元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
Because I am a Girl わたしは女の子だから

 角田光代さんかぁ、翻訳するんだ。なんとなくイメージだけで合わなさそうと手にした事はなかったけど、この本の冒頭で述べる彼女の思いはすごく自分に近しいものがあった。
 女性、女の子への差別。知ること自体に一種の恐れがあって、そもそも寄付をしたってちゃんと彼女らの手元に届き正しく使われているの?と言う疑問。
彼女はそれらを乗り越えて書く事で見事にこの問題に対峙したのね。この最初の一歩が難しい。
 私もようやく本などで目を向ける所にまで来たけど、遠巻きで直視もせず言葉尻だけで差別反対と言っているのがどれだけお気楽な話か思い知らされる事ばかり。
(とは言え人生は有限で社会には色々な問題もあり、一人の人間として生きていく土台がまず必要で―と抱え込む必要はないわけですが。)

 ここに出てくる女の子たちは、即戦力となる男にかける経済的投資の陰で、その身を軽んじられ、教育を施されず、怒りを知る事すら出来なかった子たちです。
ひどい話でレイプだの、女性割礼だの、身売り、これらが蔓延している。
(割礼については文化的なものもあるから踏み込む難しさの話もあり、ここら辺も角田さんの考えには共感。まぁ、理由が男性のものと違い、男性のためにあるような話だからひどいんだが…。)

 さて、しかしその中身なのですが…。
直接経験した女の子たちが書いたわけでなく、更には特に体験談と言うのではなく、取材をして感じたままを作品にしても良いし、自伝にしてもいいし、と各取材者たちに任せた短編集。
 うーん、その人たちがまた外国のジャーナリストだから表現や書き方に癖があるというか、ちょっと凝り気味の作品はイマイチよく理解出来なかったな。ラストの作品が、フィクション気味にも見えたが一番きちんと読めたくらい。
取材、作品、翻訳とこれだけフィルターが通ると伝わるものも伝わりにくいのかもしれない。
 前書きの角田さんの話が一番グッとくると言うちょっと皮肉な結果に。
 しかし端々に表された色んなエピソードは酷いの他言い様がない女の子差別でした。大人になっても連鎖は続きます。
虐待と微笑(ほほえみ) 裏切られた兵士たちの戦争

 かなり衝撃的な扉で、全裸で積み重ねられた人間の山と、満面の笑みで記念撮影をする兵士―しかも女性までというもの。
これで『どういうコト?!』と読まざる得なくなりました。
 …イラク戦争で、アメリカ兵が捕虜の人権を踏みにじりまくったと言う事実があったようです。…うわぁ…。
 皮肉なもんで、こういう構図だとどうしても『白人至上主義』『正義は我にあり相手は悪魔』『だから何をしても自分は許される』と言った慢心の狂気を感じてしまいます。
もしこれが逆の人種だったら、あるいは同種だったら等、都度違うものを感じ取るでしょう。それが自分の根底にある各人種のステレオタイプなので、それを感じただけでもこの写真も、戦争も、人間も、自分も、まとめて愚かで恐ろしいわ。

 さて、肝心の本の中身です。
 やった当の本人たちは、ちょっとふざけただけ。彼氏に言われたから。だの、なんでこれが問題になるの?と言った態。(判決出た後でさえもこの言葉が出るのがすごいわ。)もう、脱力。
 果ては周囲も戦争に行ったからあそこではおかしくなって当然だの、あそこで公然と行われていた事を下級兵士にだけ罪を擦り付けた、彼らは被害者だの…。
 いや、事実軍の上層部はそういう逃げ方したんでしょうけど、だから自分は悪くないんだって事になるわけないでしょうが。
問題のすり替えも甚だしい。
 実際この告発をしたのは同じ兵士の一人です。彼が見ておかしい、これは虐待だ、あるまじき事だと感じ行動した事実はどうなのよ、と。
 可哀想に彼は、むしろ仲間を裏切った扱いなんだそうです。どうなってるの?同族意識が正義に勝るの?
 何と言うか、ごちゃごちゃ言い訳してる連中には、人の事をあげつらう前に自分の禊をしろよと思う。
「あいつもやってるじゃん!」とかいう見苦しいガキの言い訳か、感情吐き出してるだけ。

 まぁ本の中にはもう少し本人たちの葛藤が詳しく書いてありますが、端々のふてぶてしさにどうも共感出来ないわ。
「新聞に顔写真が載ったから、今でも20代の頃にした悪ふざけの事で頭のおかしいやつに襲われかねないのよ」なんて本音だとしてもよく言える。
 やった方の地獄も見える事が良いとも悪いとも言える内容。
もしこれで虐待されていた側のインタビューとか話が聞けていれば完璧なドキュメンタリー本だと思いました。
わたしはこうして執事になった

 『おだまり、ローズ』の人が同僚の執事たちにその人生を聞いた本。形式を短編で自分史の様にしているのでハマりやすいです。
 中でも最初に登場した時に執事オブ執事の初老の執事さんは皆に凄腕と評されていたのでその人生に興味津々でした。
…意外と自分で語る人生は決して順風満帆でなく、悪さもするような茶目っ気もあったのね。
うーん、面白い。
 どの人たちも揃って持っている『ご主人様と奉公人』のポリシーは、奴隷根性と揶揄される様な卑屈なものでなく、『それぞれの責任を果たす』と言う役割と自負に満ちていて素敵でした。
 やるべき事をしない主人は批判するし、気に入らなければ去るまで。主人は主人で有能な使用人たちは手離し難いのですね。
 皆、幾度もお屋敷を変えては色んなご主人に仕えており、貴族や金持ちの庶民、それぞれの家風にまるで違う生活。
大体の使用人たちは、貴族の方が『役割』を教育されているからやりやすいし、共に高貴な雰囲気に浸れて良いと思っていたようです。成程、成金的な庶民は人を使う側としてのスキルに不足があるか。
そしてケチは往々にして皆から嫌われるようです。

 登場する執事たちは5人ですが、どれも似たり寄ったりになりそうなはずなのに、性格も環境も違って興味深い本でした。
諸所に表れるアスター家の人物たちのエピソードが色んな角度から見たものなのも面白い。
分厚いけどそれだけに読み応えのある一冊です。
教師宮沢賢治のしごと

 宮沢賢治って教師だったんだ?
作品ばかりで作者本人の事を何も知りません。興味を引き読んでみる。
 ははぁ、この人、農学校の教師だったのか。
でも家では高等教育まで受けさせていて、エリートな所も持ち合わせている。
けど本人は朴訥と言うか、理論よりも実践的な教え方でいつも微笑んで見えて、授業も自由にバラエティに富んでいた。
 あー、なんかイメージに合うわ。
生徒からの人望も厚かったようです。
 他にも凄く仲の良かった妹が居たとか、当時の生徒からの話も交えて進んでいきます。
 しかし流石と言うか、皆の記憶にしっかりと刻まれているっていうのが凄いよね。他の先生なんてほとんど記憶されていないのに。(たまにいても教科書通りだとか、散々な言われ様でちょっと気の毒…。)

 後半に行くにつれ、段々と賛美の度合いが激しくなり、ちょっと神聖視し過ぎかなぁと言うきらいはあるものの、おおむね賢治の新しい一面を垣間見れた興味深い読書となりました。
知られざる素顔のパキスタン 日本人ビジネスマン奮戦記

 孤児、社会的弱者、海外の治安から来て次はこの本に。読書の横道をひたすら分け入ってます。
中々知らない国の文化や生活を身近に感じられそうなタイトルです。

 サブタイトルのせいで軽く見られそうだけど、中身は結構文化や考え方、問題点などを深く書いた本でした。
教科書や一般的に習う、知るパキスタンと現実のパキスタンの差が明確に著者(と言っても二人で担当分けてるのかな?経験者と文筆者と。)の目線で正されていて、カースト制がないとされてるけど実際はあるようなもんだとか、子供の扱われ方とか、現地で『住んで』『混ざって』いかないと感じられない事柄の話が貴重かな、と。
 さらっと読了。