元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
アメリカ文学のなかの子どもたち

 アメリカ文学と聞いて、何一つ「なにがあったっけ?」と答えられない私です。
…ちょっと気持ち悪くなり、このタイトルだと分かり易い所を押さえてそうだと読んでみる。
 そうするとははぁ、ハックルベリー・フィンとか若草物語、あしながおじさんかぁ。
これは有名どころでした。
アメリカのイメージなかったけど。(いや、若草物語は南北戦争だったな、確か。もろアメリカだったわ。)

 さて、内容はかなり深く掘り下げた文章で、ちょっと小難しくもある。
紹介本とか生ぬるい感じでなく、タイトル通りアメリカ文学の中における子供たちがどんな意味を持ち、持たせてきたのか。そしてその作品のテーマを探り出し、どんな部分にそれが表現されているかを読み解きます。
…うん、国語の授業が一瞬頭を過ったな。
 例えば子供が未知の冒険へ出る時、それは子供から大人へ近づくためのイニシエーションであり、そこでは性と死のどちらかに触れる事となる。
そして何かを失って、子どもは子供時代に別れを告げる―。
 意味ありげだね。
他にも家族や文化、自然など、いろんな切り口で解説は続きます。

 作品として楽しむのではなく、こうやってテーマや表現を考えて読み解いていくのって、どうも私の本の楽しみ方には入ってないようでピンとはきませんでした。
より深い理解は出来るけど、考えだすともうお話としては楽しめなくなっちゃう。
 そう思っていたら、トムソーヤの話の辺りで、『少年らは皆船乗りになる事に憧れ続けるが、いざなってみるとあれだけ魅力的に見ていた水の流れをもう純粋に見れなくなって、永遠の憧れを失ってしまう』とか解説されていた。
まさにそれだわ。
 私は、単純に『読書』が好きだから、『本を学問する』事はこの先もないな、と妙な感慨に終わった本です。
近代建築散歩 京都・大阪・神戸編

 建物って、何か特別感のある存在です。美しさや面白さ、重厚さや空間―。
どちらかと言えば二次元となった間取り図の方に俯瞰的な好みを見つけるのですが、評価された建物自体は、また一種独特の鑑賞に耐える、触れてこその存在に思えます。
写真だけでなく目の前に立って圧倒されたいと思うのです。

 この本、掲載量がかなりあって、これだけの物を一堂に写真で並べられると、唸っちゃいます。
タイムスリップしたかのようでもある。
 もし周るならそれらが集中したエリアを…と思うのも当然で、この本、きちんとマップも付けてくれていてエリア別なので親切です。
カラーも多く、素敵な一冊。
世界の美しい本 世界で最も美しい本コンクール入選作品コレクション

 本と言うだけでもう美しい要素が始まっているんですが、期待度大のタイトルです。
 で、これは実際に装丁などを競うコンクールがあるのですね。その為の本ではなく、既に出版されているものを推薦するような形。
日本人の名はほんのすこーしだけ出てくるんですが、基本的に外国の本のようで、日本の出版社の物はありません。
ああ、残念。多いのは北欧、中国あたりかな。

 いやぁ、確かに綺麗だわ。
豪華な装丁の本って(飾り立てられていると言う意味でなく、計算されたデザインのもの)、本当に美しい。
タイトルに偽り無しの本。
 この本自体も美しい装丁になっていればもはやいう事無しでした。

 世の中の本が全部美しくなればいいのに…とか思いつつも、大衆の為であるお手軽な本が無くなるのもの困るので、住み分けかなぁ。持ち運びの重さとかも、耐久性、レーベルごとの統一感とかも考えちゃうし。
 なお、同じタイトルの本があり混乱したのですが、こっちはサブタイトルも含めて…か。あ、コンクールって書いてたわ。
可笑しな家

 写真でがっつり、世界のヘンテコな家を特集。
言っても、芸術的だったり、変わった形だったりと、おかしさの方向はまとも。受け狙いとかじゃないのね。やたら曲線だったり、土に埋まってたり、岩に挟まってたり、立方体を斜めにくっつけたり…と往々にして美しい反面、収納の無駄になる作り。=オシャレ空間とも言える。
 中にあまり物を詰め込まない贅沢が要求される家が多いと思いました。
住まいとは、住み心地が先に来てこそ住まいであり、人が住まない前提のものは単なる建物って気がするのですが、ちゃんと皆住んでるって言うんだから、大したものです。落ち着きや好みも人それぞれだね。
面白い本。
デザインの骨格

 期せずしてなかなか読み応えのある本に巡り合う。
これ、プロダクトデザイナーの人の本なんだけど、suicaの読み取り機とか、携帯とか、車とか、時計…とかなりの有名どころのお仕事してる人のものでした。
へぇ~…。
 何が面白いって、その作る過程、かな。
この本、その手順ではなく、思考回路を語ってくれてるの。
 人が使うものであるから、実験をして、どうすればスムーズに、狙い通りの動きをさせる事が出来るか―。狙い通りの動きって、製品がではなく、使っている方の人が、ですよ。
 例えば上記のsuicaの話だと、ほとんどの人が立ち止まる事なく、スムーズに流れてこそのデザインらしく、そんなのシステム、機械上の問題じゃないの?と思えばそうではないと。本体のデザイン、角度の一つで人の間誤付きが違い、人の流れの渋滞を巻き起こすかどうかが決まるんだそうで。
生かすも殺すもデザイン次第?!おぉ~…、こう言う話、好き!

 で、同じデザイナーの中でもアーティストたるデザイナーたちと、このプロダクトデザイナーはかなりあり方が違っている。
人を読み、そのために科学し、製品を最大効率、かつ美しく仕上げるか、そして経済活動である以上スピーディーに組む。
 自分だけの世界で完結し様がないんですね。それを使う人、それが組み込まれる環境を把握しきってこそ設計が出来るお仕事。
この人は科学する事がプロダクトデザインに通じているとの考えで(凄く納得した)、話のネタも、非常に手広い知識で彩られていました。

 途中、チューリングパターンの話が出てきたのも面白かったけど、寺田寅彦が科学と漫画の関係性に言及していた文章があるとかもさらっと書かれていて、横道読書の誘惑にも満ちていた…。(この文が読みたくて、早速探して出して読んじゃったわ。)
 その視点は、漫画と言うデフォルメの中で掬い出された対象物のエッセンスこそが、決して似つかない存在でありながら、何よりもその対象物を雄弁に語ると言う素敵な説明で、それがロボットデザインの話に通じたり―。
 またこれを意図して、著者が生徒に『河原の石を木彫りで表現しろ』と言う課題を出したら、実際にそっくりそのまま彫り上げたものは到底石に見えなくて、石らしい何かを捉えて彫った木彫りは石に見えると言う面白い話を紹介していました。ここら辺を全部読むと、ふいに不気味の谷の事が頭によぎったわ。

 こう言う、一見関係のないものが巧みに影響を及ぼす大局観ってのは、聞いていてワンダーに満ち溢れていて、堪らない。(こういう話を聞くと、例え下らないとされているものや無価値そうなものから、どんなヒントや真理を見つけるか、読み取れる人の質って本当にありそうだと感じるよ。)
 また見開き毎に著者がデザインした見事な製品や、デザイン図(写真にしか見えないのが数点ある)が載っていて、美しさにほぉっ、とする。
 あるいは他人の手に寄るデザインを読み取るのもお手の物のようで、アップル社の製品を解体してみたり、製造工程を割り出したり(出来上がった製品の切り口や形で逆に工程を割り出せる!凄すぎる。)、プロだなぁと唸るばかり。
 最終章には著者が書いた漫画まで載っていて(著者は漫画もお好き)、なんともボリューム満点の一冊。
それは嬉しいんだけどちょいと重いなぁと思いながら読み上げた本です。