FC2ブログ
  
元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
パーマネント神喜劇

 万城目さんの。普段チェックしてないから忘れた頃にきてうわー、となる。
今回のは短め。短編連作で読みやすい。
『バベル~』と絡んだ場面も出てくるんだけど、あれよりずーっと単純で解りやすい本作。
 で、パーマネントって髪のパーマしか思いつかないんだけど実は『永遠』って意味なのね。
そう訳すと、なるほどと言う神様の物語。

 神社の神様だけど、担当や引継ぎだの実績だの、会社的な枠組みの中で行われる縁結びや願いの成就。
面白いのは後で記憶が消えるんだけど、願いを聞く時と叶った後、神様は人間と会話するところ。
 まぁ、全体としては神様のお役所仕事よりも人間側の悲喜こもごもの方が人生かかってるので面白いわけで、主役(または語り手、狂言回し)側のパートよりも面白いんだけど。あっさりしたスピードでとんとんと成就するのもご愛敬。
 神様側の話は話でちゃんと連続していて、ラストはほっこり大団円。
いやー、軽く読めました。
ヒーローズ(株)!!! [正]

 タイトルから溢れるわくわく感。
プロローグがなかなか衝撃的で、不良に絡まれて怖いなぁ、そりゃ無難に逃げるよねとか思っていたところに小学生の交通事故、一転、あの不良が泣きながら小学生を助けていて、物の善悪、人柄ってなんだ?と思わせてからの暗転―。
 始終、個々の辛い過去と、それを乗り越えてちょっとでも誰かを助けようと言う、人情ストーリーでした。
は~、コメディっぽく思ってたら違うのね。

 主人公はさえない毎日を送っているフリーターで、田舎からはもうすぐ寿命を迎えそうなお祖父ちゃんのため、一度帰って来いと言う母親の矢の催促。
でも会社を辞めちゃってて、故郷に錦を飾れるわけでもなく、先延ばしの毎日。
 そんな彼が、風変わりな新しいバイトを開始する。
それがヒーローズ㈱。
自分がヒーローになるのではなく、誰かがヒーローになるのを助ける会社。
 コンセプトが素敵。
 何よりもそのヒーローと言う観念が大事で、アニメみたいなヒーローでなくて良く、誰かにとってのヒーローであるならば、世間に夢を与える漫画を描く漫画家でも、期待の女優でも、とにかく何でも構わない。
全力でそのヒーロー像を助けるなんでも会社。
 実際主人公はスランプの漫画家に続きを書かせるためのお手伝いをやらされる。
バイトの最期の日には、その漫画家から感謝され、似顔絵を送られるのだが、それが本当に嬉しくて、とうとう主人公はこの会社の正社員を目指す事に―。
 かなりの人生エールストーリーでしょ?

 まぁ正直、リアルに近いと言うか、悪く言えば一つ一つの事件は地味。
 ただ、出てくるキャラの過去とか、乗り越え方とかがひとつひとつ掘り下げがきちんとしていて、解決の仕方もたまたま上手く行ったパターンばかりなのだけど、その分嫌な気分にならず、皆頑張っているんだなぁと思えるのが良い。
(しかし私なら美容師さんの過去話は、そんなの相手は自業自得だと思うんだが、自分も悪かったなんて思える美容師さんはお人好しと言うか、釈然としない。これが和解しそうだからちょっと優しい世界過ぎる気がした。)
 ちょっとまだ全体的に固いと言うかバランスの取れてない感じに映る作品なのですが、青春映画風にパワフルに撮れそうなお話だなと思いました。
検索刑事

 てっきり検索で事件を解決する刑事なのかと思いきや、脅迫状で『6か月以内に検索一位を取れ』と言う流れでした。…なるほど。
そのキーワードは『羽毛布団』。
またなんでこんな詐欺の様な単語なのか…。
 サイトをかじっていた頃を思い出す話で、流れは大体わかりますが、相変わらず指南書なのに小説と言う面白い構成です。
この本、ちょっと字が大きくてただでさえ文庫で薄い本なので、あっという間に読み終えちゃうのが難点と言えば難点。すぐ軽く読みたい時には最適ですが。
 しかしまぁ、手打ちでサイトを作っていた時代からSEOも変わった物です。
これをかいくぐって1位を取るなんて確かに至難の業。
その分犯人の意図とか目的、かなりめちゃくちゃですが、まぁ単純にSEOの話として面白く読めた。
 このシリーズ本当に、油断ならないハウトゥ本だと思う。
暗幕のゲルニカ

 ピカソのゲルニカを展示会開催のために何としても借り出したいサーキュレーターのお話。
主人公は日本人女性で、日本の作家でアートミステリーと言うのが珍しいなぁ…。
どうしてもこういうのは西欧系に多そうな題材なので、最初は違和感ありまくりで読み進めました。
 印象が、軽い。
扱うのがあのゲルニカにも拘らず印象が薄いのです。
 ただし主人公、及びゲルニカを取り巻く環境はテロや戦争、その死と得も言われぬ鮮烈な太陽のような光、パワーに彩られていて、お話が進むに連れ惹きこまれて行きます。
 架空の人物の元で、実際のピカソの当時の背景や周囲の人物との関係を、愛人であるドラから語る昔のパートと、主人公の現代パートに分かれていて、ドラマティックにしすぎな嫌いはあるのですが、シーンのひとつひとつ、及びそれぞれの女性の心情や決意、前に向かう強さが物語に推進力を与えていく―。

 ゲルニカに付いてはあの得体の知れないパワーが詰まった絵ですし、十分に歴史的背景を考えた上でそれを制作したピカソの人物像も、この過去パートで見るにつけ、確かに天才であり、同時に芸術に魂を捧げるが故の人としての横暴さ。それでも魅力的であり続ける彼は確かにドラが惚れるほどの格好良さがある。しかし後半に向かうにつれ、結局男として気ままに女性を愛するせいでドラの醒め方、いや、諦め方と比例して嫌な部分を見せるのだけど、それが却って読ませ方として上手い。
 天才も結局単なる浮気者としての俗物に見える瞬間のこの落差がなぁ。ドラと言うプライドの高い女の生き方も愚かでありながら愛に生きやはり女臭さもたっぷり。
 芸術と言う崇高なテーマに、俗っぽさの対比と言い、生と死、過去と現在(と未来)と、この作品にはひたすら真逆のモチーフが映し出されているようです。
 その最たるがゲルニカの白と黒のモノクロの世界であり、世界観の微に入り細に入り徹底したイメージが、植え付けられます。

 一方現代パートの主人公の方にも同じように一本気な愛があるのだけど、こちらは亡くなった夫に対してのものなので、泥臭さはない。代わりにやはり絵の貸し出しへの駆け引き(まぁ実際彼女は想いこそ強く弁もたつものの、無力さ故振り回されてばかりだと思うのですが)が見所と言った所。
寧ろ脇の権力ある人たちの動きの方が直接的に面白くはあります。

 最終的にゲルニカのとてもじゃないが無理過ぎる貸出し希望、どう解決するのか、ラストは一瞬ん?となるのだけど、スパッと蛇足無しに終わります。
 唯一現代パートのテロ妻の扱いだけがうーん、と言う感じなのですが、どこかひとつだけ突出して高評価を受ける話題本とは違って、全体的にバランスシートが高水準の形を描く一冊と言う感じ。
面白かったです。
長生き競争!

 小学生時代のクラスメイト達が老人になり再会。長生きに発破をかけるため、最後に残った一人が総取りの賭け事を取り決める。老人版逆バトルロワイヤルと言ったなかなか面白いネタです。(勿論殺し合いはしません。長生きする方向での戦いです。)
 しかしその掛け金もまた凄くて、上は4400万からと言う、欲に目がくらみそうな金額が集まります。
 ここに、その金を管理する主人公に不穏な女の影が。
孫と言ってもいいような若い娘が、押しかけ女房の如く家に住み着いてしまい、誘惑なのか単に懐いてるのか、主人公に付きまとうのです。
 勿論若い娘が金目当てに老人に近づいてきたと用心されるのですが、果たして一体―?
 
序盤でこういう展開だったので、ああ、成程、面白そうなと思えました。
どういう話で長生き競争するのかも思いつかなかったんですが、そうか、そっちじゃなくてこういうミステリーか。
不穏でハラハラします。
 しかしこの話が進むにつれ、実際に仲間たちは病気だので本当に亡くなっていきます。
うわー、シャレにならん展開です。この酔狂さといたたまれなさが絶妙なんですよ。

 しかし最終的にはこれ、老いのヒューマンドラマでした。良かった、出て来る人たちに悪人はいなかった。
結構最後までミステリーを疑っていたんですが、ラストにはもの悲しさと空虚感と、それでも幸せの中身ってこんな感じなんだろうなぁと言う後を引く感じで。(個人的には爺さん口調氏が亡くなった時の葬儀の方がグッと来た。)
 タイトルやあらすじからちょっとコミカルな感じの内容を想像していたんですけど、むしろリリカルな物語でした。