元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
水の森の秘密 こそあどの森の物語 12

 やっと続き~。
今回は似ても焼いても食えないキノコを、とうとう料理する方法に気付いたと言うわけで、森では皆が新しい料理に舌鼓。
あんまりにも美味しい上、保存も効くし調理も簡単。今まで誰も見向きもしていなかったそこら辺にあるキノコなので、皆で取りつくしちゃう。

 最初は何か変な毒の話かと思いきや、この話はもっと深かった。
数か月後、森が何故かぬかるんできた。
今まで冷えていた地下室が冷えなかったりと、少しおかしな状況。
 てっきり私はあのキノコが水を吸ってたんじゃないのかと思ったのだけど、ぬかるみはとうとう大洪水を起こすまでに。
あっという間に家々は半分以上水浸しの大災害!
 恐らくは水が流れ出る湖の出口に何か詰まってるんじゃないかと調査隊を組みます。
すると何かぷよぷよした生き物が大量に水の出口に詰まっているのでした。
 ここでまたキノコが逃げてきて詰まっているのかと思った。

 しかし今回はとことん予想が外れます。
それはキノコだけを食べて生きていたれっきとした生物で、森からキノコが無くなり飢える寸前で動けなくなって巨大化した物でした。
(キノコの代わりに水を飲むしかなくて、膨れ上がった。)
 せ、生態系の崩れを教えるとか、この児童書は何気に凄いな!主人公の先生が『キノコを採りすぎて誰かが困ったりしないかな?』と(今まで誰が食べているのを見た事もないキノコにも拘らず)憂慮していたとはいえ、先を読ませないし…。
 しかし過度な採取が原因だったわけで皆は反省。
自然のバランスとは行動即結果ではなく、複雑に絡み合った微妙なバランスの元に成り立っているのです。
 保存していたキノコを与えて洪水も収まり、再び平和に。
 ラスト辺りのセリフに、『何でも森が与えてくれるのに、たくさん物を溜めたら安心出来る気がして今必要ないものまで持ち過ぎていた。それは森の恵みを無駄にしてしまっていたのね…』と反省するシーンがあって、ミニマリストかくや、と思えて苦笑。

 改めてこの人の児童書に唸る作品でした。テーマを二つも織り込んで先も読ませないし…最初にこの人に惚れこんだ作品に次ぐぐらい良いのを読めました。
ざしきわらし

 …これは怪談えほんか?
怖い絵…。
 オーソドックスな話なんだけど、幸せ系でなく、『出て行ったから不幸』系。
しかも双子の幼女座敷童で、別の家に行くと言って消えたわけだけど、消えられた方はもうたった一日で使用人含め死亡END。
おいおいおい…まるでもう座敷童のせいじゃないか。(まぁ座敷童は察しただけで何もしてないと思うけど。)
 結びで、『座敷童って遠野ではこんなもん』とされているのが淡々としていてまた恐怖。
しらんぷり

 うん、でかい本だな…。ちょっと読み辛い大きさでした。
 ほぼ字の少ない絵本ですけど、中身的にはテーマは重くて、いじめ。それも見ていてしらんぷりをする主人公と言うやつです。
ストーリー的には定番中の定番なので、このタイトルで察しろと言う話なんですが、通常の流れと違う所は、いじめられっ子はとうとう救われなかったと言う所。
…ぇええええ…。

 むしろ、主人公がしらんぷりした後悔をどう乗り越えるかの方がメインストーリーで、まぁ、自己満足、自己欺瞞の影がちらつく、そう言う意味でもどんよりする展開が続きます。(勿論大正義はしらんぷりするな、いや、最初からいじめるな、ですが。)
 口出ししたら次は自分が…と言うあれは、実際の所、自分に対しては何が嫌な気分になるんでしょうね。
目を付けられるから仕方なく…の中には、自分がしょせん虐げられる側の弱い方だと言う認識をせざる得ずそれが突きつけられたプライドの痛みなのか、はたまた言葉通り保身の話で関わりたくない一心、果たしてどんなものが含まれているんでしょう?
 
 さて、痛むものを良心と呼んで綺麗に処理しちゃう前に、いじめられた子への気遣いよりも自分の心のケアを考えなかったか?そんな心情が根底にないのか?
 大体かばうタイプの人間だって、腹が立ったから、とか絶対に『自分の気持ちの持っていき所』を考えた結果その行動になっているだけのはずで、『まず自分の事を考えた』にも色々あるわけです。
 そして『可哀想』っていうのだって、決して相手におもねるものでなく、自分の責任においてとらえるものでなければいけない。
よくお礼を言われて「自分がそうしたかったからそうしただけ」と言うのが有りますけど、あれが正解だと思いますよ。感謝する気持ちは良い事ですが、やる側は絶対この『自分が』を忘れちゃいけない。他人の為でなく、自分の心のためにやるんです。
 情けは人の為ならずは常に深い言葉。
自分の事をまず考える。それ自体は別に悪いわけではないと思います。
 誰かがそうなった原因はどこにあるのか知らないけど、今この状況で自分が助ける事にしたも、しらんぷりする事にしたも、全ては自分の中のそろばん勘定の結果だというだけです。
 だからこそしらんぷりの中には、自分の納得いくような行動がとれなかった時の苛立ちが含まれていると思います。
…まぁ見ただけで何もしてないのに攻められると言うのは重い話だし、巻き込まれりクスも高すぎますけどね。(その意味でも集団生活の中でトラブルメーカーがどれだけ迷惑になるか、怖い話でもある。)
 このしらんぷり、本来なら周囲が攻めるべき案件ではなく、内省的な話なのだと思いますが…。
そこが啓蒙ってやつかな。

 この本はそれをきれいな言葉で誤魔化さず、追求しています。
『少年は良心が傷んで反省しました』なんて簡単な話じゃないのね。
 少なくともこの本に出て来る登場人物達は、皆居そうなタイプで、それぞれが違う人間として、綺麗事だけに終始せず、自分の心を守るために行動する。『自分の事』を考えている。
利己的だったり、根本から違う考え方をする人間も当然たくさんいます。
 この『誰か一人の善悪によって』のみ世界は構成されるわけでない所が、また色々考えさせられちゃうね。

 そして『自分の事』を考えた結果、『行動』出来ている人間が、良いか悪いかは別にして立場に関係なく強く見えた。
 この話、実はいじめられっ子が最終的に一番高潔で心が強い子だった気がします。自分なりの形でケリも見切りも付けたし、新しい道へ踏み出してる。勝てなかったけど、渦中で動いたし、またその後も動き続けている。
 これと対比すると、主人公やいじめっ子らにはうじうじしたものを感じざるえない。
 そう言った『弱さや強さとは何か』を考えるのにもいい本かも。

 一冊でとてもたくさんの考え所がある作品でした。
不思議を売る男

 ははぁ、骨董品を売るのに、その商品にちなんだお話をして買わせると言うやつか。
これが、男が『嘘つき』と呼ばれる所以なのね。(原題が『A PACK OF LIES』。)
 セールストークとも思えますが、得体の知れない嘘をつく男を雇い入れた主人公母子。
警戒はするが、ようやく商品が売れ出したのだから文句も言えず、傍で黙ってその話を、売りつけられる客と一緒に聞くしかないのです。
 上手いね。これでひとつひとつ全く違う話を短編で繋いでいくと言う流れが出来る。
(しかしこの嘘と言う解釈、主人公母子は「でもあの人はこの商品がお話に出て来るものと同じだとは言ってないから嘘とまでは言えない」とか言って自分を誤魔化してますが、いや、この商品の話をしましょうって言ってる時点で完全にアウトですよね。まぁこの正体不明の男が本当の来歴を語っているかもしれませんので…?)

 さて、その来歴。
アンティークショップで商品の来歴が解る話は割とあると思いますが、そう言う場合の綺麗だったり、ジンとしたりといった良い話は欠片もなく、『大時計の下敷きになって死んだ』とか『意地悪な手紙ばかり書いていたら文箱から髪の毛が襲ってきた』とか不吉でホラーな話ばかり。
 …これで何で買っちゃうのか?皆。
 まぁ同じ様な店に買いに来たパターンの中でも、毎回客あしらいやトラブルの解決の仕方が違ってて、たまにオークションへ買い出しに行ったり、はたまた警察の捜査が入ったりと、男の飄々とした活躍が鮮やかで活かされます。

 所でこの男、本にしか興味が無く、他の事はまるで頓珍漢なんですが、途中で恋愛要素が入り込んでくるのがえらく面喰らいました。
 だって母親(未亡人)とかと思ったら、娘の方とだったんだもん。…ぇ、この娘、幾つ??てっきり小学生、せいぜいローティーンくらいかと思っていたんだけど。(ああ、五年生と言うからそう思えたけど、実は高2くらいの数え方か?国によって数え方違うから、ここは翻訳でさくっと日本式に換算していてほしかった。)
 しかしそれも全くフラグのないとしか思えない状況で、母親の方が『娘がだんだんあなたに惹かれてきていて問題だわ』的に釘を刺すのですが、男のはぐらかしの話は意味深に恋愛話だったしなぁ…。娘もそんなそぶりを見せていなかったのに急に応える感じだし―どうなの、これ??(男は年齢不詳とは言え、結構すぎるくらい大人に思える。)

 で、最後どうなるのかな、駆け落ちでもするんか??と頁を手繰っていくと―ラスト、えええええ??????
ちょっといきなり不明な展開に。
は?これ、どういう事?結局作中作なの?現実なの?どうなったのかも予測しづらい終わり方なんですが。(ハッピーエンドを予想するとは限らない。)唐突すぎんよ。伏線とかどうした。
 うっわ、もやもやするわぁ…。大体男が同一人物として、外見とか性格とか随分違うように思えるのだけど…。
と混乱ひとしきり、説明しにくいラストでした。
 考察が上手い人は幾通りにも解釈出来るような感じ。だが私は作者が指し示すたったひとつの本意を知りたいと言うのに。(ってあまりにも釈然としないので検索かけたら皆ラストが解らんとかで吹いた。)
 まぁラスト以外、短編の方を楽しめればそれでいいかと言う感じです。あんまり恋愛してないから、そっちじゃ期待や応援気分はないもんねぇ…。好みの上だとこの手の話は不思議なおじさんと少女系ですわ。
ハッピーノート

 中学受験を控えて塾通いに精を出す小学生女子。そんな子が主人公なのですが、うん、なかなか…嫌な部分も全開の一人称物で生々しいな。
 なんせ学校でつるむのが苦手。かと言ってグループから逃げると孤立するし、いつも調子良く(内心相手を怖がったり、馬鹿にしながらも)振る舞っていた。
 で、彼女はさっさと学校側の上辺の友人付き合いに見切りをつけて、塾なら新しい素敵な環境が待ってるんじゃない?とTVドラマなどの影響を受けて、勉強目的でなく塾へ行く事に。
 ところがそこでも結局一人。しかしここでは下らない人間とはつるまないつもりなので、日々自分では動かず、良い事ないかな…と毎日不満を抱えながら過ごしている。
 そんな中でも、一人の男子とは仲が良くて、主人公は彼が好きなんだけど、その子は塾では決して主人公と話したりしない。
塾帰りのドーナツ店で一緒に勉強をするだけの仲。いつか彼が自分のグループに主人公を紹介して仲間に入れてくれ、リア充になるんだ…なんて思っているけど、やっぱりこれも受け身なのね。

 そんな不満と受け身の生活の中、主人公は新しく塾に入ってきた女の子から、サバサバかつ、どこか馴れ馴れしい近寄られ方をする。
 その子は妙な服装や言動なのだけど、物おじせず何でも出来、そもそも頭が良い。
でも人との距離感が測りにくい子であり、主人公は嫌悪困惑しながらも、自分がいいグループに入るため、打算的にその子とつるむ事になる。
 しかし目論見は見当違いだったわ、成績は落ちるわ、例の彼は最後まで主人公を公に友人扱いすらしないわ、展望なんて望めない状況に。
(ちなみに学校の友人とは相変わらず嫌々付き合ってるし、家庭でも親に反発バリバリ。)
 もう八方塞がりどころか、よく一つの良い事もなく進むなぁ…なんて。
 特に友達付き合いは、学校でのグループは足引っ張る子にいらいらし、リーダーの機嫌を測り、どちらでもない子はさらっと裏切って転校して逃げちゃう(積極的だな)し、塾の子らはそもそも向うからして主人公を相手にしてなくて、男の子もよそよそしいし、入ってきた女の子は癇癪が酷い。かと言って憧れていたグループにちょっとだけ入れてもらってもルールがいっぱいで嫌だとか思うし―。
あー、気の合う子がいないとこういうもんなのかしら。

 まぁこの子のネガティブさもあると思うんだけど、途中で『結局どこへ逃げてもその先で嫌な事がないとは限らない。じゃあここで嫌な事を止めよう』と開き直った様に自分の意見を通す子に変身。
 普通はそこで見直されたり、裸の心でぶつかって友情が出来たり、道が開いたりする展開と思うんだけど、これがなんとも酸っぱい話。
全く相手を思いやる行動がないくらい、「私はこれがしたい、それは嫌だ」と主張する子になってしまった。(そして複数の子と衝突する。)
 いや、自分の意見が言える事は良い事なんだけど…取りつく島もない感じに思える。そしてそんな急に変われるのも不思議。
まぁそれで、向うも今まで押しまくってきた分反省―と言うより考慮するようになったのか、険悪なムードながらも前みたいに主人公が振り回される事はなくなりました。
 ただ、主人公もしれっと、『別にあんたと無理に付き合いたいわけじゃないけど、あんたがいないと一人になるんで』的な言い草なもんで、読んでいてとげとげするわ…。このまま本音を言い合う親友になるんだろうか。いや、運命の友人に出遭うまでの保険にしか思えない…。
 この子最初は消極的ネガティブ、ラストは積極的ネガティブだよ。

 ただ、女の子友達らとは結局こんな調子だけど、塾の男の子とだけは誤解も解け、仲良くなったラストでした。うん、どこを見ればいいかわからない。BF的な話がメインか?これ。それとも単に友人がたまたま男の子だっただけの友情テーマ??
(あ、あと家族とはお互いカッコ悪い所を知られ合って、結局仲良くなったようです。そこはまとまっていた。)
 全方向に釈然とするハッピーエンドじゃないのが、微妙な気にさせてくれた本です。