひどい話でレイプだの、女性割礼だの、身売り、これらが蔓延している。
(割礼については文化的なものもあるから踏み込む難しさの話もあり、ここら辺も角田さんの考えには共感。まぁ、理由が男性のものと違い、男性のためにあるような話だからひどいんだが…。)

 さて、しかしその中身なのですが…。
直接経験した女の子たちが書いたわけでなく、更には特に体験談と言うのではなく、取材をして感じたままを作品にしても良いし、自伝にしてもいいし、と各取材者たちに任せた短編集。
 うーん、その人たちがまた外国のジャーナリストだから表現や書き方に癖があるというか、ちょっと凝り気味の作品はイマイチよく理解出来なかったな。ラストの作品が、フィクション気味にも見えたが一番きちんと読めたくらい。
取材、作品、翻訳とこれだけフィルターが通ると伝わるものも伝わりにくいのかもしれない。
 前書きの角田さんの話が一番グッとくると言うちょっと皮肉な結果に。
 しかし端々に表された色んなエピソードは酷いの他言い様がない女の子差別でした。大人になっても連鎖は続きます。