元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
東京空港殺人事件

 家人の本棚から拝借。めちゃくちゃ古い。
このシンプルなタイトルから想像出来る、昔の推理小説ってこうだったよなぁ…。

 所が、確かに空港絡みなのですが、プロローグが恐ろしい。
冬山に墜落した飛行機から、サバイバルをするのですがまー、「動けるやつだけ行こう。怪我人は生きていても放置、毛布も食料も動けるやつが持っていく」と言うまぁある意味生存確率に賭けた最も冷静な判断なのですが、冷徹でもある。
 この判断をしたクルーは正しいと思うんだけど、もう事実を知る人間(当時助かった人たち)が軒並み「あいつは人非人」「許せない」とか助かった側で同罪だろうし、そういう憎まれ役を買ってでも助けられる最大値を助けたクルーを悪し様に言うのがまた酷かった。
 唯一「正しい判断をした」と称えるのが彼の事が好きだった女性クルーだけとか、この書き方は酷いよなぁ…。
(また置き去りにされた側は老人ただ一人が、このクルーの判断を正しいとして素直に従っている。)まぁ残された側は確かに…阿鼻叫喚でそれはそれで恨むのはやむを得ないのですが、生き残った方はクルーを責める権利なんてないよなぁ…。
 クルーは「誰かの助けを得ないと動けないやつは、助けた人も含めてどんどん置いていくし、ついて来れないやつは放って進む」としつつも、例外的に幼い女の子だけは自分で背負って最後まで守り抜いてる。
 他なんて「行かないで」と縋りつく妻を蹴倒して「俺も行く!」とした夫とかも居るのに、クルーだけがえらい言われようだわぁ…。

 ―とハードなプロローグなのですが、そんな事件から飛んで現在。
こちらはこちらで再びの墜落事故。
クルーである夫が、上司の頼みでたまたま客側として乗った飛行機なもんで、何故かしらほとんど保険金が下りなかった悲運の妻。
 事故調査委員会では、次なる飛行機会社の競合を賭けて、この事故が人的要因で墜ちたのか、はたまた機体要因で墜ちたのか、一人の調査員が金の動きを無視して純粋に真実を追っているのですが、周囲から圧力をかけまくられています。
 と、割と目線がコロコロ変わるので一体誰が主人公かわからないままお話は始まります。
冷徹な過去のクルー?夫が死んだ妻?事故の調査をする男?警察側?
もう出てくる登場人物分、主人公感が解らない。

 その分面白い人間ドラマがあるのですが、まぁ何というか筋書き自体は非常に面白い。
ただし、ドラマティックを詰め込み過ぎたと言うか、基本的に愛憎関係では本当にどいつもこいつも針がぶれ過ぎだし、真実に行きつく糸口が偶然を頼りすぎている。
(たまたま人のいない早朝の山の中を逃げている犯人を、散歩している男が目撃するのだけど、それが「あの山の近くに住んでいる元上司が居たなぁ。聞いてみよ」的にヒットするとか。)
 そこ以外はボリューム感あるドロドロで、事件も派手だし、真実を知りたい訴求感はたっぷり。
 過去の事故と現在の事故のそれぞれの絡み方とか、余すところなく縦糸横糸が張り巡らされているのはさすが安定の作家力かと。
何と言うか昔のTVドラマ感あふれる作品です。
読めた。
この闇と光

 お城、お姫様、ダークファンタジーですね。
普段はこの手の物は特別選ばないんだけど、あらすじで気になってしまい―。
 『盲目の王女レイアは父王に愛され花やドレスに囲まれ過ごしていた。ところが―』と言う物でそんなどんでん返しが、と言う物なんだけど、うーん、色々と想像と違った。

 まず、お姫様が幼かった。片手の歳。…せめてローティンかミドルティーンくらいかと。(成長はするんだけども。)
 あと、閉じ込められている離宮っていうのが、どう聞いても安宿の二階っぽくって、最初からお姫様設定が疑われる。
時代設定も謎で、車やテープが出て来るし、どこの国でどこの時代を思い浮かべれば良いのやら。
 とりあえず父は王とする。
一応王とは言え隣国(アルファベットを使用する国)に国を乗っ取られ、囚われており、でも王は民衆に強く愛されているから生かされていて、仕事をさせられていると言う事らしい。
 姫は盲目で、ここで盲目という事がばれると魔女と言う事にされて殺されるから、外へは一歩も出れないし、王と下働きの女以外とは接してはならない。
(人と違う物は魔女とみなすと言う理屈らしい。)
 王は姫に音楽や殊更に文字を教え、囚われている割には割と頻繁にドレスやら贈り物をして本当に可愛がってくれている。対して下働きの女は姫に冷たく、姫は怖がっていて、愛しているのはこの世で父王ただ一人。
 やがてそれなりに成長した暁に、とうとう戦乱が起こり姫は一人にされるのだが―。

 と、ここからどんでん返し始まり。
確かにそれ自体は想像もつかない様なものでした。が、だ。
お話として考えるとかなり夢オチにも近いと言うか、反則スレスレなオチなんだよなぁ…。
 どんな(きちんと説明が付き枠内で鮮やかに騙される様な)真実が?!と期待する方向と違う。一つの物語として考えた時に、アンバランスさでまとまりに欠ける感じと言うか。枠外にオチを置くようなネタ。
 確かに序盤のおかしな部分は正々堂々と書かれていてフェアなんだけど、それが故にまとまりがない話になっているんだよなぁ…。
『何故』は微妙なままだし。
 
 たまたまこの本を読んでいる時に私も読んだと言う人が居て、「ラストはまだ?じゃあ黙ってるけど、んー…、って感じだった」と言われ、確かに私も『んー…』となったわ。
 どんでん返しは確かに想像もつかなかったからそこだけは確かなんだけど、どうも腑に落ちない作品でした。
文藝モンスター

 薄いのでサクサク読めるかな。
 あらすじがまず、良いね。
小説家たちが集まった宿屋で殺人事件勃発。
それを解く小説家たち―と。
 これだけでかくも煌びやかな名探偵っぷりを感じるのだけど、実際は推理小説家だけでなく、ホラー作家や恋愛もの、SF小説家とバラバラな作家陣なので、推理合戦にはなりません。
得意所のバラエティさは良いんだけど、実際に推理をするのはホラー作家…みたいだし。

 一応主人公は新人作家の女性みたいなんだけど、読んでる間中、この子の言動が初手からいちいち怪しくて、語り主が犯人か?と訝しんでしまう事多々。(とは言えアリバイ的に犯人には思えないし…。)
最終的に犯人はちゃんと別にいるんですが、むしろこの新人作家の正体の方がストーリーとしては面白く感じたかな。

 全部解いちゃうホラー作家の、別に犯人を見つけたいんじゃなくて訳が分からない事は怖いから、納得したいだけと言う消極性もキャラ的に良かった。
(このホラー作家、怖がりのあまり知ってしまえば怖くないと言う理論で死体もガンガン調べるし、犯人も突き止める。知らないから怖いと言う論理は、アリだわ。)
 キャラが楽しい感じなので、こういうシリーズがあったら面白いだろうな。
トリック2

 …多分、買うとしたら自分なんだろうけど、全く覚えていない。
家人の大量書物の山から出てきた一冊。
 TVシリーズではまり、映画までしっかり見ていた口で、小説版までと言った所。
しかし…まぁ正直言ってこれは映像ありきだな。
役者の喋り方、間、カメラワーク、音楽、すべてがあの独特な世界観を作りあげていて、文章だと全くあの味がない平坦なミステリーと言った感じ。
薄い。
 美男だ美少女だと言われてもざっくりだし、口調が変に芝居がかってるし(映像もそうだけど、映像の方はテイストとして成功している)、上田がいつも消える退場シーンに至っては意味が解らない。
ギャグを…文章で説明出来ないと言うアレだ。
 また、トリックの醍醐味である手品でネタばらしシーンも、実際にやってみせるのと文字で説明では分が悪いよなぁ…。
 小説として悪いわけじゃない、あまりにもハンデがあるんだな、この作品を文字でと言うのが。

 幸い映像が先だったもので脳内補完ですべて楽しく読めましたが、トリックは見るなら映像が一番と思います。
自殺予定日 Scheduled Suicide Day

 読んですぐに引き込まれました。
あらすじから面白そうだったんですが、細かい設定はおいといて、ぐんぐん読ませる流れがある。

 主人公は中の下の女子高生。
小さい頃に母親を亡くし、愛する父親は再婚を。
当然継母などに懐きはしないんだけど、再婚してすぐに父親が無くなると言う、今や他人の継母と暮らしている。
 しかし継母の些細な行動が鼻に付き、父親の生命保険や事業の乗っ取りを企まれ、父は継母に殺されたのではないかと疑いを持つ主人公。(多分誤解だと思うんですけど。そこまでの描写だとそんなに怪しいもんでもないしなぁ。)
勿論証拠も何もないので警察ではお払い箱。
 とうとう主人公は遺書に『継母が父を殺した』と糾弾して死ねば疑ってもらえる。嫌がらせに終わっても復讐出来ると考え、自殺を企みます。(払う代償も大きいし、狙い通りいくのか怪しいもんだが。)

 まぁ、自殺までの流れはどうあれ、とある田舎の山の中で首を吊ろうとすると、いきなり青年にタックルで自殺を阻止される。それも、同情で可哀想だとかでなく、「勝手に死なれて自殺の名所と呼ばれる土地の人の身にもなれ!人に迷惑かけて死ぬな!」と怒られ―。
 うん、正論。まぁただ、死んで自分の身は片付けられないから、誰かの迷惑にならない死なんて、なかなか出来るもんじゃないんだよねぇ…。
(自分でボート買って、太平洋の真ん中で身投げするくらいか?しかも自分を探す様な係累が全くいない前提で。将来的に死体が流れ着いたらごめんなさいだけど。)

 で、主人公が流れで自殺しない様に見張る青年は、話を聞き、「じゃあ証拠を見つけようぜ」となる―。
面白そう。
 青年は上手い事「見つかるまでやれ」と言い含めようとしたけど、主人公は待ってられるかと期限を一週間と決めます。
これがタイトルの『自殺予定日』。
 ここで、青年が幽霊だった事が解り、そこだけちょっとがくっと来たけど。出来れば生身シチュエーションが良かったな。(これについては後々すごく納得の行く終わり方になるので良しとする。)
 ただ、幽霊が故に死についての説教も効くし、ついて行く事は出来ないので、知恵は貸すけど行動は主人公しか出来ないと言う縛りは○。
 実際に主人公は、放任されているのを良い事に、夏休みを友人と旅行に行くと偽って、この片田舎のホテルに泊まり、一日一日継母の留守中を狙って帰っては家の中で証拠を探すのです。
幽霊青年のアドバイスに従って、PCを解析したり、ばれない様な変身をしてみたり―。
 そうこうしている間に、主人公は、友人たちとももめていたりと色々八方ふさがり気味なのですが、幽霊青年の容赦ない毒舌(いや正論なんですが)でべこべこにへこまされつつも、ちょっとは考えるきっかけを得ます。
そして探していた証拠がとうとう―?!

 そこからは一気に解決に至るわけですが、想像していたよりも素直で、綺麗で、優しい物語でした。
このタイトルからしてもっとひねくれた様な物語かと思っていたけど…。(優しすぎて流れが多少ご都合に思えなくもないけど、変にとんがった物語よりこっちの方が好きだわ。)
 タイトルにはWミーニングがあったのかな?

 分量の割にすぐに読めてしまいますし、複雑な話でもなくすっきりと。
構えずに読める優しいミステリーでした。