元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
超高速!参勤交代リターンズ

 てっきりまた違う藩の(あるいは未来の?)話かと思いきや、普通に前回の『超高速!参勤交代』から続いてた。
もう後日も後日、今度は帰り道の話ですよ。
 何とか悪老中を倒したかと思いきや、奴はすぐに復活、復讐を企て、今度は「帰るのに2日以内」、さらには「江戸城天守閣の普請申し付け」まで命じてきました。大殿のいない間に好き勝手です。
行きだけでも奇跡の5日踏破だったのに、2日なんて出来るわけがない。
おまけに普請代は潘に丸投げが基本。貧乏藩に何が出来ると言うのか?
さらにさらに殿の妾の身請け金と、金策にも翻弄される皆。
 とにかくとりあえず帰ろうとまさかの不眠不休でのダッシュ帰路に付くのでしたが―。
…しかし昔の人は歩くし走るとはいえ、凄すぎるな。実際老中に付けられた見張り役は「ついて来れるならついて来い!」とばかりに早々に振り切られます。あ、やっぱりこの人らの足の速さは尋常じゃないんだ…。
 それもこれも大体装備からして金が無く竹光とか偽物だから身軽だったりと言う理由もあったりと、色々素敵に弱点が強みに変わるのがこの話の良い所。
 そして苦労して帰った城には一揆だの何だの、ひたすらに老中の策が張り巡らされているのですが、如何に―。

 今作もスピード感溢れるスカッとする物語でした。すっきりハッピーエンド。
古典落語 6

 若旦那、幇間篇。
 まぁ急いで読んだせいもあるんだけど、なかなか…オチが解らない話が多かった。
くっ、知識が足りない。最後の一言でどう落ちたか解らなかったときの悔しさときたら…。
 比べてみて解るのは、遊郭物の方がはるかにオチが分かり易かったと言う事か。はてさて。

 このテーマで絞る落語本、読み比べるのも悪くなさそうです。
どのテーマだと自分が理解が深く、好ましいのか、探せそう。
くれなゐの紐

 表紙絵が美麗です。
まぁ最初はあらすじで選んだのだけど。

 時は大正、女たちだけのギャング団に、姉を探しにやってきた少年が、女装をして入団。
団長は逆に男装の麗人だわ、女たちは見目麗しくひと癖もふた癖もあるような者ばかりだわ―。
 彼女らは女ならではの方法で、摺りに物売り…と表の世界では生きていけぬ身の悲しさを背負ったまま、過酷な世界を生き抜いているのです。
 もうこの設定だけで耽美な世界を妄想するのですが、一昔前のやたらと大人を意識した芸能界の少女たちを思い浮かべるド迫力。(今の芸能界の幼っぽさとは正反対だね。)
 何せ下は12から、上は21までと言うギャング団で、二十歳そこらでこんな切った張ったの胆の座り様。怖いわぁ…。
 生き急ぐかのようなまさに徒花の乱舞する中、暴力あり、抗争ありと話は進んでいくのですが、女ならではの悲哀がそこかしこに。それでいて普通のヤクザものと同じくらいに熱く、激しく、一人一人の生き様がぶつかり合います。
 自分なりに貫きたいものが、違う者から見れば道理に合わないものだったりと、出て来る女たちの矜持は一人一人違って、また堂々としていて―。

 流される様な添え物の女はこの物語には出てきません。
ただ誰が最後に笑うのか、と言った所でひとり以外は敗者なわけで、一人一人のハッピーエンドは望めません。それどころか勝者すら、決して幸せとは言えない先行きのラストです。強いと思っていた女が弱く、逆も然り―。
 主人公の少年は、姉を追い、女たちの生き方に触れ、どうしたってすべて救えない状況の中、やれる限りを尽くすといった答えを出しました。
彼を主人公とし、姉を追い姉の答えを知りたかったと言うこの本の道筋は、綺麗に締められています。
 ラストの彼は、序盤の頃と比ぶべくもないしっかりと自分の足で立っている姿で、こんなにも闇の中を歩いていながらも清廉なのです。

 読み応えのある一冊。
あんまり見ない気色とジャンルの本だと思います。
超高速!参勤交代

 映画を見逃しましたんで、今更小説の方を。原作か…と言うより、脚本の人が小説を書いたようで、はて、これはどっちが先なのやら??(同時らしい。)

 以前に参勤交代を描いた別の小説を読んで、やはり無理難題な参勤交代をどう成功させるかがテーマだったのですが、そんなジャンルが出来つつあるのか、不思議なネタです。
 あれに比べるとこちらはかなりライトで、コメディ的なもの。
余計な説明はあまりなく、それこそ脚本の様に会話と場面切り替えでポンポンとテンポ良く話が進む。
騒動を予感させる忍者もたくさん出て来るし、基本的には苦悩もあるが、楽観的な幸運も多い。
 あー、なんか確かに映像にしたくなる感じだわ。

 またこの殿が不正許さじ、地味でも貧乏でもいいじゃないと、自ら農民に混じって温泉に入るような好感度の高い領主。周りに担ぎ上げられるよりは自分から『みんな頑張ろう』と参勤交代に体を張っていくスタイルで、これも上手く話が進むと爽快な感じ。
成程、色々と超高速なのね。
 後半に行くにつれ、一人一人のドラマとか、辛い展開が続くんだけど、ピンチの連続をとんとんと乗り越えてラストの気持ち良いハッピーエンドまで、とにかく一気呵成に楽しめる一冊。エンターティメントとして期待通りでした。

 続刊もいっちゃいたいな。そう、あるんですね、これも映画になってます。『超高速!参勤交代リターンズ』。
 この人、お伊勢講とか国替え引っ越しだのマラソンする侍だの、この手のジャンルが得意みたいねぇ…。面白そうだわ。
一路 下

 上巻の中でも、要所要所の侍や人々が、いちいち熱くてぐっとくる彼らの背景とエピソードが多いのですが、下巻でもそれは続きます。
 なんとしてでも予定通り参勤行軍を続けたい主人公と、無理はせず回り道をせよと言う宿場の責任者。
どちらも己が務めに誠意を持った上での意見のぶつかり合いだが、悪しくも殿がその是非を決める事となってします。
これには殿、大弱り。
どちらの者もよくやってくれており、片方を立てると言うわけにはいかない。
 この先、毒見と医者、お殿様同士の克ち合いと決断を迫られるシーン満載で、ここまでくるとお殿様の資質もバレようもの。
やはりこの殿さま、うつけなどではなかった―。
 のほほんとして見せかけながらも、その判断や結果に間違いはなく、殿の実力を見抜いている他藩の者達もちらほらと…。
 一方、お殿様同士は上下関係が大事、その危うい所で殿が失敗して失脚すればよいと企む輩らは、なかなか思うように事が進まずイライラ。
殿は臆病者だから刀は抜くまいと、喧嘩っ早いお付を付けるとか、てっとりばやく毒薬を盛ろうとか…参勤行軍以外にも事件は起こりまくるのです。
 下巻は殿の活躍が多くなってくるのですが、一方主人公の方は、道中に出遭った姫に一目惚れされたりとロマンスも。
一瞬応援しかけたが、いや、婚約者居たわ、この人。
身分違いもあるけれど、まるでその気になっていない主人公がこれはこれでどうかと思えた。
姫の方のエピソードは切ないものだったしね…。(まぁ百万石のお姫様と他藩の下士侍じゃ絶対的に無理な組み合わせですけど。)

 さて、行く先々で縁やゆかり、誠実さで味方は増える。
彼らは蔭に日向に参勤行軍に加勢してくれるのですが、どの人々も生き様が、大和魂が熱い。
 義に死するのは今の時代から見ると到底ナンセンスに思えるけど、だからこそ殿の腑抜けと言われようが人や実を大事にする姿が生えるって言うのもあるわ。
死んで花実が―、正に。
 下巻の後半は怒涛の様に過ぎ、もはや悪者達にすら一本筋まで通る始末。モブまでもが人の心意気を見抜き、とことん居住まいを正したくなるようなエピソード満載。
 無事江戸に付いたその後も、最後まで息つく暇なく大舞台は上様との対面に行き付くのでした―。
(これ、参勤交代が3年制である前の話なのね。なるほどなぁ。)

 ハッピーエンドでホッとすると言うより、読後は清々しさと、己の生き方を問い直される作品でした。
良書。おススメ本。
ストーリだけでなくキャラや、時代小説だと言うのに読み易さ―どれをとっても文句の付け所がありません。