元モンスター描き。 諸々の感想と近況ブログです。   since2005.05.15
アリスはどこへ行った?

 不思議の国のアリス本なわけですが、一味違う。
これはアリスを追いかけた別の友人目線での物語なのです。
 面白そうな…と思ったら、この人、『ウィキッド』書いた人なんだ!へぇー、それはさぞかし面白いスピンオフ、はたまたサイドストーリーを―と読んでみました。

 うん、まぁ、一人の少女の確実に一歩成長した物語です。が、途中がやはり不思議の国のアリス調なので言葉遊びが多いし、会話の丁々発止もやはり海外。イマイチ入り込めず。
うーん、設定と言い、絶対面白いんだけどなぁ。作品のカラーとして馴染めないか。
 残念ながら流し読みに終わる。感性に合わなかったのが勿体ない切り口のお話でした。
Amazonで変なもの売ってる

 いやぁ、谷山浩子氏もどんどん本を書いてくれるなぁ。嬉しい。
てっきりエッセイ集かと思いきや、物語でした。…なんと言う名指し本。(Amazon関係で連載していたんだそうで、成程。)
しかし薬を買うなら○○…とかお店の名前まで出てて、確かに、あそこで買うよね!と変な笑いが。

 相変わらずファニーな物語で、後半に行くにつれ、Amazonで変な物が…と言うよりはいつもの谷山浩子節になっていくわけですが。いやぁ、どこか怖くて、不条理で、いやいや、何がこの世界の定理なのか、さっぱり解らん混沌へと進んでいくのです―。
 ストーリー的にはとある姉妹がアマゾンで謎の物体を通販したら、PCから猫の様な少年の様な生き物が出てきて、PCの中へと誘います。
その中で姉妹は、不思議な存在に出会い、普通では見えない変な商品(さっき買ったような物)の説明を聞き、今後もそういう物が見えたら教えて欲しいと頼まれます。(カスタマーサービスに。)
 実はAmazonは、不思議な存在達がそう言ったものの調査をするために利用している場所だと言うのです。そしてそれは社長も知らない秘密だそうで。
 その不思議な存在がそもそも何かが既に謎なのですが、姉妹にはその存在達はそれぞれ別の姿に見えます。どうも自分がそう思える姿で認識してしまうとの事で、こうなってくるとこの自分フィルターのせいで、何が本当の事か解らなくなってきます。
 自意識が信頼出来ないレベルにまで、お話は溶けあい、正しく彼女の作る歌の世界へと不気味な変容を遂げていくのですが…往年の彼女の歌よりはずっと明るくてさばけたお話だと思いました。
Amazonで連載…と言う事なんで気を使ったのかな?

 話の中では常に妹のツッコミが的確です。
そして最後までちゃんとストーリー説明出来ないのも、さすがの谷山浩子ワールド。そんな一冊。
砂漠の歌姫

 如何にもなファンタジー臭がしたのでスルーしそうだったのですが、作者が村山さんだったのでやっぱり読んでみた。

 んー、端的に言うとギリギリ及第点位。
と言うのも、歌姫と言いつつ、実際は音楽院の生徒で歌姫未満だし、天才的な歌唱…と言うほどでもなく歌で活躍するよりもむしろ野性味あふれる弓での戦いの方が目立つから。ガンガン痛めつけられもするし、戦士イメージだなぁ…。
 期待していたような、例えば歌で多くの人を魅了するだとか、ファンタジーな獣が従うとか、歌に魔力が秘められているとか、声が原因で狙われるとか―おおよそファンタジー歌姫にありがちな事が一切ない。

 そもそも主人公は確かにこの少女だが、始終狙われる方のヒロインは別に居り、この主人公は一貫してヒーロー的役割を務めます。
ヒロインは同い年位の、如何にも儚げな銀の髪の少女で、記憶喪失、何かから逃げていると言う完璧なファンタジーヒロイン。
 後になってからため息をつくほどの展開ですが、何回攫われたら気が済むんだと言う絵に描いたようなキャラです。(ストーリー展開的にちょっと辟易した。)
 あとは大体の主要人物が女性が多かったのがバランス的に気になるかな、くらい。
 そして主人公をヒーロー役、少女をヒロイン役に据えると、さらにこの一歩先を行く悲劇のヒロイン枠があって、非の打ちどころのない悲劇っぷりで、主人公は入れ子細工的にどこまでもお話を持っていかれるなぁ…とちょっと『お話としての化粧っ気』が主人公になさすぎるのが読んでいて引っかかった。
 ただ、キャラの誰の主眼で見るかを別にすれば、ストーリー的にはそれだけ横糸でいろんなキャラの重要な設定が盛り込まれていて、ボリュームは満点。
何せ悲劇系のお話の方は、明かされた謎も顛末も見事に切なく悲しく、正に歌になる様な物語だったから。
 正しく大冒険と言えば銀の髪の少女の物語の方だし、始終出ずっぱりではある主人公には、自身メインで輝く設定や纏ろう物語は、ない。ただ他のキャラたちの運命に居合わせ、優しさと勇敢さを持って関わり、皆に必要とされたと言うこの本の中でのリアルタイムの物語のみ。
―まぁそれこそが本文なわけですが。

 これを『誰かの物語を歌う』的に解釈するならば見事過ぎると思う。
実際主人公は歌により古からの知恵や物語を『知っていた』と言う活躍の仕方をするから、物語の語り手としての位置なら、あえて『特別な運命のない』主人公もよいのかも知れません。

 続き物かと構えていましたが、一冊で綺麗に終わっていました。
けれども国々の年表や歴史を作り込んでいるように思えたので、いつでもシリーズや他の物語の舞台に繋げられそう。
(ところで昔のあのシリーズ、完結してないのかなぁ…と関係ない感想を抱いてしまいました。)
モンスターズ・インク

 …見た事ないんだよね。それで本で手を出すどう考えてもおかしな入り方。
いやぁ、DVDを見たいとまでは考えてなくてさ。

 で、薄いし読んでみるかぁ…とさらっと読んだわけだけど。
そうか、うん、見た事ないのに知っているあらすじだけで本当にその通り、以上、なお話でした。
 ―あれぇぇぇ??本気で、これだけ?こんな話だったんだ!な展開が一つもなかった。
紛れ込んできた人間の子供を返すぞ、ハートフルストーリー。全ての展開が予想が付いちゃって、定番まっしぐら。
ううむ…本で読んでも意味がない作品だったか。
しかしこれは、映像で観ても多分心掴まれる事なく終わるだろうな。
 とりあえず読了。
アゴールニンズ

 『図書室の魔法』作者繋がり―なんだけど『図書室の魔法』が私の射程距離外の作品なのに割と読めたのはともかくとして、普通なら追いかける作風じゃないんです。
所が、この『アゴールニンズ』だけは別。
と ある貴族の令嬢の父が死に、偉大なる父の権力を受け継ぐのは誰か?と葬式の席でトラブル発生。
一人の男がルールを破って故人の力を決められた以上にぶん獲った―?!
令嬢はこの争いに巻き込まれて行くのです。
 繰り広げられる遺産争い、政略結婚…と、華麗なる一族ロマンスが期待されるお話なのですが、何そのハーレクイン?
私が食いつく要素があるとしたらファンタジー的に、故人の遺体を食べた分だけ力が継承されると言う所か。

 気持ち悪いとお思いか?
実はこれ、ドラゴンの話なんです。
いや、だから、登場人物が全部、ドラゴン。
 ―気になるよね、手に取るよね、読むよね?!
ああ、だから食べちゃうよイベントなのか。ちょっと納得。
 この毛色の違いが『図書室の魔法』と違いすぎて恐ろしいんですが、これがデビュー作だそうで。
(このジャンルの違いはどうしたんだ、作者。他にも既刊があるようですが、今の作風が実際どんなものかは調べてないので知らない。)

 しかし読んでみるとこれが…おもしろい!
えー、良い意味で裏切ってくれるなぁ、この人本当に。
 『図書室の魔法』は感傷絡みが細かいんですが、こちらはその世界観が実に細かく良く出来ている。
ドラゴンに限りませんが、この世界以外の文化生活等が上手く決まっている。
 ドラゴンの遺体を食べた時だけ力と体の大きさが増える。
社会的、肉体的弱者は時に生きながら権力者に食われても当たり前。
年頃の娘は婚姻色で色が変わる。(不貞や出産経験が解る。)
身分や思想で翼は紐で縛られる。
 ここら辺があるだけでストーリーに引き締まり感が出て、人間ではありえない話の転がり方をします。
ああこれは確かにドラゴンでしかありえない物語、ロマンス、厄介事―。
 このアイデアは作者の緻密な筆致の力が『常ならざる異世界』を構築して魅せるには十分すぎる効果がありました。
弱気双子の姉妹令嬢が、兄や姉、義理兄、社交界のしがらみや政略とどう渡り合って困難を潜り抜けていくのかが楽しみで止まらず、一気に読んでしまいました。
 そして完全なるファンタジーかと言うと、英国ビクトリア調時代の封建社会を模しており、奴隷制度や宗教的タブーなどを織り込んでそれをはねつける皮肉さも兼ね備えています。
ドラゴンの娘たちの新しい女性っぷりはなかなか見事なものです。

 一味も二味も違う作風。
久々にファンタジーの当たり本でした。