元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
新・どの本よもうかな? 5・6年生

 さぁ、子どもじゃないけどその本読もうかな?
児童文学めあてで。

 しかし驚いた事にこの本、5、6年向けなのに絵本から始まってるのよ。へぇ…拘らない所が良いね。
そうなの、対象年齢よりも上の人はすべからくその本を読んで理解し、面白いと思える可能性があるんだものね。
 そして1Pに1冊の本の紹介なんですが、上手いわ。
あらすじ→途中で引いて興味を引く―と言う単純なものでなく、問い掛けを絡めつつ、こちらに話しかけて来るかのように興味を持たせてくれます。
くっ…大概読みたくなるぞ、これ。
 本当、どうしようかと言うくらいにどんな話なのか、続きが気になる本だらけでした。

 この本、ガイドとして優秀過ぎるわ。
大人しく読みたい本リストに書きこんでいくか―。
オリガミ・ヨーダの研究レポート

 海外の児童向け。
なんで選んだかって、このタイトルの謎さだよ。
 折り紙で折ったヨーダ(スターウォーズの)が、予言をすると言う謎のストーリーで、そもそもその折り紙自体…表紙を見る限り、くしゃくしゃに形付くられた態。
 か、海外って紙を『くしゃっと握ってアルミホイルみたいに形を作っても』『切っても』『貼っつけても』、材料が紙であれば折り紙の内との事で、ちらっとは聞いていたけど…酷くないか?
 一応本の中にヨーダの作り方が載ってあって、それはちゃんと折り紙だと思うんだけど、絶対表紙のと違うよ…。(表紙のは『握り紙』が混じってると思う。)
 まあ色んな謎が頭を渦巻いてしまったので、読んで色々確かめたい。

 最初は折り紙の折り方の本かとさえ思っていたのだけど、ちゃんとお話になってました。
ヨーダが予言すると言うのは、冴えない男子の中でも特に冴えない男子にさえ仲間から外されがちな少年(卑屈ではなく、変わり者)が、折り紙のヨーダを指に付けて、「ヨーダは何でも知っている」と裏声使ってクラスメイトの悩みにアドバイスをする。
 勿論主人公たちはバカにしているんだけど、それが意外と当たっていたり、良い事を言っていたりして、果たしてあのヨーダの予言は本物かどうかと(嘘ならいじめてやる的なものも含めて)、皆で調査する事にした。
それが『研究レポート』。
 まぁ確かにヨーダの腹話術師である彼は、腹が立つくらいヨーダを別人格として振る舞い、声色を使い、変な喋り方、と徹底している。
 日本の映画では反映されてないけど、ヨーダって原語じゃ区節を入れ替えて喋る独特の話し方なんだってね?(花が咲いたよ→咲いたぞ、花がとか。これを長文でもやるから意味が取りにくいんだそうで。映画では文章と違い意味を取りにくくなるから、普通に直した…とか書いてあった。)

 しかしこの変わり者少年は根性がある。
卑屈じゃないばかりか、必要とあれば年上の筋肉いじめっ子にだって勝とうが負けようが腕力で挑むし、ただその言動は超コミュ力不足がたたって誰にも理解されていないだけ。
 ヨーダを通した事で初めて彼の深い洞察力や機智が発露されたんだろうね。(まぁヨーダの予言もまだ解りにくいっちゃ解りにくいが。)
 複雑なのは、いくらヨーダが良い事を言っても、彼自身はヨーダのいう事は聞かず、本人の好きなようにしか振る舞わないってところ。
終盤、「お前自身がヨーダのアドバイスを聞けばマトモになるのに!」と言った主人公の言葉に考える所があったのか、スイッチを切り替えたみたいにマトモに会話するようになった。…こいつ…素のスキル絶対高けぇよ…。
(なお、変人をものともせず彼に救われ彼の良い所を見抜いた素敵な彼女まで出来る。変人の内からの事で、これはナイス。)

 最終的には、ヨーダ―と言うより彼の信念を汲み取った主人公や周囲の人間は、より的確なアドバイスを基に、成長と今より少しは生きやすい学校生活を手に入れた流れで終り。
うん、ファニーな話だけどホッとするな。

 巻末で知ったのですが、この折り紙のヨーダ、実際にむこうではスターウォーズ好きの子供たちの間で大人気で、各自オリジナルでヨーダを作り上げて、その数だけ折り紙のレシピがあるそうで。
競って披露し合うので、なるほど、表紙のも、中に書いてる少しまともなヨーダも、そう言う背景のもとに出てきたのね。
 これはあちらの文化や流行を知っていなければとっつきにくい事でした。
 なおこの本、続刊があるようですが…どうなるんだ?ちょっと気になる。
病気の魔女と薬の魔女

 たくさんの魔女が集まり、踊り明かすワルプルギスの夜―。
そんな魔女の世界観が好きで、ドイツ留学まで果たしたと言う感染系の学問を学んだ女性が著者。
 これが面白いのは、ウィルスやワクチンや、そういうものが魔女となり、その振る舞いや戦い方でお話が進んでいき、物語の中で病気に付いて知る事が出来る作りなのね。
作家じゃないけど、好きな事で語る作品を作りましたと言うやつ。
 これって、文章力さえ普通にあれば、面白い事が多い。人間、好きな事を語っている時ほど魅力的だもんなぁ~。
 病気の魔女は病気を引き起こす、薬の魔女はそれを治す、この二大勢力で話が進みます。
 中でもやっぱり病気の魔女のキャラ立ちはためになる知識を秘めている。
ペストならどう感染するように魔法を仕込むとか、使い魔(動物の媒体)はこれ、とか―。
 病気と言う敵の正体や感染経路を覚えられますね。
新しいものではサーズとかも出てきます。
 一方薬の魔女はそれに対応するワクチン類なのですが、これもまぁどう作るとか、どこに働きかけるとかあるんですが、こっちは自分が作るわけでもないからそこまで脳裏には残らないかな。

 ストーリー的には病気の魔女が、薬が発展してきて、追いやられた病気を懐かしみ、ここらで一花咲かせようぜ的に一致団結して恐ろしい病気を作り出そうとする。(現実に則しているから、有りもしない謎の病気でなく、こういう病原体も現れるであろう的な発想の病気。)
 主人公である薬の魔女のひよっ子ローズは、諸先輩方に薬の作り方を学んでどうにか皆でこの危機を乗り越えようとする。
所が、媒体から最初に感染したのはローズの親友クラリスで―。
ローズはショックを受けながらも生ワクチンを手に入れるため、クラリスの基へ。
 そこでクラリスの発病を利用してワクチンを作ると言う辛い展開かと思いきや、何だ、ワクチンのためのサンプル取る時、一緒に病原体全部吸い取るのか。これでクラリス完治。
 そこから大量にワクチンを作るのですが、この作業が現実に則しているようで、何万個の鶏の卵を休みなくひっくり返し、病原体を入れ、抽出と言う気の遠くなる様な作業を見ました。
転卵…手でやるとか地獄作業ね。
 こう言う地味な作業でローズは病気の魔女に勝てるワクチンを作り出す事が出来たのです。
 しかしお話はまだ続きます。逆恨みした病気の魔女がローズを殺そうと…。
 この件で、薬の魔女どころか、矜持を持つ病気の魔女でもローズをかばうと言うあたり、魔女が魔女の仕事をするのは使命と言う、道は違えど魔女としては同じと言う展開は良かった。
 病気の魔女側も、ただ人間が苦しむ姿がどうのと言う描写もありながら、存在意義があって、労われる事すらあると言う事も。
単に薬の魔女VS病気の魔女と言う団体戦にしなかったのはいいな。

 どうもシリーズ物の様なのですが、とりあえずこの一巻で本を置きます。綺麗に終わってるし。
 ユニークで試験的な作品だと思いました。
きかせたがりやの魔女

 岡田淳氏。
忘れた頃に新作が出ていて侮れない。
何度見ても『着せたがり』を空目してしまいますが、『聞かせたがり』ですね。
 今回はすぐに目に入る挿絵が特に印象的。
ちょっと児童文学に好まれる絵柄よりはわずかに今風、かつシンプルな筆致なんだけど、一人一人の個性が見えて来るとても素敵な挿絵です。表情やポーズが、生き生きしている所も魅力的。
 お話自体は小学校にいる魔女、がいろんな魔女の話をしてくれるのですが、踊り場の魔女だとか、いたずらの魔法だとか…他作品で見られる懐かしいフレーズで綴られた短編連作に、ニヤニヤしちゃいます。
 小学5年生の主人公である少年目線で、魔女からこんな話を聞かされた―と言う他の小学校の『魔女(魔法使い)と子供』のお話。これの短編が数話続きます。
それらを聞いていく上で、最終話では当の少年と魔女のお話になるのだけど、これがまたファンタジーがこっちの世界に寄ってきた感があって良かった。
 今までだと、魔女はあくまでも魔女と言う世界の違う存在だったんだけど、今度の魔女はこちらの世界と確かな繋がりがある魔女で、故に身近に魔女が居るかもと言う気分にさせてくれる。
 魔女も不器用で無愛想だったりするくせに、変に頑張り屋で素直な部分が、不完全と言う親近感を抱かせてくれるし、その魔女の存在を受け入れる少年のまっすぐさと度量の大きさがやるなぁと思わせてくれたり。
ちょっと独特のボーイミーツガールですね。(まぁ魔女は中年だと思われますが。)
 よくある不思議な店の店主と少年と言うパターンの組み合わせにも似て、この2人の組み合わせで学校の不思議な事件をどんどん解決…とか面白そうだと思ったんですけど、いや、岡田さんはそんなのは書かないな。ジャンルが違うわ。
 魔女が魔女で、そしてここで終るからこそ、いつでも読み手が主人公となれる素敵な児童書になるのでしょう。
水はみどろの宮

 古めかしい、伝奇的な昔話…みたいなものかな。児童書なんだけど。
かなり古風な雰囲気と文章っぽいなぁとペラペラ捲ってそう感じたんだけど、読んでみると普通に読めました。古めかしいんじゃなくて、喋り言葉が土地訛りだからそう見えただけだったみたい。

 とは言え、昔ながらの往来はあれども閉ざされた田舎の里山と言う狭い世界で、お祖父ちゃんに育てられる孫娘―そんな童女が主人公なので、世界観は非常に素朴、余計なものが無い昔話みたいなものです。
 川の渡しをしている中で、たまに来る薬売りの客のに外の話を聞くのが楽しみだとか、神様のお使いだと村人から言われる犬(山犬)に懐かれるだとか…。
 これがあらすじ上では童女は山の守り神的な狐と出会う話と書いてあるのだけれど、途中までこの山犬が不思議な力を持って童女を守るような話かと思っていたわ。
この山犬、鉄砲水を知らせてくれたりするし。

 そして中盤頃、ようやく狐神と会うんだけれども、出会いこそは運命的に『お前が来るのは1000年前から解っていた』『可愛らしい姫御のようじゃ』と、嫁になるか?的に童女に迫るんだけど、その後、そんな異種婚的な話にはならなかった。
 …ええ~…、童女の方も若い山伏の格好に化けている狐の事を、「兄しゃま」と呼んで慕っているのに―。
まぁ、別段娘になってからの話とかまでいかないんだけどさ、期待するじゃない。
このまま神隠し方向か?人里で異種交流方向か?と。

 ところがよく解らんのは、狐に会ってから童女は山の声を聴くようになる―と言う部分は良いけれど、それでずっと童女の生活が急激に変わるわけでもなく、色々自然に敏感になっただけで特別な事は起こらない。
それではそういう生活の、命の鮮やかさを賛美するようなストーリーなのかと言うと、それもどうだが、後半、ほとんど猫の話になる。
 猫。
―これも、山犬と同じで誰にも懐かないのに童女には懐いた猫。
 山犬の時と違って、猫は一人称で話が進む。
…なんだ、これ??

 結局ラストでは孤高だった猫が子猫を得るよと言う、人には見る事の出来ない猫(動物や自然?)集会を童女が覗く様な仕上げ…なのかな?前半、中盤、後半とどうも視点が飛び過ぎて全体的なストーリーとしてはとても飲み込めず。
 ううむ…雰囲気に慣れてからは、細かい言い回しや描写が織り込まれた錦の様に美しかったので期待したけど、全体を見るとどうにも消化出来なかったお話だな。
ちょっと残念読書。

 あと読んでて最後までどっちか解らなかったんですが、このタイトル、『水(わ)みどろの宮』なのか、『(水)はみどろの宮』なのか…。
 名前言ってそうな時でもミズハミドロって言ってるし、でも時にはみどろの宮とも言ってるんだよなぁ…??わか、はか、どっち読みなのかだけでも分かると違うんだけど。些細ながら尾を引く疑問でした。