元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
わざと忌み家を建てて棲む

 このタイトルに率直にビビって。
なかなか攻めてるテーマだよね。面白そう。
 で、この人、『のぞきめ』の人だったのね。
あれは面白かったので期待です。
 そうしたらこの本、家シリーズと言う感じの2作目だった。…あら、先に1作目を読むべきか?まぁ単品で読めると書いてあるので気にせず行ってみようか。

 そもそもが奇妙な建物ミステリーやホラーは多いものの、ここまではっきりと『忌み家』と言えるだけある家のお話です。
なんと殺人だの何だの、祟りや呪いの染みついてそうな家々を、丸ごと解体して持ってきて組み立て直して、ご丁寧に家具まで再現。そんな家々を、なんと複数くっつけてひとつの建物を作っちゃったと言う。
 だから見た目からして異様。
洋風が和風になり、見る角度によって全く違う家に見えると言うやつ。とは言えひとつひとつの家々は繋がっているとは言え独立はしているので、黒い家とか白い家とか呼ばれながらも、住人はここに住む事になる。
 そう、これを建てた酔狂な主は、ここを賃貸にして『そういった家に住むとどんな事が起きるのか』を賃貸人に記録させて、何やら実験めいた事をしていたのです。
 こういう記録が昔の蔵から出てきた事で、作者(よくあるホラー小説家設定―と言うよりこの作者本人)が本物の話を本にしましたと言う体裁。
 ひとつひとつの家の怪異の記録を追う形は良いし、怖さの種類も違う攻め方に見えて飽きは来ないんだけど、終盤で一気に醒めたのが、怪異に遭っている最中に『ここで宣伝』と断って自分の本の宣伝をしている所。
 いや、作品内原稿にそう記すのは全然自然なんだよ。
怪異に遭ってもこれと似たような事をあの本の時に調べて書いたな、とかなら自然な回想の内でしょ。
でも今まさに追いかけられてる最中に『ここで宣伝』はないわぁ。
後から書いてる態だけどそれでも萎えまくり。
 自然に『昔の○○と言う本で書いた○○を思い出した』とか、馴染ませる事くらい出来るだろうに、主人公の作者視点の話に、急に第四の壁状態で読者にメッセージって…。
緊迫感台無し。
 そこまでは普通に楽しんでいたのになぁ…。

 そのせいか、ラストもちょっといまいちに思えた。
新しい貞子でも作ろうとしたかのような不気味な女性キャラ(の正体)が鼻に付く気がしたし、キャラもパンチに欠ける。実話です、との囲い込みも少々過剰。
最後のページ数の偶然とかは本当に蛇足。
 ひとつ躓いて一気に疾走感を失ったホラーとなりました。
 序盤中盤までは面白いです。
祝山

 呪山じゃないんだぁ、と久しぶりに加門さんの本。体験、実話じゃないし、書下ろしらしいし…と地雷は避けたつもりなんだけど、『実話が基』とか匂わせてるから、ちょっと鼻に付く部分は残る。
加門さんの作品、昔のやつは面白く読めてたんだけどなぁ…。何だろうね。
 ストーリーとしては愚かな自己責任の肝試し、そしてそれを冷静に諫める霊感のあるアタクシ、と言う分かり易いもので新鮮味はないんだけど、畳みかける怪異も、最初は偶然、何でも祟りに結び付けるなと思うものの、ここまで続くと気味が悪くなっていく様子がよく表現されていて。
こう言う所で文章力や筆致に確かなものがあるから感覚が合わなくなってきていてもつい読んじゃうんだよなぁ。
 上手いと思ったのは祝山の呪山にせずに別方向へ着地した部分。ああ、読み側に注目するのか。綺麗に嵌った。

 あとまぁ、登場人物が全員、霊感ある側もない側も枠が狭い感じで、他者に対しての決めつけが多くその意味ではオカルトと別の息苦しさを感じた。
 でも自業自得系の話は確かに読んでいてスッキリするもんで、肝試しなどとやっている人間がそれ見た事か、の穴に落ちていく様子は黒い感情が満たされる。
おせっかいや好奇心を出した主人公までもれなく、と言うのが得体の知れないものの感覚なんでしょうが、まぁ首突っ込んで来たら怪異側としても手ぇ出すくらいするわな。
それに首突っ込まないとこういう話は進まないし。

 シンプルな素材をしっかりとした味付けにした作品。悪くなかった。
モンスターズ

 アメリカの現代小説家らがモンスターテーマの短編を書くんだけど、こういうのは好き。日本で言えば異形コレクションだよなぁ。
ただ、海外物なので、若干ノリが違ったか。
 モンスターその物よりは、それに心寄せて狂っていく、或いは歪んでいる人間の心なんかが主体で、うーん、いや、もっと単純明快なモンスターもので良かった。モンスターの皮を被った単なる人間小説、としか言えない物が多かったんだよなぁ。
少年が鬱積で自分をモンスターだと思い込んでるとか、モンスターが好きな少年だとか、いじめられている少年がとか…。少年ばかりだな。

 ただそれであくまで人間側として面白かったのはゾンビから逃げる人間集団を書いたお話かな。あれは定番のネタだけど、極限状態での行動が醜ければ醜い程、読めちゃう。(気持ちの良いもんではないけどね。)
 あと、オチの寒々しさが良かったのが泥人間のお話。ネタは『ゾンビーノ!』にも通じる部分があるんだけど、こっちは完全にホラーテイストで落としている。

 なお、当然ここに出て来るモンスターは海外産のものですので、ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男に透明人間、後はミイラに半魚人と、マイナーなのはほとんど居なかったな。
チュパカプラレベルでさえいない。(ゴジラとか出てくるのが笑えるが…。)

 ピンとこない話も多かったけど、アプローチの仕方がアンソロジーだけあって十人十色、バラエティには飛んでいると思います。
残穢

 このタイトル、映画が有名か、小野不由美作品として有名か。
まぁ映画は見に行かなかったんで、原作を押さえておこうと。
あの映画の告知、久しぶりのジャパニーズホラー大作の予感をさせていたじゃないですか。

 で、知っているような知らない様な漠然とした前知識で読んでいたのですが、序盤はじわじわくる感じで良し。
ダイレクトな話ではなく、じんわりくる怖さが、今後の話に期待を抱ける。

 が、中盤。
どうも進んでいるような進んでいない様な、決定打に欠ける怪異が小波の様に続く、続きすぎる。
ちょっとだれて来るなぁ。
 まぁ実際に素人が怪異を調べるなんてこんな地道な作業の繰り返しなんだと思いますけどね。
なんせ調べている側に誰一人として霊感がない。お話みたいにくっきり見えたり襲われたり、霊能者がいたりしません。(お話ですが。)
 ここら辺は好感度高いんですが、まぁぶっちゃけお話としての山谷に関してはその分マイナスがくるな、と。

 そしてラストまで―。
あ、これはいけません。
とうとう最後まで山がない、なさすぎる。
 むしろ民俗学の学生が研究レポートでも書いてるのかと言う様な怪異の成り立ち解説状態で、実際の怪異よりも、その仕組みを語り出しちゃう始末。
ほんのりと出てきた怪異自体も、てんでバラバラの場所や人に起こるから、気のせいレベルで済んじゃう。それなりに怪異元も調べるし解って来るんだけど、決定打がない。
 とうとう耳袋寄せ集めと言う態で、何の解決も、いや、原因も何もかもわからないまま、そう言うもんだと終ってしまう―。
ぇえええええ??これ、お話になってなくない??耳袋は長編だとダメだろ。
オカルト解説本、あるいは自説本だよね、内容は。それを小説風にしていると言うか…。

 物凄くがっくり来ました。これ、映画としてはどうだったんだろう?原作の時点でこれを映画化しても派手さやラストの収まりがないのに、何故…。
 この人のお話、今まで外れはなかったんだけど、これはちょっとびっくりするくらいに駄目だったわ。
ぼんやりした本でした。
のぞきめ

 映像化ですって?ビジュアル的には行けそうだよな、この設定。
と言うわけでホラー。出た当時はスルーしてたけど、『想像してごらん』の世界で視覚的に想像するとグッときそうなので読んでみる。
 映像化の方のあらすじをざくっと走り見した感じでは、向うから覗かれるとアウトのお化けものの様な話だった気がしたけど、実際は『覗いてくる』ものに精神的に追い詰められる系だな。覗かれたらペナルティがあるとかではなく、その行為自体が精神攻撃。
 格子戸の隙間から、物陰から、覗いてくる目とか、画面上ではえるわ、怖いわ…。ゾクゾクします。

 さて、お話上ではよくある耳袋的な拾遺譚を大学の民俗学で―と言う超定番。奇妙な糸に導かれ、小説家はこれに関わる事に―的な語り口調なのですが、実際に伝え聞いたとされる体験談自体は、メインの二つの話がそれぞれ真に迫った怖さを醸し出しています。
 触れればどうしようもなく祟る、因果応報の枠組みをも超えたものであるとか、はたまた血で因業を受け継がざるを得ない、逃げようともがけばもがくほど、業を背負ってしまう蟻地獄の様な…そんな展開が怖い。もう六部殺しとか、子々孫々が可哀想だから元凶だけ呪われとけよ。
 あと、これに乗じてタダ飯食いに来るような詐欺師にお灸据えるのも業になるのが可哀想。
 怖さの本質としては、この作品、単純に隙間から覗いてくると言う『それだけ』の怖さがシンプルで効いてくる。
 いや、本当、物理攻撃しかけて来るお化けって怖さの質が違うからね。延々隙間から見て来るとか、気が狂いそうなものがあるじゃないですか。
言葉としての怖さもいいよね、のぞきめ。
 とにかく読み出したら止まらない、ゾクゾクする。
久しぶりに面白いホラーを読んでいる。

 あとは結末がどうかだけだけど…これがね、良かったよぉ~。
一部二部の二つの話の内、一部は怪異は怪異のまま、説明が付かないんだけど、二部の方がもしかしてこうでは?と言う一つの現実的な回答がなされていて、それはそれでゾッとする感じの真実なんだよ。
 この、ホラーオカルト路線で終焉を望むものと、現実的に怖がりたい、納得の行く真相を望むものとのバランスを、両方取ってる感じ。
ああ、二部構成の功名だな、これ。良い所どりしたある意味ズルい結末なんだけど、私は好きだわ。作者が狙ったのとは違うかもしれないけど、通常ホラーで難しい理由付けのある結末がそこにはあった。
上手いよなぁ。ミステリーとしても読める。
 勿論ホラー、ミステリー、それ一本で見てしまうとどちらかに不満の残る持っていき方かもしれないけれど、私はこの落としどころが、ジャンル関係なくすんなりと受け入れられたわ。
 とりあえず、ちゃんと怖くて、それでいて納得の出来る最近じゃ高評価のお話だと思いました。